町に入る
何十年も前の戦争時に建設されたと言う古い城壁をくぐると人の生活の音が聞こえてきた。
町の外から続く大通りには荷車と人々が行き交っていて俺たちとすれ違う度にラルズのじいさんに挨拶をしていく。
「ラルズ様、また神殿を抜けてこられましたね」
麦わら帽子を被り、荷車をひく中年の男性がじいさんに気づき苦笑いを浮かべる。
「ロイの癇癪が修道院どころか神殿にまで響いていましたよ」
「ちゃんと今日の勤めもこなしたし言伝ても残したのに、あやつは心配性なのだよ」
「まぁ今回は護衛をご準備されていた様ですけれどほどほどになさってくださいね」
中年親父は俺の方へ視線を向け、相違って去っていった。・・・護衛って俺の事か?
「そうかっ護衛をつければいつでもどこでも出掛けられるか!」
「勘弁してくれ」
「・・・・・・・・・冗談じゃよ」
今の間はなんだ。
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「それにしても、結構慕われてんだな」
さっきの中年親父もそうだったが会う人が皆親しみのある笑顔を浮かべているから、じいさんの人柄が伝わってくる。
「儂?当たり前じゃ。地域密着型の聖職者を目指してはや50年。儂の努力がようやく実を結んだと言う所かの」
じいさんのふんぞり返る図ってのはなかなかシュールだな。
そうこうしているうちに俺たちは町の広場に着いたようだった。ロータリーが噴水を囲うように回っておりそこから俺たちが来た道も含めた道路が4本十字の形に伸びていた。また、噴水を囲むように多くの屋台が建ち並んでおりさながらヨーロッパのマルシェのようだった。ここまで来ると人の量が増え、俺たちは人々の間をすり抜ける様に進んでいく。
「・・・ん?」
行き交う人の中にあり得ないものを見かけ、足を止める。
「ケンタ殿、市はまた今度にしてとりあえず神殿に行きましょうぞ」
ラルズのじいさんに急かされて俺は疑問をとりあえず置いておいて付いていくことにした。
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「付きましたぞ」
広場を抜け、今度は町の城壁に近い神殿に到着する。
ヨーロッパの教会や聖堂に近い尖塔が何本も伸び、鐘楼が屋根の上に建つ神殿だ。その奥にも建物が見えるからあそこが修道院なのだろう。
「いたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
RPGの教会ってこんな感じだったなと思っていると神殿から大声と言うよりも最早叫び声をあげながらこちらに走ってくる人物がいた。
「やっぱそうだよな!」
気づけば俺は叫んでいた。さっき市で何人か見かけた、そして今まさにこちらに突撃するがごとく向かってくる人物、そいつらには
動物の耳と尻尾がついていた。