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第41話 カラギール自治区①

 ジャックとジェイを乗せた車が、荒野をひた走る。四時間ほどで、カラギールに着いた。

 そこにはただただ灰色で、無機質な四角い街並みが広がっていた。

「ほぉ……最後に訪れてからもう三十年近く経つが、ここまで発展したか……」

 ジャックが辺りを見回す。

「俺も滅多に来ないな。案内はできないぞ」

「かまわん。どうせこの音の先が戦場だ」

 屋外に人影は一切見当たらなかったが、銃声やレーザー音、金属が擦れ合う音が絶え間なく聞こえていた。


「おいおい、なんだこりゃあ」

 カラギールの町全体で、ヴェロニスを撃退しているのはほとんどドローンだった。プロペラ式ではなく、反重力装置で音もなく飛行するタイプだ。

 前方にビーム砲を2門積んだ攻撃用ドローンと、もっと小さな探知用と思われるドローンがビルとビルの間を縦横無尽に飛び回っていた。

「助けに来る必要なかったかもな……」

 ドローンには多少の銃弾は効いておらず、物陰に隠れる敵も確実にあぶり出していた。

 

 ピーーーッ ピーーーッ


 二人がハッと上を向くと、そこでは探知用ドローンが滞空し、明らかにジャック達を捕捉していた。

 直後に、上空からレーザービームの雨が降り注ぐ。

「マジかよ!」

 二人は急いでその場から飛び退いた。

 地面を転がりながらビルの影に入り、リボルバーを抜くジェイ。

 ジャックはそのまま路上にいながら、指先から電流を放出し、攻撃用ドローンに応戦する。だが、全て避けられた。

「フンッ!」

 今度は開いた掌を横に一振り。そこから網目状の電流が宙に放たれた。

 感電し、動きを止めるドローン。だがまた新たなドローンの砲口がジャックを狙っていた。ジェイが死角から機体を撃ち、レーザーの軌道をそらす。そのドローンも、一瞬の内にジャックに落とされた。

「すまん!」

「気にするな! その代わり俺がヤバくなったらカバーしてくれよ……」


 ドローンの数が増えてきた。

 その中の一台が、他とは比べものにならないような速さで突っ込んできた。

 その背には一人の女が乗っている。近未来的な白銀の装甲服に身を包み、むき身の刀を構えていた。

 その速さにも関わらず、ジャックは女の斬撃を軽々と避けた。

「なっ……!」

 女はドローンから飛び降り、袈裟や胴に何度も斬りつける。ジャックは最初は避けていたが、ジェイが落ちていた金属製の細長い廃材を投げ込んてきたので、受け取って合わせた。

 必死に斬りかかる女に、いなすジャック。決着は一切つきそうにない。

「貴様何者だ……! ドローンを退けるということは只者ではないとは思っていたが……!」

 鍔迫り合いながら、女がジャックを睨めつける。

「先に名乗るのが、礼儀じゃないのか?」

 ジャックは余裕を崩さない。

「黙れ!」

 女は一歩下がって、一閃した。咄嗟に受けた廃材も綺麗に両断される。

 ジャックは咄嗟に刀身を指先で受け止めた。

 人間離れしたその所業に、いよいよ女の目が見開かれる。

「お前……本当に一体……」


「おい待て! 俺はゼリナスギルドのジェイだ! お前、『カラギールの天使』だろ!?」

 物陰からジェイが叫ぶ。

 女は、動きを完全に止めた。


      ***


「いやー、ウチの人間がすまなかったね。まさかゼリナスの人と、伝説の勇者様だったとは」

 町の中央、一番高いビルの地下がカラギール自治区にある賞金稼ぎギルドだった。

 だが、そこにいる人間は二人だけ。カラギールの天使=マリア以外はジャック達と今話している、車椅子の男だけだった。カラギールのギルドマスター、サムだ。

「おい、町に立ち入っただけであの歓迎ぶりか。危ないじゃないか」

 ジェイが苦言を呈す。

「町には今戒厳令を敷いている。外に出ている住民はいないよ。ドローンも中央データベースに常時接続して、住民全員の顔は照会できるようにしてるしね」

「結局訪問者は無視か」

 ジャックの言葉にも、サムが動じる様子はない。

「変な抜け穴をつくって、そこにつけこまれたら困るからね」

「それもそうだ」


 そんな時、通信が入った。マリアからだ。

『またドローンが落とされたぞ。見覚えのある顔だ。あれは多分、またゼリナスだ』

「わかった。モニターに出してみよう」

 ギルドの三人の前には、街中の防犯カメラやドローン搭載カメラが映した映像が見られる大きなモニターがあった。

 全面に映されたその映像には、ジャック達のよく知ってる面々が映っていた。


      ***


「一体何なんだいこのブンブン飛んでるのは」

 アマゾネスの二人とニック、そして同じく賞金稼ぎのマットとガイを加えたゼリナスの遠征部隊を狙ったドローンは、メイディが引きつけている隙を突いて、ロマーナが怪力で潰していた。


「相変わらずの剛腕だな、ロマーナ」

 聞こえてきたその声に、二人はすぐに反応した。

「マリア!」

「マリアさん……」

 驚く二人。当のロマーナにいたっては、涙をこぼしながらその場に崩れ落ちた。

「ギルドマスター同士で話をしたとは聞いた。救援には感謝する。一度ギルドへ」

 高台に立つマリアは、周りを恐れることなく、朗々と言葉を発した。


      ***


 一行は、ギルドにジャックとジェイがいることにひどく驚いたようだった。

「まさか貴方もここに来ていたとは」

 メイディとジャックが互いに笑い合う。

「まったくだ。剣に関しても君らに任せるまでもなかった。ナックルも私達が固まっていたほうが気配を見つけやすいだろう」

「ああ、あの二人ならここに来る前、もうすでに合流しましたよ」

「何!? ではなぜ君達はここにいるんだ?」

「どうしてもと申し出があったので、代わりにガンジス殿に行っていただいています」

「何だって!?」


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