名前
マナ:…あれ?
目が覚めると、視界が真っ白で、何も見えない。
––え、何。私死んだの?
すると、視界がモゾモゾと揺れる。
マナ:ぅわっ!
私は、ガバッと起き上がる。
白いふわふわが寝ている。
謎の生物:…んきゅゎ…
マナ:…出ていかなかったの?
謎の生物:…んきゅう?
起きた。
すると、ふわっふわっと飛んだ。
マナ:飛べんの!?
謎の生物:んきゅ。
こちらへ寄ってくる。
手を広げると、手のひらに乗った。
マナ:…ここにいたいの?
謎の生物:んっきゅ!
マナ:…ちょっと愛着湧いちゃった。ここにいたいなら、いてもいいよ。特にお世話しないけど。
謎の生物:ん。
窓を閉め、ボサボサの髪のままリビングの座椅子に座る。
そして、スマホでケサランパサランの生態を調べ始めた。
マナ:…君、これ?
白いふわふわに画面を見せる。
謎の生物:…んん?
マナ:違うの?
謎の生物:んん〜。
…わからん。
そのまま画面をスクロールする。
マナ:白粉を食べるの…?
とりあえず、粉のファンデーションと小麦粉と片栗粉をそれぞれ皿に出してみた。
マナ:…わぷっ!ちょっ!待って!
白いふわふわは粉の上でぴょんぴょんと遊び始めた。
粉が舞う。
マナ:やばいやばい!
皿を没収し、タッパーにぬるま湯を用意した。
白いふわふわはタッパーの中に入り、気持ち良さそうにしている。
その間に、舞った粉を掃除する。
マナ:…君は粉食べないんだ。
タッパーから上がったふわふわをハンドタオルで拭きながら、話しかけた。
謎の生物:んきゅ?
ふわふわは、昨日出しっぱなしにしたイカソーメンを興味津々で見ている。
そして、どこから現れたのかわからない丸っこい前足を出して、イカソーメンを持ち上げ、ひとかじり。
謎の生物:…きゅわわぁあ!
ぱぁっと笑顔になり、高級なステーキを食べた時のような反応をしている。
マナ:え゛、イカソーメン食べんの…
ガジガジと食べ進め、あっという間に一本食べ切った。
謎の生物:…けぷっ。
一本でお腹いっぱいのようだ。
マナ:なんと安上がりな…。
私はフッと笑った。
マナ:ねぇ、君、名前は?
謎の生物:んきゅ?
マナ:私は柊 真実。よく、マナって言われてる。
謎の生物:ん?
マナ:マナ。マーナ。
謎の生物:…どっぼ。
マナ:は?マ、ナ!
謎の生物:どっぼ!
マナ:なんだそれ!
私は大笑いする。
マナ:ねぇ、君に名前あるの?
謎の生物:んきゅう。
マナ:ないの?じゃあ、私がつけるよ!んとねぇ…
ふわふわをよく見る。
––この子、耳かきの梵天に似てるな。
マナ:決めた。君の名前は、ぼん。ぼんね。
謎の生物:…ぼん?
マナ:そう!ぼん!
ぼん:ぼん!
ぼんはぴょんぴょんと飛び跳ねた。