修羅場
「……」
「貴様ぁ!ぶち殺すぞ我が娘がいながらこの女は何だ!」
「いや弁明を」
「もし銃があったら即座に撃ち殺してたからな!」
……どうしてこうなった……事の発端は今日の朝、こいつらが家にやって来た時だった……その時俺はまさしくこう、ネカと寝ていたのだ。しかしルーはまだ言ってないはずだったけどなぁ……どうして俺の家の事も知ってるの?
「とりあえず弁明だけは聞いてやる」
ルーのご両親ですよね。恐らく……いや、それは別に構わないんだけどマジでなんでいるの……?
「その前に……そいつは何者だ?」
「俺の妹です……」
「嘘をつくなと言っているだろうが!」
ブチ切れてんじゃん……こんなの笑っちまうよもう……いや笑っちゃいけないんだろうけど。しかしなんなのコイツらホント……人の家に勝手に入ってきていきなり説教とか……
「まだ娘一人だけを愛しているというなら何も言わずに帰ろうと思っていたがもう許さん!娘が多感な時期にその心を乱しやがって!おいショットガン持ってこい!」
「ショットガンはダメだろ!普通に考えて!」
こいつら話が通じないんだけど!キレそう!
「こっちには刀があるぞ!」
「対抗しなくていいからね!?」
と言うかなんでショットガン持ってんだよこいつ!?うーわガチの日本刀じゃん俺妹の将来が心配になって来たよ……ハァどうするかなぁ……少なくともルーがいればまだ何とかなりそうだが……
「まぁ待ってみてはいかがかな」
「黙れ!そこまで言うならもう殺すしかないぞ!」
「俺そんなに言ったかぁ?!」
なんかもう嫌……誰か助けて……
「ちーっす飯屋からの宅配ネー……ってなんか修羅場?」
「あっちょうどいい所に!弁明して!」
「はぁ……よく分かんないんだけど、その辺ハッキリしてほしいネー……」
こいつなら確かネカがバイトに行ってた店だから何とか……!何とかしてください……!
「かくかくしかじかで……」
「ふーむ……要するに今ヤバいって事ネー?」
「そう言う事だ!弁明よろしく!」
「はぁ……まぁいいネー。簡単に言うとそいつは妹で間違いないネー」
よしとりあえずネカの方は妹だと認めたっぽいな、少なくとも顔がさっきまでの怒りに満ちた感じじゃなくなった。……それでも怒ってるけど。しかしどうするべきかねぇ……
「とりあえず一回話を聞いてくださいませんか?」
「……一回だけだぞ」
こうなったらここで何とかするしかない!
「第一貴様家族はどうした?一人暮らしなのか?」
「えぇまぁ……」
「親を出せ親を」
なんてことを言いやがるんだこいつ……。いやババアに電話すれば多分来るかもしれねぇけど……それで来ると思えねぇんだよなあいつが……いやなババアだもんな……。しかしまぁそれを無視してもやらなきゃゼロだし電話するか……
「おいババア」
『なんじゃやかましいのぉ……今幼女として勉学に励もうとしていた時じゃぞ』
「いつも学校になんかいってねぇだろババア」
『まぁ別によいが……それで、何用じゃ?』
「単純に家に来て欲しいんだけど」
『はぁ……ま、いいじゃろ』
と言う訳で来てもらえることになったぞ。さてこれからの問題は……時間をどうやって稼ぐかだ!今はとにかく話を逸らしお茶を濁しながら長々と言葉を喋り続けるしかねぇ!
「そう言えば娘さんの子供の頃の記録とかありますかね?」
「はぁ?!あるに決まっているだろうが!えぇいそんなことを言うのであればこいつを見せてやる!」
「ビデオはそこです……」
そう言えばルーの子供の時の姿って見た事ねぇな。そもそもあいつ全然昔の話をしたがらないんだけどな。と言う訳で昔の姿を見るのはこれが初めてだ!さぁどんな奴が出てくるのか……
『今日は大丈夫かい?』
『えぇお父様!今日は歩けそうです!』
「これは病弱だった娘が歩けるまで回復した時の記録でな……?」
「はぁ……」
思った以上に重いのが出て来たぞ!しかも後ろに見える病院ってめちゃめちゃ高い病院じゃないか!?いや確かこいつら結構いい感じの会社の社長だって言うし……そのくらいは普通なのか?
『ハッピーバースデー!ルー!』
『ありがとうございますお父様!お母様!』
「これは娘が十の時に取ったものだ……うぅ、今見ても涙が出てくる……!」
「ようやく病院から出れる家ってくらいの時だったわね……」
ねぇコレ俺が踏み入って大丈夫な奴なの?さっきから全部病院の中の映像ばっかりだよ?アレ別人?コレ別人じゃないの?
『ふふん、今日は十メートルも走る事が出来ましたよ!』
『流石ルーだな!でも危ないから気を付けて走るんだぞ?』
『はい!』
「自分の足でようやく走る事が出来た映像だ……!」
「あぁ!」
……と言うかルーの母ちゃんうるせぇ!一々オーバーリアクションなんだよ!なんだそのわざとらしいハンカチは!なんだそのよく分かんない扇子は!文字書いてあるじゃんどれどれ。
「何で『滅殺』なんだ……」
怖いなー戸締りすとこ。