なな
「ごめん、付いてきてくれてありがとう。お話せず、すみません。」
どこかな〜とカメラを起動。
カメラ起動するの面倒だから、このまま見れるようになれたらいいのに。
なんか方法がないかな。
「本当よ〜。全く。変なもの拾ったりしてるし、全然話しかけてくれないのだもの。ヒトミに忘れられちゃったかと思ったわ。」
わー、めちゃくちゃ拗ねてて可愛いな、この子。お花の妖精みたい……
「本当にごめんね。ねえねえ、少年が名前がないっていってたけど、貴女もないの?もし駄目じゃなかったら貴女に名前をつけてもいいかしら。呼びにくいし。」
「んー、名前がないっていってたのはちょっと不正解なんだよね。私たちは精霊の子どもなの。子どもでもね、それなりに力があるの。名前をつけられてしまうと、存在が固定されてしまうから、名前がないのよ。固定されてしまうと解除するまで成長できないし、自由が制限されてしまうの。まっ、勝手に名前をつけられてもその精霊が許可しなければ固定されないんだけど。」
へえ、やっぱ契約みたいな感じなのかな。言霊とかあるもんね。
そういうものか、あ、でも名前つけていいかどうかの答えがないなあ、嫌だったかな…
「ヒトミは名前も教えてくれたし、丁寧だし、乱暴しなそうだから、特別に好きな名前で呼んでいいよ。許可はしないけど、許容はするからね!とびっきり可愛いおしゃれな名前にして頂戴ね。」
あ、嬉しい…。
少女の姿を改めてみる。
髪はふわふわで銀色、美しい。目の色はスミレ色、めちゃ綺麗。
表情はコロコロかわって愛らしい、え、天使か!?
本当に妖精みたい…、精霊なんだけど。かわいいなあ
「スミレ、というのはどうかな。私の世界にある青い色の綺麗なお花なんだけど。」
名付けのセンスがいまいち、というのを自覚してるから少女がどんな反応するのか不安だ。どきどきする。
「いいね。可愛い名前。気に入った。この世界にない、というのも評価が高いよ、ヒトミ。」
おお、喜んでもらえたっぽい。よかった。
「スミレちゃん、これからよろしくお願いします」
挨拶は大事、ちゃんとしておこう。
「うんうん、ヒトミは丁寧でいいね。これからよろしくね。」
……おっ。スミレちゃんが喜んでくれてる。
少女がにこにこしていると場が華やいでとても良いねえ。
そして、左手がポカポカしてきた。
なんだろう、、光ってるわけでもないけど、違和感がある。
よし、カメラで写してみよう。
『スミレのお友達の印』
マークがついてるー!!!!???カメラを通さないと見れないけど、何このヘンテコな模様。
お友達の印は、嬉しいけど!不思議だ…
これが異世界。何もわからないけど、許容されたってことかな。
「なーに、さっきからその板でみたりして。私の姿、みえないの?」
カメラがないと見えないんだよ〜、スミレちゃんにスマホのこと、なんて説明しよう。
・・・・・
「へー、その板、魔法具なのね。私からみても何も見えないけど。そんなすごいものもってたら盗まれたりしたら大変だよ、しまっておきなよ。」
めちゃくちゃ呆れられた。やっぱりこのスマホは規格外なのかな。
まあ、管理人とかいう神様?から連絡が来るくらいのものだもんね。
空間に収納できたりしたらいいんだけど。
「とはいってもねえ、収納するにしてもビニール袋しかないし、ポケットだと落としたら割れそうなんだよね。」
と思っていることを正直にスミレちゃんに話す。
「あ、ヒトミは魔法が使えないんだよね。忘れてたよ。そんじゃ、魔力はあるみたいだし、やってみようよ。まずは、魔力を感じよう。さっき左手に感じたあれがヒトミの身体の中にあるはずだよ。分かりにくかったら左手の紋章を感じてそこから辿っていってごらん。」
さっきのマークから辿る…?
温かいのがどっかにつながったのかな、う〜ん。
目をつぶって感覚を研ぎ澄ませてみる。
自分の体の声を聞くようにひとつひとつ「それっ、その感じだよ」……あってたみたい。
むむむ、これかな、ほそーく左手からつながっているのを辿ってみる。
瞑想特訓の成果ですね、黒歴史も役に立つ。
巡らせて巡らせて、ポカポカをたどりつつ、血流を意識しながら馴染ませて、これっていうのが心臓あたりにあるのが分かった。
温泉で言うところの源泉を見つけたって感じかな。わかりにくいね。
「ヒトミ、筋が良いよ。もうそこまで分かるんだね。その温かい力が魔力だよ。人によっては冷たかったりと感覚が違うみたいだけど。その魔力を使って色々するんだけどね、まずは、その魔法具をどうにかしちゃおう。あとお母さんからもらった聖なる葉もね!」
あああ、忘れてたよ。すっかり。
いきなり超常現象がおこっていて頭がパンクしそう。
「そうだよね、ありがとう。この葉っぱ、スミレちゃんのお母様は身分証とかいっていたけど、単なる身分証ではないんでしょ?」
「そうだよ。お母さんの特別な葉っぱ。これを持っていると色々便利なのよ。もらえてよかったわね。遊び人ってだけでもらえるわけではないんだよ。お母さんが遊び人ってちゃんと認めた人だけなの。それよりもほら、早くしまっちゃいましょ。魔力が感じられるなら直ぐにできるわ。」
そういって、スミレちゃんがなにかまじないのようなものを唱えている。
カメラをかざして何をしているか確認したいけど、いちいち持つのが面倒なので、声が聞こえる方を向いて待っている。
すると、声がする方から覆われたなにかが私の方にやってきた。
「えっ、スミレちゃん、なにこれ。なんか来たよ!!??」
「今私の姿が見えていないでしょ。そのままそこで待ってて。すぐに終わるからね。」
「ひゃっっ……」
ひやっとするけど冷たくはないなにかに私は覆われた。
覆われた瞬間、スミレちゃんの姿が見えるようになっていた。
何が起こったか分からないと思うが私も分からない。どんとこい超常現象……
「大成功〜!久々にやったけど上手くできたみたいね。これで魔法具がなくても私の姿が見えるでしょ。こっちのが教えやすいから。」
スミレちゃんがそれはもうとても可愛いお顔で聞いてくる。かわいい。
お礼をいうとちょっと照れていた。とても可愛い。
「さ、遊んでないでさっさとやっちゃうよ。空間に物をしまうの。まずはそこの枝を空気のポケットがあると思ってそこにいれるようにやってみてね。イメージが大事だから。すぐにできるわ。」
空間にしまうやつ!
おはさん、これ、昔憧れたやつですよ、空間に収納するの。
イメージトレーニング、ばっちりです!!よっしゃー!
………結果、できました。
案外さくっと、一人でやってたやつは何?ってくらいさくっとできました。
呪文とかは特になかったです。恥ずかしい…
ちなみに、この収納の魔法は一般人が普通に使っているらしいです。なるほど。
ようやく収納できたよー!
人と話すのは楽しいよね