第43話 王都⑤
「ねぇガンジスさん、ほんとにこっちで道あってるの? なんかお城からどんどん離れていってるような気がするんだけど……」
徐々に狭くなっていく路地の途中で、ダミアンが心細そうに口を開く。
「城に入るには特定のルートを通る必要があるんですよ。じゃないと侵入者として捕らえられてしまいますからね」
前を歩くガンジスがにこやかに説明した。
「だから城の中に直接ワープすりゃよかったんだ」
「だからダメですよ! それこそ即刻打ち首です!」
ナックルの言葉に、慌てて首と手をブルンブルンと振るガンジス。
「おいおい俺達は元勇者の信書も持ってるんだぜ〜〜そんなことにはならんだろ」
「あ! ついたついたここですここです!」
路地の途中にある、重苦しい石造りの建物に埋め込まれた小さな扉から、ガンジスは中に入った。二人も続く。
真っ暗闇の中、ダミアンとナックルは頭を殴打され、意識を失った。
***
「おい、なんで王都にこれだけしかいないんだよ……こいつらは冥王の息子に妖精だぞ。もたもたしてたらこっちがやられちまう」
「しょうがないだろ。王都支部は2週間前に壊滅させられたところだ。皆殺しだったんだぞ……オレたちだって大陸各地から急遽現地入りしたんだ……」
「なんだって? だってここの支部長はナイフ格闘術の達人だったんじゃないのか? 凄腕を配置したと聞いていたぞ……おまけに皆殺しだなんて、王属の護衛兵団がそんなことするのか?」
「知らねぇよ……したんだろ……」
ダミアンがうっすらと目を開けると、小声で言い合うそんな声が聞こえた。
『目が覚めたか』
二人とも猿轡を噛まされている中、ナックルはダミアンの脳内に直接語りかけた。
『ボクたち、捕まっちゃったの?』
『そうみたいだな』
『なんでガンジスさんがボクたちを捕まえるのさ』
『さっきから聞いてる話だと、どうもこのおっさんも「ヴェロニス」みたいだぞ』
『えー!』
『この俺としたことが、ヤキがまわった。この程度のペテンに引っかかって捕まるとはな』
『ナックルならこれくらいの縄余裕でほどけるでしょ? 逃げようよ』
二人は縄でグルグル巻きになって転がされていた。
『いやー、何か知らんが体に力が入らん。妖力も使えん、このテレパシーが限界だ。俺を封じられるような成分は魔界くらいにしかないはずなんだがな』
『じゃ、どうすんのさ!!』
『万事休す、だな……』
『だれ゛があ゛あ゛あ゛あ゛ーーーー! だぁ゛ずげでぇ゛ーーーー!!』
モゴモゴモゴモゴモゴ! という虚しい物音が、小さく響き渡った。