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倭都タケル=吾のまほろば=  作者: 川端 茂
第八章
101/108

検分を済ませ、村人とも辛い別れを告げて再び己実へ

「検分は巡視の一環ゆえ、案内は二人で用が足りる。寒い中を出迎え御苦労であった、下がって良い。」


 建造中の政務舎は二層のうち、下層の柱と梁が組まれた状態で、間口と奥行が共に半丁あり、その横にまつりごとを行う広場も整備中で、高さ六尺の柵に囲まれている。


 石段の上に建っていた宮殿は、きれいに取り壊されて兵舎や倉庫が並んでいる。


「順調に進んでいるな。完成までの日程はどれほどだ。」


「総勢で掛かっており、六十日で完成を見込んでおります。では神社をご案内致します。」


 坊主山の麓に建造している神社は幅一丈、長さ半丁の参道が石段で、両側に檜が植えられている。参道を上がった平らな場所に本堂とほこらが建つ予定で、その地固め作業中だ。


「立派で厳かな神社になりそうだ。社名は決めておるのか。」


「住職が決まっておらず、今のところ未定です。出来ましたら、倭都やまとタケルのみこと様の倭台市での恩を忘れないよう、大恩神社が良いと考えております。」


 大恩神社……。コルノの戯言かと思ったが、目は真剣だ。

 コウスは吹き出しそうになるのを堪え、シウリや役人とよく相談して決めるよう伝え、火良村に馬首を返した。


 凱旋隊に別れの挨拶をしたいと、コルノとリ・シアムも騎馬で後ろに付く。


二十

 篝火が燃え盛る火良村の街道。隊列を組んだ凱旋隊の後方に、大勢の村人が出ている。子供も女人もいて、五百人は下らないだろう。


「政務舎と神社の検分を終えた。さあ、己実へ出立だ。」


 コウスの号令が響くと、村人の騒めきが沸き上がった。


「色々と世話になった。皆の助力があって、目的が達成できたのだ。心より礼を言う。倭南の諸氏と仲良く協力し合って、豊かで栄えある州に育てよ。」


「火良村と私共をお救い下さり、誠に有難うございました。コウス皇子様の御勇姿は、生涯忘れません。皆様くれぐれもお気を付けて、お達者で。またのお越しを、お待ち申し上げます。」


 あちこちで号泣している者がいる。別れが辛いのはコウスも同じだ。


「さらばだーぁ、皆も元気で暮らせよ。」


 凱旋隊四十六人とシウリ当代が、騎馬三列で己実へ発つ。その後ろを、村人が手を振りながら、涙を拭いながら追いかけて歩く。


 それは街道が難和なわ川沿いになる三丁先まで、離れることはなかった。

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