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2章 トレジャーハンティング

「本当にここであってるの?」

「神武天皇の時代に禁呪の飴が生まれたという伝承が残っているくらいだ

 神武天皇の所縁の地に禁呪の飴があると考えてもおかしくはない」


 冬彦三・黒鈴・庭塚の三人は神武天皇が崩御されたという山奥を探検していた。三人は遠足のような軽装で、山の中腹を歩いていた。黒鈴はいつも大学に背負っている赤いランドセルで、冬彦三と庭塚もいつも大学に背負っているリュックである。

 三人が、けもの道を突き進んでいると、何か物音が聞こえてきた。


「しっ!誰か来る!」

「木陰の中に隠れるのよ!」


 三人は木陰に身を寄せた。そこへ屈強な男二人が現れた。


「こんなところに本当にあるのかなぁ?」

「伝承には神武天皇の名前が記されていた。神武天皇に関連する場所に絶対に禁呪の飴があるはずだ!」


 それを聞いた冬彦三は小声で呟く。


「やっぱり考える事は皆同じかー」

「でもなんだか信憑性が沸いて来たわね!」

「他の人に先を越されないようにしないと!」

「誰だそこに居るのは!」


 男二人が冬彦三たちに気が付いた。黒鈴と庭塚が大きな声でしゃべったせいだ。


「大声を出すから…」

「さては、お前たちも禁呪の飴を探しに来たのだな!」

「横取りされてなるものか!」

「ちょ、ちょっとタイム…話し合いで解決を…」


 冬彦三は二人を静止しようとした。冬彦三は平和主義者で、無駄な争いは好まないのである。冬彦三が闘争するとしたら、それは仲間に危害を加えられた時だけである。そのため、冬彦三は冷静に話し合おうと呼びかける。しかし、その二人は聞く耳を持たない。


「いくぞ!蝦藁!」

「おう!澤村!」


 蝦藁という男は海老の尻尾のような髪型をしている。

 一方、澤村という男は、スキンヘッドで目の周りに真っ黒なアイシャドーを塗っている。

 蝦藁は右手で冬彦三に殴りかかった。


「ひいいいい!!!」


 冬彦三はお得意の逃げ足で左に回避した。蝦藁のパンチは冬彦三の背名を通り過ぎて、後ろにあった木に当たった。するとバキっと音が鳴るとともに、その木はへし折られてしまった。


「なんという事でしょう!」

「これが俺の自慢の攻々こうこうせいパンチだ!」


 澤村も冬彦三に右足のキックで襲いかかった。


「なんで俺ばかり!?」


 冬彦三はまたしても逃げ足の早さで左に回避した。ドカッ!!!っと大きな音が鳴った。後ろにあった岩に澤村のケリが炸裂し岩が粉々に砕け散っていた。


「ばかな!!」

「どうだ!?俺の崩刑ほうけいキックは!?」


 三人は慌てて走り出した。けもの道を無我夢中で駆け回った。

 そして、冬彦三と黒鈴は自慢の逃げ足の速さでなんとか逃げきった。


「黒鈴~!微笑みデブ~!どこだ~!」

「ここよ~!」


 バラバラに逃げたため、黒鈴と冬彦三は互いに声を掛け合い合流した。


「あら?庭塚くんがいないわ!?」

「逃げ遅れたか!」


 庭塚が居ない事に気が付いた冬彦三と黒鈴は慌てて引き返した。

 一方その頃、庭塚は蝦藁と澤村の二人と対峙していた。


「にひゃひゃ!仲間に見捨てられたか…」

「委員長と黒鈴さんはそんな事する人達じゃない!」


 蝦藁は連続ジャブを繰り出した。

 庭塚はお得意の運動神経を使い全て両手で受け流して見せた。強力なパンチは正面から受け止める事は出来ないが、力を受け流しガードする事は運動神経が良ければ可能である。


「にひゃ!やるではないか!」

「だが二人がかりならどうかな?」


 蝦藁に気を取られている内に、澤村はいつのまにか庭塚の後ろに回っていた。庭塚は驚いた。しかし、時すでに遅し。庭塚は後ろから羽交い締めにされてしまった。庭塚は身動きが取れない。

 澤村は巻き付く大蛇の如く庭塚を締め上げた。あまりの力で庭塚は顔がピクピク言っている。なんとか抜け出そうと体をコクコク動かすが、首がコクりコクりと動くだけで全く抜け出せない。


「二対一なんて汚いぞ!」

「黙れ!お前はもうおしまいだ!」

「まてええええええ!!!」


 そこに冬彦三の声が響き渡った。冬彦三が駆けつけたのだ。そして、少し遅れて黒鈴も到着した。

 蝦藁と澤村はかなり驚いている様子だった。仲間を見捨てて逃げたと思っていた二人が戻ってきたのが意外だったのだ。蝦藁と蝦藁は動揺しながらもいたって強気である。


「三人居ようが、俺たちには敵わない!」


 澤村は庭塚を離し、冬彦三に襲い掛かろうとした。冬彦三は慌てて逃げだし木を盾にした。その瞬間自由の身になった庭塚が反撃を開始した。


「今だ!」


 庭塚はリュックからスタンガンを取り出し、澤村の背後からスタンガンを当てた!

 バリバリ!


「いぎゃああ!!」


 澤村は気絶してしまった。澤村は倒れて山道を転げ落ちていった。冬彦三は突然の出来事に驚いた。

 そこに蝦藁の声が響き渡った。


「そこまでだ!」


 なんと蝦藁が黒鈴をヘッドロックしていた!卑怯にも人質をとるという手段をとって出たのだ。蝦藁は狂気に満ちた顔をしており、舌を舐めずりまわした。


「こいつがどうなってもいいなら…」

「ふざけるんじゃないわよおおお!!!」


 黒鈴はポケットから催涙スプレー取り出し、蝦藁の顔に塗した。黒鈴の意外な反撃に冬彦三は再び驚く。

 顔面にスプレーを吹きかけられた蝦藁は怯んで叫び声をあげた。


「ぐおおおおお…!!!」

「今の内だ!皆逃げるぞ!!!」


 蝦藁は悶え苦しみながらそのまま倒れ込んだ。その隙に三人は一目散に逃げ出した。

 三人は山頂付近のかなり距離を取った場所で一段落した。


「二人なら助けに戻ってきてくれると思っていたよ」

「当たり前じゃない!私たちは大親友だもの!」

「そうさ!

 ………それにしても、二人ともなんて物騒な物を持っているんだ?」

「これか?これは護身用だ」

「冒険するならこれくらい準備しておかないと!」


 二人はこれまでの冒険でもスタンガンや催涙スプレーを携帯してはいたが、使うような急事は無かったのである。スタンガンや催涙スプレーを使ったのは今回が初めてであった。そのため冬彦三は二人がこんな装備をしているのを知らなかったのである。


「委員長は何も持って来なかったのか?」

「え?懐中電灯とカメラだけ…」


 冬彦三は水や食料などの他にはカメラと懐中電灯しか持ってきていなかったのだ。海中電灯くらいは黒鈴と庭塚も当然の如く持っている。そのため、二人は呆れてしまった。


「と、とにかく先を急ごう!」


 山奥をさらに先に進むと、洞窟があった。「アリ・ババと40人の盗賊」に出てきそうな大きな洞窟である。しかし、「アリ・ババと40人の盗賊」のように入り口は閉まっていない。


「あの洞窟の中を調べてみよう!」


 いかにも何かありそうな怪しい洞窟を発見した三人は喜びのあまり、走って洞窟の前まで行った。しかし、洞窟の中に入ろうとすると洞窟の中にはすでに先客がいた。

 またしても屈強な男が二人いたのだ。

 一人は親指が両手に2本ずつある男Xである。男Xには、普通の親指と対になる様に小指の隣にもう1本の親指が両手共に生えているのだ。

 そして、もう一人は左手が右手で右手が左手の男Aである。男Aは、文字通り、左手に右手が付いており、右手に左手が付いているのだ。頭が180°回転しているかのような錯覚をしてしまうように左右の手が入れ替わっているのである。


「お前たちも禁呪の飴を狙うトレジャーハンターか!」

「あれは俺たちの獲物だ!悪いがお前たちには消えてもらう!」

「くそ、またかー!」


 三人は逃げ出した。しかし、二人はものすごい形相で追ってきた。三人はバラバラになり入り組んだ山の奥に逃げ込んだ。

 黒鈴はお得意の逃げ足で逃げきれたかの様に思えたが、男Aは黒鈴のすぐそばまで追いついてきた。男Aはウサギを狩るチーターのような猟奇的な表情をして迫ってくる!


「まてえええええええ!!!!!!」

「きゃああああああああああ!!!」


 黒鈴はけもの道をとにかく逃げるが、男Aは物凄いスピードで黒鈴に迫る!男Aはイノシシの如く猛突進してきた!


「委員長よりはやーい!」

「当たり前だ!俺は陸上の名選手!200m走の日本記録保持者なんだからな!」


 男Aは黒鈴の長い髪の毛を捕まえた。男Aは髪の毛を鷲掴みにして黒鈴を引きずり寄せた。黒鈴は髪が引っ張られてのけぞった。


「きゃあああ!髪を引っ張るなんて!髪は女の命なのよ~!」

「うるせー!トレジャーハントに男も女もあるか!」


 黒鈴は再び催涙スプレーを取り出そうとした。しかし、男Aはそれを見逃さなかった!すかさず武器を察知した男は催涙スプレーを手にした黒鈴の手首を捻り、黒鈴は催涙スプレーを落としてしまった。

 カーン!

男Aは催涙スプレーを遠くまで蹴飛ばしてしまった。

 一方、冬彦三も男Xに追われていた。


「ぐっ…、こいつ、宇宙一の逃げ足を誇る俺に追いついてきてやがる!」

「じゃあ俺は宇宙一の追い足ってことかな?」


 足の速さは男Xの方が上手だった。何を隠そうこの男Xは200m走で第2位の日本記録保持者なのだ。

 しかし、冬彦三は捕まらない!けもの道を外れ、生い茂る草木の中に突進した。そして、木々を障害物として駆使し、なんとか撒いてみせた。男Xは草木に遮られて冬彦三を完全に見失った。


「ヤロー、どこへ行きやがった!?」


 冬彦三はすぐそばの小木の中に身を潜めていた。男Xも冬彦三がそう遠くには言っていない事を察知していた。そこで男Xは切り札をリュックから取り出した。


「出てこーい!!!出てこないとこれを爆発させるぞ~!!!」


(な?!)


 男Xはダイナマイトとライターを手にしていた。それを見た冬彦三は驚愕した。


(まずい!しかし、まだ火はつけていない…

 今の内になんとかしないと…

 くそ!こうなったらやぶれかぶれだ!!!)


「こっちだ~!!!」


 パシャッツ!!!


「うぉ!?まぶしっ!」


 冬彦三は懐中電灯とカメラのフラッシュで男Xを目くらましした。

 さらに懐中電灯を男Xに投げつけた!

 懐中電灯は男Xの頭に激突した。男Xは怯んだ。

 その隙に冬彦三は体当たりし、男Xからダイナマイトとライターを奪いとった!

 バランスを崩した男Xは丘を転げ落ちていった。


「よし、これは使える!」


 冬彦三は投げつけた懐中電灯を拾うと、急いで洞窟の前に戻った。来た道を迷うことなく洞窟にたどり着く。洞窟の前には誰も居なかった。


「おーい!トレジャーハンター!出てこーい!さもないとダイナマイトを爆発させるぞー!」


 ガサッ!


(来た!?)


「ま、まて!お、俺だ!」

「なんだ微笑みデブか」

「ずっとここに隠れていたんだ

 凄い物見つけたな。ダイナマイトだなんて!」

「トレジャーハンターから奪いとったんだ」

「流石トレジャーハンターというだけあって良い物持っているなぁ」

「そこまでだ!!!」


 黒鈴を羽交い締めにした男Aが現れた。男Aは目を血走らせており何をしでかすか分からないような殺気に満ち溢れた顔をしていた。おおよそ常人ではなしえない表情だ。非常に危険である。


「こいつがどうなっても良いのか?」


 男Aの両手にはサバイバルナイフが握られていた。左右が反対の手は逆手にサバイバルナイフを掴んでいる。


「黒鈴!」

「黒鈴さん!」

「こいつを助けたかったら、今すぐそのダイナマイトで自爆しろ!」

「うぅ…

 冗談じゃないわよーーー!」

「騒ぐな!」


 男Aは黒鈴の首筋にナイフを突き立てた。ナイフの冷たさが黒鈴の首を伝った。それと同時に生暖かい血も1滴したたり落ちた。今にも喉元を掻き切りそうな勢いである。


「委員長!私はどうなっても良いからダイナマイトをこの男に投げて!」

「な!?」


 黒鈴の意外な要求に、男Aは驚く。

 冬彦三も少し悩んだような表情を見せたが、すぐに頷いた。


「分かった!」

「おい!まて!

 おい!そこのデブ!そいつにそんな事をさせていいのか?」

「庭塚くん…!」

「俺は信じる…!

 委員長!早くダイナマイトをあの男に投げるんだ!」

「ああ!!」


 冬彦三は躊躇なくダイナマイトに火を付けた。そして男Aと黒鈴の方目掛けてダイナマイトを放り投げた!男Aは本当に投げてきたことに激しく仰天した。


「シット!!!」


 そう叫ぶと、男Aはナイフと黒鈴を放り出して逃げようとした。

 と、同時に、黒鈴は逃げだしていた!黒鈴は自慢の長い髪を庇いながら猛ダッシュしていたのだ。


ドカーン!!!


 男Aは爆発に巻き込まれてしまった。爆発に巻き込まれた男Aは倒れて気を失っている。


「ふぅ…間一髪だったわ…」


 しかし、黒鈴は見事爆風から逃げおおせていた。冬彦三と庭塚は黒鈴に駆け寄った。

 黒鈴は自慢の赤い髪の毛を庇うように振り向く。


「お前の逃げ足の速さならダイナマイトの爆発から逃げてくれると信じていたよ」

「俺も!」

「私も、私の逃げ足の速さを信じて本当にダイナマイトを投げてくれると信じてたわ!

 彼が逃げ遅れたのは、まさか本当にダイナマイトをこちらに投げてくるとは思わなかった事ね」

「仲間との信頼があったからこそ紙一重の差で逃げきれたんだな」

「ええ、足の速さでは彼の方が上だったけれど、あなた達を信頼してたから私は助かったのよ」

「そうさ!俺たちはいつだって信頼し合っていたから、いつもどんな苦難も乗り越えられてきたんだ!」


 そうである。冬彦三たち冒険サークルの冒険はいつも苦難と災難の連続だった。蛇と遭遇したり、足を滑らせて崖から落ちそうになったり、遭難してしまったり…。しかし、どんな困難も三人で助け合い乗り越えてきたのだ。三人はどんな苦境でも決して仲間を見捨てる事は無かったのだ。


「さぁ、先に進もうぜ!」


 三人は洞窟の中を進んだ。洞窟のなかは真っ暗であった。三人は各々持ってきていた懐中電灯を点けて洞窟を進んだ。洞窟は静まり返っており、コウモリはおろか虫一匹も見当たらなかった。

 さらに洞窟の奥を進むと、左右に分かれた分岐点に出くわしてしまった。大きな入り口の左と、狭い入り口の右に道が枝分かれしていた。


「右と左…どっちに進めば良いのかしら?」

「右手の法則で右がいいんじゃないか?」

「私は左の方が良いと思うわ。こちらの方が入り口も広いし…」

「じゃあ間を取って真ん中で!」

 

 冬彦三はその場を茶化した。真面目な場面でもジョークを言うのが冬彦三の悪い癖なのである。


「も~う委員長!」

「真面目に考えてよ~」


 二人は笑いながら怒った。しかし、冬彦三はふざけて真ん中の岩壁を押し進めた。


ゴゴゴゴゴゴ…


「何の音!?」

「俺がここを押したせいか!?

 二人も手伝ってくれ!」 


 三人で真ん中の岩壁を力いっぱい押した。三人は息を合わせる。


「いっせーのーで!!!」


 ゴゴゴゴーーーーー!!!!


 すると岩壁が沈み、真ん中の底に穴が出てきた。穴の中は岩で作られた階段になっているようだった。階段は穴の奥深くまで続いており先は全く見えない。階段の奥は完全に真夜中のような暗闇である。いかにも何かが隠してありそうな階段だ。


「きっとここだ!ここに禁呪の飴があるに違いない!」

「行ってみましょ!」


 長い長い階段を下って行くと白く輝く、小さな球状の物体があった。眩い限りの光である。真っ暗な洞窟の中で、ライトの反射が無くても、自発的に光っているのである。


「あれよ!きっとあれに違いないわ!」

「やった!ついに禁呪の飴を発見したぞ!」

「本物か?!」

「間違いないでしょ。禁呪って書かれてるわ」

「やったな!みんな!」

「にわははははははは!!!禁呪の飴ゲッツ!!!」


 なんと、その球にはご丁寧に禁呪と書かれていたのであった。こういうわかりやすいお宝があってもたまにはいい。とにかく三人は大喜びした。


「この白い光沢はまさか白金の飴か!?」

「いや、よく見たら銀って書かれているな」


 冬彦三の歓喜の問いに庭塚が冷静に答えた。

 飴には禁呪とだけでなく、銀とも書かれていたのだ。なんとも分かりやすい親切な設計である。

 禁呪の飴を見つけて興奮冷めやまぬ三人だったが、銀と言う文字を目にして落胆した。


「どうやら残念ながら最弱の飴を発見してしまったみたいね」

「どうするんだ?丸のみするのか?」

「最弱の能力かー…。これを口にすると他の禁呪の飴の能力を得られなくなってしまうんだよなぁ…

 他の禁呪の飴ならもっと強力な超越能力を得られるかも知れない…

 一度最弱の禁呪の飴を飲んでしまうと、他の禁呪の飴を見つけてももう超越能力は得られない…」


 冬彦三はしばらく悩んだ。しばらく悩んだ末、ふと思いついた。


「そうだ!

 他の禁呪の飴は見つけ次第破壊してしまえばいいんだ!

 他の禁呪の飴がなければ俺が最強の禁呪の飴を手に入れたも同然だ!

 俺って頭良い!」

「ちょっと、もっとよく考えてから…」


 黒鈴は止めるが、冬彦三はもう銀の飴を飲み込んでしまっていた。


「ごくん!

 あー美味しかった!今まで食べた物の中で一番美味しかった!」

「あ~あ、飲み込んじゃった」

「も~、どうなってもしらないわよ!」


 冬彦三は突然金色に光り出した。冬彦三は髪が逆立ち、目つきも顔つきも別人のようになった。銀の飴を食べたのに金のオーラに覆われているのである。黒鈴と庭塚は何が起きたのかさっぱり理解できなかった。


「なんだ貴様ら」

「委員長!?」

「委員長、俺たちの事が分からないのか?」

「委員長?それがこの体の名前なのか?」

「いいえ、違うわ、あなたは冬彦三よ」

「委員長はお前のあだ名だよ」


 黒鈴と庭塚は動揺しながらも、冷静に答えた。金色に光る冬彦三は、それを聞いて納得をしたような顔をした。


「成程。僕の相棒となる宿主の名前は冬彦三か。よろしくな下僕ども」

「げ、下僕!?」

「全く別の人格が乗り移ったみたい…」

「沈まれ!もう一人の俺!」


 冬彦三は元の人格・風貌に戻った。簡単に戻ったようだが、もう一つの人格を鎮めるのにかなりの精神力を摩耗していた。冬彦三は汗だくであり、息も切れていた。もう一つの人格を制御するのはとても大変なのだ。


「どうやら銀の飴は超越能力を得られる代償として別人格まで入り込んでしまうようだ…」

「やっぱり食べなくてよかったぜ…」

「何はともあれ他の禁呪の飴を探そう。それと、もう一人の俺と超越能力をコントロールできるように特訓だ!」


 冬彦三は次の目標に向けて邁進した。

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