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森の誘い

 今回はトウヤ目線です。これからもたまにトウヤ目線の話はあると思います。

「直線超越!」 

 

 数が多すぎる、今までは取り敢えず強いスキルで強い敵を倒してきた。正直言って手加減なんて出来ないし、単純な技術なら銅ランク冒険者にも敵わない。


「ベル!」


 危ない! クソッ! ここからじゃ、ベルをどのスキルを使っても守れない、クソ! あのじいさんに剣術、武術も学ぶべきだった……


 


 俺は元の世界では、ものまね芸人としてある程度成功はしていた。だが、調子こいて酒を飲みまくって酔ってマンションのベランダから落ちて死んだ。控え目に言っても大馬鹿だろう。


 次俺が目を覚ませば見知らぬ7歳の少年。最初は訳が分からなかったが次第に今置かれている状況を理解してこう考えた。これは異世界転生!と、また8歳でスキルを知って、そのスキルがチートで異世界楽勝生活のスタートを切るんだと思っていた。

 だが、実際は『直感』、『野生の勘』、『物真似』、『九死に一生を得る』というスキル。正直最後以外は最悪だった。


 まず『直感』はたまに反射的に行動出来るというもの、例えばたまに攻撃を避けようとするというもので絶対避けれるわけでもなく、避けようとしたからといって完全に攻撃を避けきれず被弾する。

 『野生の勘』は似たようなものでたまにいい案が浮かぶみたいなもの。

 そして『物真似』は自分以外のスキルを真似て使うというもの、一見強そうだろ? ただし条件がある、そのスキルについて詳しく理解すること。スキルは言わば超能力の様なもの、つまり俺は自力で超能力の仕組みを理解しなければならない、つまり無理だ。

 最後に『九死に一生を得る』これは1日に1度外敵要因で命を落とした時、生き返るというもの、凄く強いスキルだが、飢え死にする時にはには発動しない。


 まあ正直最後もスキルだけで生きていけそうだが、俺は貴族の家の三男坊としてこの世界に生まれた。この世界は強いスキル、使えるスキルを持ったものだけが楽を出来る実力社会。


 俺のスキルは耐える事ならある程度大丈夫だが、俺は小さい時病弱だったそうで、何かの剣などの訓練も受けれず、一応貴族の子供なのでそれなりの処置を施してもらったためヒョロヒョロとまではいかないが、細身で力がない。そんな俺に元の世界にはいないような強い力を持った魔物と戦える訳が無い。

 しかも家を継ごうにも長男は『才気煥発』というスキルで領地の管理等に適したスキルで、つまり賢くなるというスキルで頭脳派。


 次男は『剣の使い手』という他を寄せ付けない剣技を扱えるスキルと『剛腕』という生身でも強いよ、みたいなスキルを持っていて肉体派。


 天才が領地を管理して筋肉ダルマが反対勢力を粉々にする。つまり俺は要らない。前世も中卒で全然前世と勝手が違うから馬鹿だったし、親はこんな使えない子供がいるということが許せなく、事故死に見せかけて殺そうとして来た。それを、なんとか逃げたけど、あてが無くて山の中で行き倒れたところをあるおじいさんに拾って貰った。


 そのじいさんは若い時、冒険者として活躍していたらしく『慧眼』という見たものを見極めるというスキルを持っていた。


 そこで「俺は強くなりたい!」といいスパルタ教育が始まった、思い返したくもない。

 そのじいさんはただのじじいではなかった、化け物だったのだ。


 その訓練の中、1日1度は死なない事をいい事に何千回も殺され、十年かけて『物真似』でそのスキルを習得した。それで俺は簡単に相手のスキルを『物真似』で使える様になってじいさんの知り合いの強いスキルを散々習得してじいさんの元を離れて、冒険者となった。


 そして、冒険者ギルドにある依頼で片っ端から強そうな魔物の討伐とかだけを受けて得たスキルで倒した。しかし、困った事に俺には才能が皆無で十年かけてやったのにもかかわらず剣技とか武術は全くだった、まあ前世の記憶あったら戦うの怖いじゃん。


 それで気がついたら急に現れた初心者冒険者が強い魔物をじゃんじゃん倒しているって大物食いだって呼ばれて金ランク冒険者になって目立ちすぎたから今度は目立たないようにと旅を始めてベルと出会った。正直めっちゃタイプだった、そして今に至る。



 しかしその瞬間、ベルの周りにいた魔物から血飛沫があがった。


「なっ……!」


 一瞬何が起きたか分からなかった、ただ此処には俺とベルしかいないという事から簡単に察しついた。


「ベル?」


 名前を呼びかけたが、返事は無く、此処にいた魔物全てから血飛沫があがった。それと同時にベルは倒れた。


「ベル!」


 俺はベルに駆け寄って抱き抱えた。どうやら気を失っているだけだった。


「良かった、だが問題はさっきの事だな」


 取り敢えず俺はベルをおんぶしてさっきの村で聞いた近くの村目掛けてスキルを使って走り出した。

 話に寄ればもう直ぐで森を抜けて村が見える筈だが、いくら走っても森は何処まで続いていて、逆に森が深くなっている様にも感じた。しかし、それとは反対に明るくなっていて、木々も背丈の高いものが多かった。


「あそこに光が!」


 少し先に人工的なランプの様な物があった。恐らく村だろうと思い近づいた。


「あのーすみません!! 誰かいませんか?」


 するとこの世界でも変わった服を纏った中性的な顔立ちの青年が現れた。


「人間!」


 そういって腰元に掛けてあった弓を取り出して矢をつがえてこちらを狙ってきた。


「おい、ちょっと待ってくれ! 俺は怪しい者じゃない! 確かに美少女をおぶって物凄いスピードで走ってきたけど!」


「信用できるか!」


 そう言って矢を射ってきた矢をスキルで避ける、いやちょっと待てよ……耳が少し尖がっているし、弓矢を使っていて美男子…………もしかしてエルフ!?

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