表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/117

第53話 予期せぬ開戦①

 サムは即座にドローンを起動させた。センサーで酒場全体を探る。反応があった。

「そこだ!」

 ブルースはすぐにサムが指差した場所を腰だめで狙い、ナディアはナイフを投げた。

 カメレオンの顔をした男が、心臓を銃弾に貫かれ、頭にナイフが刺さった状態で姿を現し、倒れ込む。

「まさか! こいつはカラギールで始末したはずじゃ!」

 驚くサム。

「"魔族"だからな。奴らは一族で動く。それより他に反応はでていないか?」

 ラスがサムに尋ねた。

「ええ。侵入者はコイツだけのようです」

「そうか、ならば急いでこっちをどうにかせねばな。換気を急げ!」

 ジャック、マリア、ニックを始め、たくさんの人間が瘴気を吸ってしまった。

「リリス! リリス!」

 ソラリスが、倒れたリリスにすがりついている。

「ダミアン! 貴方治せるんでしょ! 早くして!」

「う、うん!」

 ダミアンも急いで駆け寄った。


『マスター! 封印が解けそうです! 電圧が著しく下がっている!』

 そんな通信が入った。

「マズい! ジャックさんがやられたからだ! 急いで避難しろ!」

 ラスが通信機に向かって叫ぶ。

「ダミアン君! 悪いがジャックさんから治してもらえるか! 犠牲者が取り返しのつかないほど増えてしまう!」

「……! はい!」

 ダミアンが懐から、三日月のように湾曲したナイフを取り出した。ジャックの身体にその刃を何度か入れる。

「これは……何をしているんだ? 治りそうなのか?」

 ブルースが怪訝そうに見つめる。 

「あれは死神の大鎌……のちっさいやつだ。」

 集中しているダミアンの代わりにナックルが解説する。

「普通に斬ったら、相手に無条件の"死"を与える。逆に峰で斬ったら"命"を与える」

「ほう……そういえば大戦のときにアルハンブラもそんなことを言っていたか……」

「ダミアンは気付いたんだ。瘴気が生物の生命エネルギーを利用してるってことにな。だから死神の権限で一度"死"を与え、瘴気を除去させた上ですぐに蘇生させる。そして神の能力で身体を回復させて終わりだ」

 そう言っている間に、ジャックに対しての"治療"が終わった。

「ダミアン! 次はこっち!」

 ソラリスが呼ぶ。ソラリスは、今にも暴れ出しそうなリリスに抱きついて必死にその動きを止めていた。周りももう完全に戦争状態だ。瘴気を吸い、身体が醜く変化する仲間達を傷つけないように拘束しようと苦心する。

「おい! 早くリンネイ草もってこい! 眠らせるんだ急げ!」


 ダミアンは次にリリスの治療を開始した。

「ん? なんかむずかしいな……」

 ソラリスが見守る中、ダミアンが首をひねる。

「ほんとに魂一個? リリスって」

「ううん、なんか2つあるって……」

「えー! 早く言ってよ! ボクそんなの相手にするの初めてだよ?」

「それでもがんばってよ! ダミアンしか治せる人いないんだから!」

「わ、わかったよ……」


      ***


「……っはぁっ! はあっ! はぁ……」

 ひどい悪夢から覚めた。そんな感じだった。でも、何も覚えてない。

「リリス! よかった……」

 目の前にはソラリスがいた。周りには、私と同じように身体を横たえた人が並んでいる。

 そしてそれよりさらに向こう側では、もっと多くの人達がせわしなく動き回っていた。

「一体何が……」

「魔界の封印が解けた」

 そんな声が聞こえた。ブルースさんだ。すぐ近くにいた。

「え?」

「瘴気を吸った。君も……ジャックも。そして封印が解けた。ジャックが治療のために一度死んだからだ。魔力が完全に途切れてしまった」

 そして、ダミアンが編み出した治療法について解説してくれた。

「じゃ、じゃあ……」


「ああ。戦争が始まる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ