目覚めたら不思議空間とかラノベかよ…
よろしくお願いします。
『申し訳ないけど、君死んじゃったんだよね』
「あ、俺まだ寝てるや」
盆休みの長期休暇。家の向かいの神社でやっている夏祭りを尻目にテレビゲームに興じていた俺、飯塚健太は全クリ目前でちょっと休憩と横になった。
それから目を覚まして一発目の会話である。
これは夢だ。何故って言われりゃ家にいたはずの俺は今、上は綿雲が点々と浮かぶ青空、下はじめんが見えない真っ白空間の中を浮いていたからだ。
『いやいやいや、マジで死んでんだって』
そう言う人物を俺は目視できない。それも夢だと思ってしまう一因だ。
何もない空間に喋り声が聞こえる訳じゃない。そこに少年くらいの背丈の人物がいることも分かるし、よく見れば顔だって分かる。
だが、頭がそれを記憶しないのだ。すれ違う車のナンバーを流し見する感覚だ。それは目が醒めると薄れる夢の記憶と似ていた。
『しょうがないなぁ』
そう『彼』は呟くと俺の目の前に楕円形の姿見を出現させた。
鏡に映るのは現実だろうか
なにかをわめく男たちとそれを押さえる近所のおっちゃん達
俺の家であろう火柱が燃える目の前で泣き叫ぶ妹たち
膝を着き、呆然とそれを眺める母
その母の肩を掴んで支える祖母
そこで映像が途切れた
『これで分かった?』
鏡を消し、聞いてくる『彼』
「説明、してくれるんだろうな?」
『おにぃ怖い』と妹たちにからかわれた顔をさらに歪めて睨む俺に
『もちろん』
『彼』は平然と返した。