この男は狂っている。
「ハァ……ハァ……化け物が!」
なんだよあいつ!?俺の爆弾をピンポイントで避けやがる!ロメジュとか言う奴が追い詰めてたから使ったってのになんでこんなに追い詰められるんだよ!?
「流石に張り合いがないな……」
だがあいつは俺達を完全に舐めきってやがる!そこが付け込めるタイミングだろうが……!ここでさっきから持ってたこの釘をあいつに投げつけてやるって訳よ!なんだか知らんがこのキャラは手に持ってると爆破が強くなるんだろ?
「よぉ」
「!?」
えっは?今後ろにいたはずじゃ
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「ごばぁっ!」
「あー……原作見てない?」
鋼は原作からして重力の瞬間移動とか言うよく分かんない原理の技が使えたからなぁ……実際真似してみたら出来ちゃった。なんだこれ……そして相手はまだやられてない、と。まぁ俺もまさか出来るとは思ってなくて反射的に蹴っちゃっただけだけど……
「畜生……なんでこんなに強いんだよ!?」
「試行回数じゃね?」
「うるせぇ!」
おっとずっと腰に付けてた釘だな?悪いけどそれこっちだと完封出来るんですよね。釘に重力をかければ……ほら即地面に着地。しかし何というか……過大評価だったか?
「なっあっ」
「まぁなんだ、俺から逃げないで……あぁ、戦いからって意味な?」
「止め」
「戦ったって意味で敬意を表して……原作再現で〆にしてやる」
「あっあの技は!」
「知ってんのか?」
「あぁ、原作で主人公の相棒を殺した際に使われた技だ。あの体制は……!」
「どんな技なんだ?」
「簡単に言えば、主人公が鋼に対して『能力だけのクセに……』ってボロボロにされながらも悪態をつくんだ」
「はぁ」
「そしたら鋼が『では見せてやろう』って言って使ったのがアレだ」
「へー……で、どんな技なんだ?」
「単純だよ、ただ口をもって頭を自分の膝にぶつけるだけの技だもん」
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考えてみればホントあのシーンは絶望感たっぷりのシーンだったな……マジでこういう能力だけの奴って本体は弱いんだろ?って思わせてからのアレだからな……今からやるわけですが。
「じゃあな」
「ま」
脳みそ粉々に砕くレベルの威力……いや強すぎるわやっぱ。主人公の心も折れるわこんなの目の前で見せつけられたら……ヒロインがいなけりゃ本当に心が折れてただろうな。まぁヒロインはその五話くらい後で鋼にぶっ殺されるんですけどね!こう……圧力を全身にかけられて圧縮された肉に……
「うーんこの強すぎる男」
マジでどうやって倒したんだっけ?
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「カエンか……」
カエン。それは試行回数の暴力である。大概のキャラを一目で使えるようになる器用貧乏であり、そこから試行し続け研磨する男だ。アレに勝てる時と言うのは初見キャラを使っている時に自分の持ちキャラでメチャクチャ序盤有利に戦ってギリ倒せるか倒せないか程度には強い。
「……あいつ絶対鋼の星見てるな?」
それにしても今回に関しては絶対あいつ知ってる使い方だろ……原作再現とかしない奴だぞあいつ。と言うより全然版権キャラ使わない奴ではあるんだが……。にしてもあの強さ、チートでも対応出来るかどうか……。
「なぁさっきからじろじろ見ないでくれる?」
「おっと済まない」
カエンに怒られてしまった……。いかんいかん。すぐ相手に興味を持ってしまうのが私の悪い癖なのかもしれない。ともかく今は謝っておこう。
「つい癖でな……」
「まー世界一位の実力を見たいってのは分かるけどね!むしろそんなところで見ないでもうちょっと近くで見て良いんだぞ?」
これだ。すぐこれなのだ。この男は自分が世界一位であると言う事を確信しているし、それが出来るほどの実力がある。故に傲慢であり、その強さを身をもって証明している。全く恐ろしい男である。
「と言うかあんた……。今度戦う事になってる奴じゃん?」
「……なんだ、知っていたのか」
「うん。確かリーダーの人でしょ?」
そう言えばあの社長が言っていたな、今度カエンと戦うと……。しかしあの戦いを見ていると、我々が勝てる見込みは1%を切るだろう。それこそチートでも使わない限りは確実にだ。
「……そうだ」
「やっぱり?まぁ今度戦う時には全力でぶっ潰してやるからよろしくな!」
この男は本当に傲慢極まりない男である。一応言っておくと、次の戦いと言うのが我々五人とカエン一人の五対一という奴なのである。だと言うのにこの男は負けると言う事を一つも考えていない。
「……」
「どうした?」
「いや。なんでもない」
ハッキリ言って今回の大会で勝てるなどとは微塵も思っていない。……それに、どうせ奴らはチートを使おうとするだろうからな。仮にそれで勝てると言うのなら苦労はしないのだが。
「流石にこれ以上やってると手の内が完璧にバレそうだから帰るわ」
「そうか……」
しかし毎日何時間戦っているのだろうかこの男は……。少なくとも一日二時間以上は戦っているんだろう。……でなけりゃあんな強さが出せるわけがない。
「……奴は狂っている」
それが、俺があいつに対して出した結論である。