面接
面接は雑談から始まった。
そして、ひと通りの質問に答える。
面接官:初めて会った時から思ってたけど、笑顔で雰囲気がいいね。
マナ:あ、ありがとうございます…!
––初めて言われた。
面接官:やっぱ、サービス業の賜物かな?
マナ:…いえ、本当は、もっと堅くて形式ばったことしかできなくて…。いつも、もっと素直にって言われてきました。…でも、少しわかった気がするんです。今まで、怒られることがこわくて取り繕って…自分のことばかり考えてたから、ダメだったんだなって。…あっ、すすすみません!えと…えと…!
面接官:いいよいいよ!続けてみて。
––本当に続けていいのだろうか…。ちょっとは良いこと言わないと…。
––モゾッ。
––!…うん。
マナ:…でも、気付き始めたばかりで、答えが出ていません。これからは、いろんな人を見て、いろんな人の立場に立って考えて、何が間違っていたのか、何が私らしさなのか、見つけていこうと思っています。
面接官:うん、そうか。
––ダメ、だった…?
面接官:うちは、人柄重視の会社なんだ。人の力があってこその会社だからね。特に、技術職は柔軟性と素直さが大事。柊さんは大事なことに気付き始めてる。とても良いと思うよ。柊さんはまだ若いから、これからもっとたくさんのことに気付いて、成長できると思う。よく気付けたね。素晴らしいと思うよ。
マナ:…ぅ…ありがとう…ございます…。
思わず涙が出た。
面接官:いろいろ苦労してきたんだね。でもまだ一歩踏み出したところだから、これからも苦労することがあると思うよ。
マナ:はい…!それでも、私はこの気持ちを大切にしたいです…!
面接官:うん、いいね。じゃあ、うちで働いてみる?
マナ:…え?
面接官:つまり、採用ってこと。実は僕、ここの社長です。
マナ:え、あ、え!?
社長:ごめんね、黙ってて。
マナ:あ…いえ!本当に、いいんですか…?
社長:うん。しっかりフォローしていくけど、初めての作業がたくさんだと思うから、最初はちょっと大変かもしれないけど…それでもいいなら。
マナ:はい!頑張ります!ありがとうございます!
社長:こちらこそ。よろしくお願いします。
仕事が決まった。
マナ:ありがと、ぼん。
ぼん:きゅ!
帰りに高級スーパーに寄り、高級イカソーメンを買った。