第51話 合流①
アルハンブラさんの力で、私達はやっと元の世界=ガルーアに戻ってきた。
目を開けると、見慣れた酒場の前だった。だが街の様子が、何だか騒がしい。
私とソラリスは目を見合わせ、そっと扉を開ける。
「あのー……」
「ただいま戻りましたー……」
椅子がいくつも並べられ、その上に横たわっていたのは……
「ブルースさん!?」
私達は急いで駆け寄った。
「おお、二人とも戻ってきたか……」
衰弱というより、とてつもなく疲弊している。そんな感じだった。
「何があったんですか!?」
「魔族だ……怪物と共に現れた」
「魔族!? 封印が解けたんですか!?」
「いや、その線は薄い」
隣にいるラスさんが答えた。
「じゃあどうして……」
「考えづらいが、ずっとこの世界で身を潜めていたか、それか別の『扉』があるのか……」
「えー! そんな……」
外が騒がしくなった。
「おーーい! もどったぞーー!」
ニックさんの声だ。ブルースさんを残し、私達は外に出た。驚いた、祖父もいる。それに知らないお兄さんとお姉さんがいた。
「ラスさんですね。救援に感謝します。ここも手ひどく襲われたようで。支援に来ました」
車椅子に座ったそのお兄さんは、ラスさんとガッチリと握手を交わす。
「うむ。感謝する。それにしても随分早かったな」
「僕が開発した反重力装置を使えば、この距離なんかメじゃないですよ」
よく見るとギルドメンバー達が降りてきた大きなコンテナが、浮いている。
「リリス、ソラリス、戻っていたか。剣はどうだった?」
私達に気づいた祖父が尋ねてきた。
「救援に来るとは言ってましたけど、貸すのは不可能だと」
ソラリスの答えに、祖父は顔をしかめる。
「うーん、まぁそうなるだろうとは思っていたがな……」
もう一本の剣のことは、言い出せなかった。そもそも手に入れられるようなものではなかったし、まだ自分が山梨梓だと祖父に言える気がしない。
ソラリスも、私に委ねてくれているようだった。
「おら! 歩け!」
入念に縛られコンテナから連れ出された人を見たとき、私もソラリスもひどく驚いた。
真っ黒な体とくちばし。まるでカラスのようだ。
「魔族だ。これから尋問する」
祖父と一緒に、その背中を見送る。
これが、魔族……
「カラギールでも出たんですか?」
「そうだ。あれだけじゃない、もう一人いた。あそこにいるカラギールのギルドマスターのサムが始末したがな」
祖父は車椅子のおにいさんを指す。
「そうなんですか!? でも、ここでも出たって……」
「そのようだな」
「なんでこんな急に……」
「前回の戦後のゴタゴタをやりすごした残党がいることは不思議なことじゃない。想定の範囲内だ。剣の封印が失われたことで、好機と踏んだんだろう」
ピンク色の煙がたった。見慣れたこの煙の向こうから、ダミアンとガンジスが現れた。初めて見る少女と一緒だ。剣は持っていない。
ダミアンに関しては今にも泣きそうだ。唇を尖らせて瞳をうるうるさせている。
「剣もらえなかった〜〜!」
「えぇ……」
無情にも、ダミアンに注がれた視線は落胆のものばかりだった。