第19話 大海洋(The Great Ocean)③
「え!?」
私とソラリスは急いで顔を見合わせ、そして私が、急いで扉の方へ向かった。ソラリスは縛られている人のロープをほどいている。
角を曲がると、最悪の事態になっていた。人相の悪い男が何人もいて、ダミアンとナックルに湾曲した剣を突きつけている。
「おい! まだいたぞ!」
特に身を隠すことも頭になかったので、速攻で見つかった。
距離は、約四十メートル。私は急いで踵を返し、ソラリスとおじさんに駆け寄った。
「ヤバい!! 早く逃げないと!」
「え!?」
ロープはもう少しでほどけるところだった。私は放置されていた猿轡を急いでずりおろした。
「ここに、他に出口はありますか!?」
苦しそうに呻きながら、おじさんはソラリスの斜め後ろを指差す。見ると、分かりづらいが通路が伸びている。私とソラリスでおじさんに肩を貸し、走った。
後ろから怒号と激しい足音が迫ってくる中、私達の目前には、また分厚い扉があった。え、これはホントにマズい!!
すると目の前で、同じようにハンドルが勢いよく回って扉が独りでに開いた。え、何で!?
薄暗い通路に飛び出て、私とソラリスは急いで扉を閉めた。ハンドルが再び、勢いよく回ってガチガチに閉まる。何だかわからないが、これなら少しは時間を稼げそうだ。
「ここから一等客室までの道はわかりますか?」
とりあえず、祖父のところまで戻らなくては。
「い、いやぁ・・・ ほとんど機関室から出たことないもんで」
弱々しい声でおじさんが絶望的なことを言った。
「どうする? どっち行く?」
ソラリスの問いに、あっち! と的当な方向を指す。とりあえず、ここから離れたかった。
進んでも進んでも、知っているところに出られない。そんな中、やっと目の前に船員らしき人が見えた。
「助けてください! この人が!」
だが、声をかけた人は血の滲んだおじさんの姿にぎょっとした後明らかに困惑して、何も言ってくれない。
「え、ええぇぇ・・・」
じれったかった。
「じゃあ! ここから一等客室まではどう行けばいいですか!」
「ああ、あぁぁ、そんなのわかんないです!!」
そう言い残して、その人は全力疾走で去っていった。
「あー、もう! 何なの!?」
何だかんだ、私達はおじさんを抱えながらその人を追いかけた。
「こっちだ!」
しばらく走っても光明が見えなかったが、その声に釣られて顔を上げると、階段の途中にナックルの顔が見えた。
「うそ!? なんで!?」
「瞬間移動」
階段を上がると、ダミアンもそこにいた。
「やった! じゃあ私達も瞬間移動でジャックさんのところ戻してよ」
「バカ、こんな人数移動できるか! お前らは走れ! あっちだ!」
ダミアンは、もう走り出している。なんだかんだナックルも、私達を置いていくことなく近くにいてくれていた。
「見つけたぞ!」
「待て!!」
後ろからそんな声が聞こえる。振り返る余裕はなかった。
「やばい!! どうしよう!」
「ったく世話の焼ける」
パチンと指を鳴らすと、声が聞こえなくなった。
「走れーーー!」
ナックルが先導するままに進むと、ようやく見慣れた扉が。祖父の客室だ。
私達は扉を開いて、なだれ込んだ。