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第42話 山梨梓①

 瞑想……瞑想か。何となく目をつぶってみる。でも、やっぱりよくわからない。

「ワタシが手伝ってあげようか〜〜?」

「メリルさん……」

「アルはよくわかってないようだけど、人間の精神世界はむしろワタシが専門。魔法は攻撃のためにあるわけじゃないのよ〜〜」


 私はメリルさんと向かい合って座り、促されるままに深呼吸する。周りにはお香が焚かれていた。

「今から貴方の潜在意識を解放するから。しっかり梓とリリスを捕まえてね」

「え? え?」

「行くわよ〜〜」


 ギュバっ!っと奥に引きずりこまれるような感覚のあと、自分の身体が後ろに倒れ込んだことまではギリギリわかった。


      ***


 目の前に迫ってくる車があった。うっ!と萎縮してしまう。だが、関係なく記憶は遡られていく。

『ほら、ボサッとしない!』

 メリルさんの、そんな声が聞こえた気がした。


 ようやく色々と思い出してきた。良いことも、嫌なことも。大変だった高校受験。弓道部に打ち込んだ中学時代。そう私って、こんな顔……

 お父さん、お母さん……

 涙が溢れてきた。


 記憶が薄れていたことも、鮮明に蘇る。

 祖父母も一緒に行ったディズニーランド。小学5年生で、ひそかに想いを寄せたあきら君。低学年の時いつも一緒にいたみっちゃん。


 今まで忘れていたことまで、脳裏に現れる。

 昔好きだったドラマ。家族でピクニックに行ったときに見つけた四つ葉のクローバー。幼稚園の入園式でひたすら後ろから椅子を蹴ってくる男子。


 さらに遡る。

 赤い飛行機が出てくる絵本を読み聞かせしてくれる母の声。

 目線が低い。ハイハイをしているのだろうか。

 病室? 目の前には今よりはるかに若い、父の顔。


 最後は薄暗い、光の中へ……


「貴方がリリスね」

 視界が晴れて目の前にいたのは、見慣れたピンクの髪の少女だった。


      ***


 涙を流しながら、時折ビクッ、ビクッと身体を震わせるリリスを、ソラリスが心配そうに見つめている。

 その傍らには、アルハンブラもいた。

「リリス可哀想……」

「基本的に自分と向き合っているだけだ。確かに地獄の苦しみだが、まだ若いし、本人のオーラを見ても思ったより辛い記憶は少なそうだ」

 それを聞いてソラリスは少しほっとした。

「毒を盛られたって言ってましたけど、なんでこんなことにまでなったんでしょうか……」

「『ヴェロニス』にとってジャックはいつでも目の上のたんこぶだった。だが、いくら腕が立とうが多少魔法が使えようが普通の人間に対してジャックが遅れをとることはない。だから『ヴェロニス』が狙ったのは……」

「家族……」

「そうだ。ジャックの息子夫婦は常に狙われていた。それでもジャックの目は光っていて、ずっと手を出せないでいた。だがせっかく解けそうになった封印をまた締め直そうとしたときに、もうなりふり構っていられなくなったんだろう」

「でもジャックさんはその時もいたんでしょう? なんで今回は成功したんでしょうか?」

「シュヴァルツ家のセキュリティは私やメリルもうかつに手を出せないほど、とにかく固い。それでも遂行されたということは、よほど信用あった者の仕業かもしれんな……」

「裏切った人がいるってこと?」

「私には一人怪しんでいるやつがいる。古くからの使用人で、リリスとも距離が近く、なおかつ旅の同行も許されているほど信用の置かれている人物は?」

「まさか……ガンジスさん!?」

 ソラリスは目を見開いた。

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