連携技
私が魔物に向かって走り出した瞬間、後ろが青白く光る。
その直後、私の横を通り抜けるようにして、頭一つ分くらいの紫色の毒水の球体が私を越えていく。
その球体は魔物の上で今までかかっていた力が無くなり、雨のように魔物に降り注ぐ。
魔物にかかった毒は瞬時に蒸発し魔物の皮膚を焼いていく。
エルフの人はスキルに頼らず魔法を使える。
それはアルカも例外ではない。
アルカは発動した水の球体にスキルで皮膚を焼く毒を含ませたものを撃ったのである。
ありがとう、アルカ。
「弱点発見!」
もう一つの新しいスキルを使い魔物の心臓ともいえる魔石が私の目に映る。魔物の右足首が淡い赤色で光った。このスキルは代わりに自分の動きが遅くなるから、相手の動きが鈍くないと使えない。そこで、アルカが動きをある程度封じる。これがこの作戦!
私はアルカの毒で今すぐ動けない魔物に全力で駆け寄る。
舌を用いた遠距離攻撃も注意する必要がない……
再生能力……
私はあと1メートルないところまで近づいて気が付いた。
しかし、もう遅かった……
間に合わない……
助けて……トウヤさん……
とはいっても、もう舌がベルの腹に向かって進みだしているこの状況では冬夜は間に合わない。
冬夜は間に合わない。
私は目をつぶった。
次の瞬間、風を切る音の直後に何かが突き刺さる音がした。
「今さ!」
私はアルカの声で目を開けると、そこには舌に突き刺さりそのまま貫通して魔物に突き刺さった、短剣があった。
しかも、その短剣には見覚えがある。
アルカが使っている短剣だった。
ええ! どうなってるの!? とは思うけど今は魔物が先だよね。
「おりゃーー!」
大鎌は見事に魔物の魔石を砕いた。
そして数瞬遅れて、魔物がパンッと黒い煙となって消えた。
「勝てた……」
私は歓喜の声を上げたけど足の力が抜けて地面に座り込んだ。
そこに、トウヤさんとアルカが駆け寄ってきた。
「大丈夫さ?」
「すまんな、無理をさせ過ぎた」
「私は大丈夫、疲れただけだから。あとトウヤ、そんなことないよ、自分で頑張りたかったから頑張ったんだし」
正直、ギリギリだったけど。これで連携の大切さも改めて分かったし、二人だけで倒せて少し自信も付いた。
「じゃあ、地上に戻ろうか。ベル、つかまって」
そういってトウヤさんは私に背を向けた。
おん……ぶ……!
そう、私が目を輝かせているとアルカが耳打ちしてきた。
「……トウヤと、お付き合いしてるさな?……」
「ひっ!」
「どうかしたか、ベル?」
トウヤさんは背を向けたまま、私にたずねてきた。
「だっだいじょっじょうぶです!」
「そうか」
少し語尾が上がっていて疑問形だったけど、そんなことより!
「……ちっちがっ違うかっからね……」
「……じゃあ、私トウヤとお付き合いしていいさな?……」
その時、アルカの口角が少し上がっていたが、取り乱しているベルは気付くはずもなく、
「駄目!」
「何が?」
「あっとっトウヤさ」
「ああ、分かった」
ええ! きっ聞こえてたの!
「さん付けの方が呼びやすいだろ? なら、さん付けのままでもいいと思うよ」
良かったー、違うかった。いや、違わなくはないけど。
「分かりました、トウヤさん。あと、自分で歩けそうなので歩きますよ」
後半が棒読みになっちゃったけど、まあ今はいいとしよう。
「そうか、でも無理はするなよ」
「はい!」
そして、私達は迷宮攻略へと向けて進んでいきました。
♦︎♢♦︎
暗い、牢獄の中に一人の少女がいた。その、髪は灰色で瞳は黒色、この世界ではごく普通の見た目の少女。
「世界が始まりに向かうのも近い、そろそろ私も取り掛かろうかな。フフフ」




