表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/117

第27話 アマゾニアス⑤

 瘴気を吸ったその生物の身体が、ムクムクと膨れ上がった。元々白に近い灰色だった皮膚も、赤黒く変色している。

「これはっ……!」

 アラネスはまだしも、戦士達やガザリーナさんまで、その光景を見て絶句した。

 その生物は明らかに苦しんでおり、自ら頭を岩や木にぶつけるなど暴れ始めた。

「おい! あれの対処法は!?」

 アラネスが叫ぶ。

「今のところ眠らせるしかない。治療法もまだない」

 祖父が答えた。彼女達は再び絶句する。祖父はこちらに目を向けた。

「ガンジス、買っていたリンネイ草の花は?」

「あ、船の中です……」

「ほらよ」

 ナックルが花を祖父につきだした。瞬間移動を駆使して取り寄せたようだ。

 祖父は難なく、魔物と化したその生き物を眠らせた。


      ***


「本当に治せないのか? この子のパートナーのエミリンが悲しんでいる」

 ガザリーナさんが祖父に尋ねた。

 その生物は今、村にある石台に横たえられていた。苦しそうな寝顔を浮かべている。

 戦士とパートナーを組み、戦闘に臨むパイアスという種類の動物らしい。


 しばらく黙った後、祖父はダミアンを見た。

「可能性があるとすれば……一つ」

 ダミアンは目をそらした。

「死神の力を使えば、瘴気だけをうまく除去できるかもしれん。言ってる意味はわかるな? ダミアン」

 ダミアンは答えず、俯いた。

「それって、前にちょっと言ってたこと? どうやるの? それ」

 ソラリスも、ダミアンの方を向いた。その声はいつにもまして真剣だった。

「うーん、でもやったことないから……」

 ダミアンの返答は煮えきらない。

「大丈夫だ。誰だって最初は初めてだ。むしろ今のような落ち着いて試せる状況があるだけ、相当幸運だぞ」

 傍目からも、ダミアンの心が少し動いているのが見て取れた。私は隣りにいたガンジスの腰をそっと押した。ガンジスはちらりと私を見てから、口を開いた。

「あのー、ダミアンくん。ぜひ挑戦してみてくれないか。今この世界には、魔界の瘴気にやられて苦しんでいる人間やモンスターが沢山いる。あっしの友人もそうだ。一刻も早く治してやりてぇ」

 ダミアンはようやく顔を上げた。だがその目はまだ不安げだ。

「ねぇ、ダミアン」

 ソラリスがダミアンの両肩に手を添えた。そして自分より低いダミアンの目線に合わせる。

「私の父も、瘴気がきっかけで亡くなった。これは大勢の命の問題なの。私は救いたい。私と同じような思いをさせたくない」

 ダミアンが、ソラリスの目をしっかりと見返した。

「うん。わかった。ボクやるよ。きっと成功させてみせる」


      ***


 ダミアンによる治療・蘇生は難航した。その間に船の修理が終わり、ブラック船長達クルーと乗客は皆旧大陸に帰っていった。

 そこからさらに数日、神殿のすぐ横の家を貸し与えられていた私達のもとに、ダミアンが完全に元通りになったパイアスを連れて戻ってきた。

「ダミアン!? もしかして……」


「うん、成功したよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ