偽りのワタシ
また遅くなりました、すみません。
「じゃあ、トウヤさんは元々違う世界にいたんですか?」
「そうだな、そこで、ものまね芸人っていうのをやってたんだ。まあ簡単にいうと有名な人を真似て人を笑わせるっていう仕事かな」
人を笑わせるお仕事か……
「少し憧れるな……」
「えっマジか!? じゃあ、弟子入りするか!」
急に顔を近づけてきて、そう言い寄ってきた。
「えっと……」
今までになく、強引だった。
「えっと?」
「無理です……」
「そうか…………」
「落ち込まないで下さい……」
死んだような顔になって落ち込むトウヤさん。そこまで、落ち込みますか。
「いや、だってぇ」
そういってすすり泣き始めたトウヤさん。
「泣かないでくださいよ」
こんな事で泣きますか。
「いや、ベルわかるか? 芸人人生22年で誰も慕ってくれないのが! 人生、甘酸っぱいっていうけど、少しも甘くないよ!」
「大変そうですね……」
「おい、わざとだな」
「いえ、そんなことはないですよ」
「いや、笑ってるじゃないか!」
そんなやり取りをしている間に気が付けば、深い森に入っていて辺りは、薄暗かった。
「すいません、少し休憩にしませんか?」
足が痛くなってきました。
「ごめんごめん、じゃあここら辺で」
すると茂みから物音がした。
「トウヤさん、何かいます」
「そうなのか、分かった、ここから動くなよ」
そういってトウヤさんはあの時と同じ紫色の門を出してそこから剣を取り出した。金ランク冒険者ってかなり凄いはずなのに、こういうのは分からないのかな。少し違和感を覚えた。
「分かりました、トウヤさんもお気を付けて」
「任せろ」
トウヤさんは切っ先を天に向けて、
「雷鳴剣!」
その声と同時に空から光が剣に落ちてきて、剣が電気を帯びた。そして、剣を構える。
「かかって来いよ! 獣ども!」
その声に反応して茂みから沢山の獣が現れた。
「直線超越!」
トウヤさんの姿が一瞬消えて5メートルほど先にまた現れる。そして数瞬遅れてその直線上にいた獣から血しぶきが上がる。
後ろから私に獣が飛びかかってきた。
「キャッ!」
「ベル! 頭を下げて!」
言われた通りに頭を下げた、すると同時に私の上をあのドラゴンのものと同じものが通り過ぎる。
「次! 直線超越!」
そのまま、何体もの獣を蹴散らしていく。しかし、数が多い。戦いの音を聞いてか、まだ獣が集まり続けている。トウヤさんは私を何度も確認してくれて守ってくれる。けど、私がいるせいで派手なスキルは使えない……私の……せいで…………
「――――貴方は死にたいの?――――」
誰? どこからか声が聞こえる。小さい女の子の声。どこか懐かしい声。
「――――妹に会いたいんでしょ?――――」
「そうだけど……」
「――――ならここでここで死んだら意味がないじゃない――――」
すると私の視界に奴隷の時の私が映った。
「おい! もっと、はやく仕事をしろ!!」
「はやく行け!」
罵声を浴びせられている私が映る。様々な場面でのワタシが……
「虫なんか、さっさと殺せ」
「嫌だ嫌だ、もう見たくない」
目を通してもそれは見える。何百回も流れ続ける映像。そう999回くらい…………
そして映像は消えた、代わりにさっき聞こえた女の子の声が、
「――――はやく、殺せ――――」
「そうだよね、殺されそうなら殺せばいいんだよね」
え? 口が勝手に動いた。
「フフ」
目の前が赤く染まった。
獣たちの血によって……




