第101話 共同作戦⑤
「こ、ここがソラリスちゃんの世界かい?」
父が、井戸がある石造りの部屋をキョロキョロと見回す。
「違う、ここは天界。神様達が住んでるところ」
「神様!?」
そういえば、ちゃんと伝えてなかったっけ。
「ねぇ、何か変じゃない?」
ソラリスが言う。
確かに。元々この部屋は石造りとはいえ、壁に等間隔に燭台が取り付けられてあって明るかった。でも今は、半分以上火が消えている。というのも、部屋が時折、僅かに揺れているのだ。
「行ってみよう」
私達は部屋を出た。途中の通路も同様の状態だ。視界が限られる中、記憶を頼りに走る。
前は雲一つなく、真っ青だった空がドス黒い雷雲に覆われている。
だが、それ以上に問題なのは、そこは元々壁だったということだ。
ガルーアの王の城と同じ形のこの建物は、ところどころ大きく損壊し、外の景色が覗いていた。まるで廃墟だ。
「これって……」
「ねぇ、あれ!」
ソラリスが後ろを振り向き、何かを指さしている。私も振り返った。
そっちにあるのは確か……玉座。天界では長老衆がいるところだ。
「えっ!?」
でも、そこにいたのは……
「おや、そこにいるのは私の娘じゃないか」
魔王!?
***
「とりあえず……剣はもうないみたいだな。無駄足だった。とてつもなく気は進まないが、あいつをどうにかするために戻るとするよ」
ナックルが、未だピンクの煙に巻かれているであろうゴーレムを見据えるかのように、開け放たれた大扉の向こうにある壁を睨みつける。
「ちょっと待て。策はあるのか?」
モントール伯爵がそんなナックルの姿を見て言った。
「まぁ、なんとかなるだろ。サナダよりは被害を抑えるようにするよ……」
「サナダの話を聞いて思ったんだが、あの時の魔獣のように、体内から破壊することはできないか?」
「そもそも生物じゃなくて土塊だからなぁ。体内って概念があるのかすら」
二人はゴーレムが見える城のバルコニーまで移動した。
「口は……ありそうか。ということはあるのかな?」
顔の下部にあるのは顎のようで、ガクガク震えていた。
「あったからってどうするんだ? いくら俺でも、自爆するのは流石に嫌だぜ」
「ついてこい」
モントール伯爵が近くの階段を降り始めた。
「ここにある物を使えないか? 体内まで運んでくれたら時間差で爆発させられる」
城の武器庫。そこにあったのは、機銃や砲弾等の重火器だった。
「ほう……旧大陸にもこんな代物があったのか。驚いたな」
「当然だ。交易はあるからな。民に自由に使わせているわけではないが」
「とりあえずここにまとめてあるんなら、直接あいつの腹の中に飛んで置いてくるとしよう」