表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/117

第65話 冥王vs魔王④

 "扉"まで、あと数百メートル。見えてきた。全員の表情に、少しだけ希望が灯る。

 ほとんどの魔族はその怪物の足の速さについて来れなかったが、それでも狼やトラ、チーターの能力を持つ者たちが追いすがってきた。

 ギルドメンバー達が銃撃で応戦する。あと少し。あと少しだ。

「ねぇ、あれ!」

 メイディが上方を指差した。アマゾネスの視力は常人よりもはるかに良い。やがてその方向から何かが飛んでくるのが見えた。

「なんだありゃあ!」

「速いぞ!」

 それまでの戦場では一度も見かけなかった怪物。その鉤爪はあまりに大きくて、鋭い。

 その怪物は翼を畳み、一気に滑空して迫ってきた。

「おい! 何とか避けられないか!?」

 ガイが、自分達が乗る怪獣を操るロマーナの方に向かって叫ぶ。

「その必要はない!」

 激しく揺れる背にしがみついてたブルースが、素早く身体を回転させ、拳銃を抜いた。

 あとわずか十数メートル。二連撃ちにより放たれた弾丸が、怪物を貫いた。

「よし!」

「さすが!」

 皆が安堵した。 

 だが、それも束の間。その怪物の骸から、新たな影が。イノシシの顔を持つ男が、ブルースに向かって大斧を振りかぶる。

 ブルースは再び銃を構えた。だが、すぐに体勢を立て直すことができない。

 ブルースは血走った眼で、その魔族を見据えた。


「!?」

 覚悟を決めたブルースの前で、敵の頭が撃ち抜かれた。

 驚いて横を見ると、もう一匹の怪物に乗っていたニックが銃口を向けていた。

「お前……いつの間に」

 ブルースは顎髭の奥でニヤリと口角を上げた。


 その様子を見ていたソラリスは、ほっと胸を撫で下ろした。そして再び心配そうな表情で、今までずっとひた走ってきた方向を見た。

「あの二人……大丈夫かなぁ」


      ***


「ウォオ……おぉ……」

 目の前で、妻の命が喪われた。

 冥王は亡骸をそっとその場に横たえ、憤怒の形相で立ち上がった。

「オオォォーーー!!!」

 ものすごい勢いで、剣と大鎌の刃を繰り出す。

「おいおい、そんな単純な太刀筋じゃ私は殺せんぞ」

 そうは言いつつも、魔王はその手の動きに気を取られ、足元の動きに気が付かなかった。

 冥王の前蹴りが、魔王の腹に入った。そしてちょうどそのタイミングで魔王の首に向かって大鎌を振りかぶる。そのまま魔王が後退すれば、首を刈れる位置だ。

 魔王の表情にかつてない焦りが浮かんだが、とっさに身体をくの字に曲げ、ギリギリ避ける。黒みがかったピンク色の髪が、少し持っていかれた。

「やったわね」

 魔王の瞳にもわずかに怒りの火が灯り、魔王の剣が紫の光を帯び始める。


「!!?」

 魔王はとっさに、自分の腰元に視線を落とした。

「うわぁあぁあああーー!!!」

 そこには、魔王の脇腹にナイフを突き立てるダミアンの姿があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ