第59話 道の戦い⑤
ひとりひとりの戦闘では、決して押し負けていることはない。
だがこの人数差は如何ともしがたい。人間達は徐々に劣勢に追い込まれていっていた。車はほとんど壊され、狭い戦場を死体の中、逃げ惑いながら戦闘を続けている状況だ。
そんな中、最前線にいるのは常にジャックだった。まるで一人でこの進軍を止めてやるとばかりの気迫で、魔族、怪物を屠りながら突き進んでいく。
ブルースは元々前衛と後衛を行き来しながら戦闘を続けていたが、やがてそんなジャックを追い始めた。
威力の強い白銀のリボルバー1丁で、時に二連撃ちを使いながら敵の急所を確実に撃ち抜く。
-----------------ジャックはどこだ?
あれだけ目立つ男が、さっきから見当たらなかった。
「!?」
ブルースの数メートル右に、何かが物凄い勢いで叩きつけられた。
地鳴りがする。
「ジャックか!?」
砂埃が立つような環境ではない。状況はすぐに判った。
ジャックはまるで堪えていない様子ですぐに立ち上がった。だが口元に流れる血を拭う。
「油断した」
ジャックは何事もなかったように歩き出そうとする。
「待てジャック! まだ戦う気か! このままだとマズい、総崩れになるぞ。もう引くべきだ!」
ジャックの肩を掴み、こっちを向かせるブルース。
「ダメだ! 今ここで引いてしまったら敗ける! ただ戦力を消耗して終わってしまうぞ!」
「この戦闘の目的は奇襲をかけて少しでも相手を削ぐことだろう! もう十分目的は達したんじゃないのか!?」
「この程度じゃダメだ! 結局攻めてくる」
「だがこのままじゃ全滅だ! コンテナもやられたんだぞ!」
「何!? リリスは無事なのか?」
「おそらくな……ナディア君が向かったようだ」
「クッ……」
ジャックが唇を噛み、辺りを見回す。
「もう退こう。元々これ以上できる戦力じゃない……」
ブルースは再びジャックの肩に手をかけた。
「ほう、せっかく会えたのにもう帰るとは水くさいではないか……」
「!!」
百戦錬磨の二人の間に、かつてないほどの緊張が走る。
そこにいたのは2人にとっては見慣れた顔、魔王だ。
***
私達はナディアさんに連れられ、何とか他の人達と合流できないかと戦場を彷徨った。
でもほとんど見当たらなくて、たまにいたとしても大抵何かと戦っていてそれどころではない。目の前でギルドで見た人が殺されてしまったこともあった。
あっ! あれは……
少し先で祖父とブルースさんが話していた。
近付こうとすると、ナディアさんにさっと止められた。怪訝に思ってナディアさんの方を向くと、珍しく動きが固く、青ざめた顔をしている。
祖父達の方に視線を戻すと、二人に近付く人影があった。
綺麗な人……