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水平線上の垂線
空はいつも通り青い。予報によると、二日は天候が崩れないそうだ。ついに今日廽工業への挑戦を決行する日だ。これまでのことと、これからのことに思いをはせながら、エンジンを起動した。唸るような低い音が耳に刺さるような高い音に変わっていく。出撃口がゆっくりと開き、銀色のボディが空に照らされて青く見える。眼下には青い海が見え、空を飛んでもいないのに空にいる気がしてくる。意を決して出撃すると、体が押しつぶされそうな衝撃が襲い、あっという間に速度計は音速に達した。目の前には世界を二分割するコマ割りのような逆光で黒に塗りつぶされた巨大な塔が存在する。しかしそんな見慣れたいつもの光景には全く存在しなかった異質な円が塔の背後に鎮座している。それは禍々しくも生々しく蠢き、世界を守らんと佇む廽工業を忌々しく睨みつけているように廽工業の背後に存在している。二つの存在が重なり合うこの風景は、それ自体が神話の領域に人間が軽々しく侵犯しているかのような、奇妙な感覚に襲われて手が震えてくる。