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第100話 共同作戦④

 魔獣の食道を滑り降りる啓助。四足歩行とはいえ、傾斜がキツい。

 消化液で服が溶けてきた。胃に着くまでには、どうにかしなければ。

 剣を突き立てた勢いで身体を起こした啓助は刃を振り上げる。黄色い光が奥の奥まで達し、外の光が差し込んできた。

「うわっっ!!」

 崩れた体組織が啓助に降り注ぐ。


 ……しまった

   ……重、すぎる潰されそうだ

     ……息ができない

       ……死ぬのか?

         ……でも、これで王都は助かる

     …… 何故身体が震える?

   ……まさか恐怖?

  死にたくない!!


 啓助の体全体を、光が包んだ。

 気付けば啓助は、満天の陽光の下に横たわっていた。そして街が吹き飛んでいく轟音を耳にしながら、意識を失う。


     ***


「次に目覚めた時、俺の傍らで剣は土塊になり、ほとんど原形を留めていなかった。剣はおそらく、俺の恐怖を読み取り、その魔力を暴走させた。王都の大半を消し飛ばしたのは魔獣の仕業じゃない。きっと、俺の責任だ」

 サナダ子爵は最後には、息も絶え絶えにそう言った。

「貴様……!」

 モントール伯爵が腰のレイピアを抜いてサナダ子爵の首に突きつけた。

「あの時、王都の八割は焦土と化し、2000万人は犠牲になった。私は丁度別の戦地から戻って来る途中で、その光景をなす術なく眺めることしか出来なかった。そして爆心地で奇跡的に生存していたお前を救出し、この爆発に巻き込まれて死んだ私以外の貴族に代わって、お前は子爵に取り立てられた。あれから六十年。お前はずっと口をつぐんでいたというのか?」

「そうだ。全ての原因は俺の生への執着だ。大罪だよ」

「クッ……護衛兵、この男を捕らえろ!」

 駆け寄った護衛兵達は少しの逡巡の末、サナダ子爵の身体を押さえつけた。

「武運を祈る。友よ」

「バカ者めが……」

 モントール伯爵は肩を震わせていた。


      ***


 私は父とソラリスと共に、最初にこの世界に戻って来た時にたどり着いた児童公園にやってきた。

 "道"は私とソラリスしか通れないはず。これを使えば、父を引き離せる。

 私達がその場所に近づくと、空中に濁った虹色の穴が開いた。新大陸のところにあった、魔界への"扉"を小さくしたような感じだ。

 さらに近づくと、強く引き寄せられる感覚があった。おぉ、結構怖いかも。

 私とソラリスは強く手を繋いだ。それを見た父も、私と手を繋ごうとする。

 私がそれを躊躇っていると、「どうしたんだい?」ともう一度手を差し出してくる。

 まぁギリギリで離せば良いか。そう思ってたら、想像以上に父の掴む力が強い。

 あ、ヤバ。

 私達は、共に"扉"に吸い込まれた。


      ***


 天界、あの井戸の部屋に戻ったのは私とソラリスだけじゃなかった。父もしっかりそこにいた。

 深く呼吸をし、辺りをキョロキョロ見回している。

 しまった……

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