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六日目:毒親との決着


「そろそろ奴が私の息子であると言うとするか……」


まだ人がいない頃、貴賎は既に会場に入っていた。一応不正品を使って入っているため、バレないようにと小賢しく考えた結果である。


「どうもオッサン」


「……なんだ貴様?」


そんな貴賎の隣に死装束の骸が座る。相変わらず気味の悪いにやけ顔を浮かべながら。


「俺?この会場に今いる奴だな」


「……だいぶ早く来ているようだがな?」


「だね、あんたもでしょ?」


「そうだな。……で、何か用か?」


「まぁあるけどね一応……この会場に入るのにチケットが必要なの知ってる?」


「でなければ入っていない」


そんなくだらない会話をしつつ、骸が仕掛けていく。


「だよねー……ところでさ、俺すっごい昔の事件を追ってんだよ」


「なに?」


「まぁあんたに言ってもしょうがないと思うんだけどさ。すんごい前にガキがビルの上から落ちて死んでんだよ」


「……」


「んでまぁ、そいつの犯人が分からずに早十年……」


「……何の話をしている?」


明らかにイラついている貴賎。だがその一言をきっかけに、骸は攻勢に入る。


「アンタだろ?……ガキ殺したの」


「……随分ふざけたことを言いだすのだな警察は。証拠も動機も何もないだろう」


「まーね。俺の仕事は事件を解決することだ。それ以外には特に考えていない。この事件も正直解決出来るとは思ってなかった」


「そもそもなぜ私が……」


「と言うのもな?十年前にとある家族が日本に来た時、急に出産することになり、日本の病院で出産することになった」


ここでややこしい話が上がる。と言うのも以前園歌はどちらかと言うとシーと血縁関係にあると言っただろう。それがこれである。


「はぁ……」


「その時、ちょうどその病院がボヤ騒ぎを起こしたせいでちょっとややこしい事が起こった」


そして貴賎は園歌の事をかつてこう呼んでいた。


「……」


(ジョウ)、と。


「ジョウ。その名前を使う奴が……まさか二人も生まれるとは思ってなかっただろうな」


「……」


「さて、子供の名前がほぼ同じという事に気が付いたのはお前だった。お前はある事を考えた。あんたは自分のガキが嫌いだった……あぁ理由は知ってる、まさか避妊をしたのにガキが産まれちまったんだからな。同情するぜ多少は」


「……それで?」


「んでこっから問題になる。海外……ロシアに戻った家族はその子供をどうにか処理したかった。邪魔だったらしい。そしてお前の考えが一致しちまったのさ」


何も言わない貴賎。そして骸はおぞましい真実を口にする。


「アンタはガキを自分の手で殺すため、替え玉として今の園歌……もといジョウを引き取った」


「……」


「そしてまんまとお前は自分の子供を殺すことに成功、弁護士や警察に金をバラまき、その事件を無かったことにした。……ここまでは良かったなぁ、あの時期は上が腐ってたからな」


「……」


「しかしここでとんでもない問題が発生した。園歌の母親が自分の子ではないと殺された後気が付いたのさ。まぁ仕方ない。殺した後に『上』であると偽って『ジョウ』を連れて来たんだから」


「それに証拠などがあるのか?」


「あるんだなこれが……ま、それを言っても捕まえられないだろうけど」


「では無駄ではないか。さっさと帰」


「ところで~さっきも言ったけどこのスタジアム、チケットが必要なんだよね~?」


先ほどまでの雰囲気から一変、なれなれしい様子で貴賎へと絡む骸。


「だから持っていると」


「じゃあなんでさっきからお前のチケットは異音を出してるの?」


その手には正規品であるか確かめるための機械が握られていた。


「……何?」


「そう言えばさぁ……お前チケット以外にこの腕輪が必要なの知らなかった?」


「……そんなことは聞いていないぞ?」


「つまりお前は転売品を購入したという訳だな?おい葛城!罪人だ!」


「なにを」


「了解」


「チッ!」


「アッ逃げるんじゃねぇ!」

______


結局早く起きちまったなぁ……試合はまだまだなんだけど。


「だいぶ早くから来ちまったなぁ……」


さてどうしようかなぁ……散歩でもするか。やっぱやる事ないと暇だなぁ……ってなんだ?なんか逃げてきてるな。あっよく見りゃカスじゃねぇか、カスがこっちに来るんだけど。


「そこの少年!そいつを止めてくれ!」


「あぁ分かった……」


えーこんなのに触りたくないんだけど……あっでもこいつ『息子だし見逃してくれるだろ』的な顔をしてやがる。腹立つ。ぶっ飛ばそうかな。考えてみればこいつに対して遠慮する意味無いじゃん。そうだったわ問題ないわ。


「死ね!」


「なっなぜ?」


「なぜもあるかクソ野郎がよ……」


ようやくこのカスに顔面一発食らわせてやることが出来たぜ……。思ったよりすっきりしねぇな。まぁこんなもんか。


「おら!逮捕!」


「クソッふざけるなよ……貴様ら警察の犬ごときが私を訴えられるとでも思っているのか?」


「うわぁ見て葛城、いかにも金持ってそうな悪役っぽい捨て台詞吐いてる」


「そうか。……しかしお前を助けてやれる奴はもう一人もいないぞ?」


「は?」


「あぁ言ってなかったっけ?俺らが上の腐ってる部分を一斉告発したおかげで今はクリーンな警察になってんだ」


「……何……?」


なんか難しい話してんなぁ……顔も見たくねぇし帰るとするか……後は警察に任せましょう。


「さてと……とりあえずそれ以外の罪は後で調べるとして……お前を逮捕する罪は転売したこと、買った事による転売罪だ。そして余罪は……たっぷりあるだろうからな?」


「そう言えばこいつにチケットを売った奴も存在するという事だよな?」


「そっちは捕まえた。んでこいつが購入した方って訳だ」


「成程。じゃ、警察に行くとするか」


あのカスが警察に連れていかれている。……まぁ正直どうでもいいって言っちゃぁどうでもいいんだけどね……どうかあいつに正式な裁きをよろしく。


「よーやく捕まったかあのクソバカは……」


「あっババアだ、おはよ」


「誰がババアじゃと!?……ま、別にいい。奴は恐らく正式に法の手で裁かれるじゃろう。……しょせんは三下の男じゃよ。正しき法の下に晒されれば、もう出てくることはあるまい」


「そう……」


実の親からこんなこと言われちゃもうおしまいだよマジで。そう言えばなんでここに来てんだろババアは。いや俺が呼んだのは知ってるんだけど、この時間にって意味で。


「お主ならここに来ると踏んでな。どうせなら間近で応援してやろうと思ったわけじゃよ」


「流石に見抜かれてたか……」


「お主は顔に出やすいんじゃよ!……それで?これからどうする気じゃお主」


「まぁアレがどうなろうが知ったこっちゃないし……今は大会に集中するよ」


「そうか……あっそうじゃ」


「何?」


「……彼女を大切にしろよ?お主は奇特な人間じゃからな。それにまだひ孫の顔も見ておらぬしな!」


「……言われなくても分かってるさ」


「そうか!ではもう言うことは無い!存分にやって来い!」


「……ありがとなババア」


「おう。……後もう一度ババア呼ばわりしたらぶっ飛ばすからの?」


「わりぃババア!」


「ワレコラぶち殺すぞ!」


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