第一志望
本当に入社したいと思える求人を探した。
そうじゃないと、取り繕いそうだから。
マナ:…あ、ここいいかも。
求人資料を家に持ち帰る。
マナ:ねぇ、ぼん。ここいいなって思う。
文字も何もわからないだろうけど、ぼんに見せる。ぼんは、ちゃんと興味津々で見てくれる。
ジュエリーの加工の仕事。
私は、今までジュエリーを売る仕事をしてた。
ジュエリーは特に興味なかったけど、やっぱ綺麗だなって思ってた。削る人は、ほんとすごいなって。
マナ:…もっと強い志望動機じゃないと、ダメかなぁ…。
ぼん:きゅきゅ!どっぼ!んーん!
マナ:…あ、また取り繕ろうとしてたね。ありがと、ぼん。
ぼん:んきゅ!
マナ:よし、決めた。ここ受ける。もし受かったら、ぼんに高級イカソーメン買ったげる。
ぼん:きゅわわぁあ!
ぼん、嬉しそう。
面接の日。
女性:こちらで椅子にかけてお待ちください。
マナ:あ、はいっ!
案内の人が部屋を出て、時計の音だけが響き渡る。
マナ:…ふぅ。
緊張してきた。
––モゾッ。
マナ:…?
ぼん:…ぷっきゅ!
ぼんが、スーツのジャケットのポケットから顔を出した。
マナ:!ぼん…!来ちゃったの?
コソッと声をかける。
ぼん:んっきゅ!
––わかった。こいつ、高級イカソーメンのために全力なんだな。
マナ:…ふふっ。緊張ほぐれたかも。ありがと。
ぼん:きゅ。
ポケットに戻った。
––ガチャ。
面接官:こんにちは、お待たせしました。
マナ:こんにちは!柊真実と申します。よろしくお願いします。
面接が始まった。