TS悪役令嬢物語
気が付いたら女になっていた。
ごく一般的な中年サラリーマンとして日本に生きていた僕。
妻と一人娘がおり、そこそこ仲良く暮らしていた僕は、まあ幸せな人生で会ったと言えるだろう。
ある週末の日、仕事の疲れを癒すため晩酌を楽しみ寝床についた僕であったが、目を覚ますとなんと見知らぬ天井が目に入ってちょっとびっくり。
そして驚きの声を漏らすと二度目の驚愕。聞こえてくるのは女の子の声。
そいて驚愕の中自分の身体を触り確かめると自分が女の子になっていたのに築いたのであった。
いやはやこれはどういうことだと戸惑っていると次第にこの女の子の身体の記憶がよみがえって(?)来る。
そしてその記憶を探ってみるとびっくり仰天。
なんとこの世界は妻に進められてやっていた乙女ゲームの世界であった!
そして僕が転生した女の子こそ、主人公の恋敵にしてあくどい事ばかりをしている公爵令嬢、アイネハルト・インクヴァルトその人であったのだ!
まあ要するに乙女ゲームの世界に悪役令嬢TS転生したのが僕だったわけ。
さて乙女ゲームの世界に転生したわけだけども、前世で結婚していた通り、僕は至ってノーマルの性癖の持ち主。
いくら身体が女の子だからって男と恋愛なんてできない。気持ち悪いったらありゃあしないからだ。
さらにこのアイネ氏、悪役令嬢として好き勝手していった結果、最後には婚約破棄からの転落人生という末路を辿っている。
しかも家族も婚約者の家族という立場を笠に着て好き勝手してたから、国民の恨みも強く、さらに倍率ドン!だ。
僕としては当然そんなの回避したい。
以上のことから僕は王子との婚約フラグだけは避けたいのだ。
なぜこんなことを語ったかというと、今日が初めて王子と出会う日であり、この日意気投合したことが、僕と王子が婚約者となった最大の要因となったからだ。
だから絶対意気投合なんかせず、嫌われて、婚約者となる破滅の未来だけはさけないといけない。
僕はそう静かに決意したのであった。
~~☆☆☆☆☆~~
言葉を失ってしまった。
僕の目の前に現れた人は予想を裏切るような人物であった。
運命とはこのことをさすのであろう。姿が変わっても分かる。その魂が僕に訴えかけてくるのだ。
自分のことを。それは僕にとって誰よりも大切で、愛していた人。
もう二度と会えないと思っていた人。それが王子に生まれ変わって現れたのだ。
僕はなんてついているんだろう。
愛した人とまた出会えるなんて。
しかもまた愛し合えるチャンスに恵まれるだなんて。
僕の中には性別のことだとか、破滅フラグのことだとか、もうすでに消えてなくなっていた。
ただ、愛しい人といられる。それだけの思いで彼に気に入られようと必死で話始めたのであった。
ああ、あなたは僕に気づかないかもしれない。
前世のことなんて忘れてるかもしれないし、覚えていても僕の魂を感じとれないかもしれない。
でもいいんだ。愛し合う関係になれるのなら。二人で一緒にいれるなら。
だから伝われ。そして成就しろ。僕の愛よ。
ああ、愛してるよ兄さん。
~~☆☆☆☆☆~~
兄さんに恋したのはいつのことであったか覚えていない。
ただ物心ついたころにはもう大好きだったのだけは覚えている。
しかし同時にこの恋は叶わないとも自覚した。
なぜなら僕と兄さんの間には血のつながった兄弟という大きな壁が存在したからだ。
だから兄さんと一緒になることはそうそうに諦め、普通の恋愛をしようと決意したのであった。
せいぜい考えていたのは子供がもし女の子で、その子が大きくなったとき兄さんがフリーだったら、結婚してもらって、僕と兄さんの血のつながった子供が生まれたらいい。
そんな些細な夢を抱える程度に留めよう。そう決意したのであった。
しかし、僕の恋が叶う日が来るなんて。
この世界では僕と兄さんに血の繋がりなんてもちろんない。
さらに言うならば、今世では僕は女なので、兄さんとムリなく子供を作ることができる。
なんてすばらしい世界だ。ビバ転生!
さて、兄さんに好かれるように振る舞ったおかげで、取り合えず婚約は予定通りなされたわけであるが、ここで一つ問題が。
それは主人公というアバズレの存在だ。
彼女と出会うのはまだまだ先の話。
しかしいずれ彼女は僕の前に立ちふさがってくるだろう。
ならばそれだけは絶対に阻止しなければならない。
彼女を遠ざけてさらには兄さんを僕に溺れさせる。
そう。この日僕の恋愛大作戦が始まったのであった。
~~☆☆☆☆☆~~
主人公サイド
目が覚めたら乙女ゲームの世界に転生していた。
それに気が付いたのは自分や周囲の人の名前がキャラクターの名前と一緒だったから。
まあ好きなゲームだったから嬉しさはあったけど、それ以上に死んでしまった悲しさが大きかった。
なぜなら前世には愛した人がいたから。
彼ともう会えないんだと考えるととても悲しかった。
しかしその悲しみはある日霧散した。
それは王子さまのお披露目の日。
彼を遠目にだけど捉えたとき、私の身体に電撃が走った。
彼だ。愛した彼もこの世界に来ていたのだ。
それに気が付いた日から、王立学園へ入学するべく努力を重ねた。
すべては王子様に近づくために。
そしてあの日王子様の傍にいた、あのアバズレを排除するために。
会える日まで待っていてね。私の愛する愛する―――――
――――――――――叔父さま。