1章 冒険開始
「なろう作家がエリート東大生に転生してみた」
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のリメイクです。地文が少なくSS寄りだったので地文を増やし小説らしくしました。大分読みやすくなったと思います。小説風にしただけでストーリー自体は前と全く同じです。
前回途中でブラバしてしまった人はぜひ最後までお読み下さい。
主人公・尾図羅冬彦三は成績優秀な優等生の高校生であった。
しかし、全教科オールマイティな完璧人間な訳ではなく、体育・音楽・家庭科が苦手であった。
彼は筆記試験は得意だが、運動音痴・音痴・不器用なのである。
彼が体育で唯一得意だったのは徒競走と長距離走ぐらいで、足の速さだけには自信があり、自称「宇宙一の逃げ足の速さ」である。
また、天才的な頭脳を持つわけではなく、彼の優秀な成績は努力の賜物である。
彼は典型的ながり勉タイプであり、彼は天才ではなく、秀才といった所か。
努力の甲斐があり、去年彼は東大に入学した。
彼のトレードマークはジーパンだ。ジーパン以外のズボンは持っていない。彼はジーパンのフィット感が大好きで、ジーパンを100枚以上持っており、毎日着分けているのだ。彼なりのお洒落はいつもジーパンにチェックの上着か黒の上着。ジーパンが好き過ぎて上着には興味が無いのだ。そんな走りにくいジーパンを履いていても、逃げ足の速さは抜群である。
そんな彼はなろう作家でもある。自称「異世界から東大生に転生したなろう作家」である。
彼の作品は数十作にも上るが殆どがブクマ数2以下で、またどれも完結せずに1年以上も放置されており、彼には文才も無かったようだ。
彼は今東大2年生で、冒険サークルに入っている。
冒険サークルのメンバーは、冬彦三と庭塚豪と黒裂木黒鈴の三人だけである。
リーダーは冬彦三であり、サブリーダーは女性メンバーの黒鈴である。
黒鈴は容姿端麗であり、長くて鮮血のように赤いストレートヘアーを足元まで伸ばしている。
彼女も文武両道とはいかず、運動はめっきり駄目である。天は二物を与えなかった。
なお、彼女も冬彦三同様、逃げ足だけは早い模様。
そして、もう一人のメンバー庭塚は文武両道、体育・美術・音楽・家庭科全てにおいて苦手科目なし。
全教科オール5。しかし、やはり天は二物を与え無いようで庭塚は酷く不細工である。
不細工な顔のパーツの寄せ集めみたいな顔をしており、歯は最近矯正がとれたばかりだ。
おまけに太っているため、冬彦三からは「微笑みデブ」「にやけデブ」等と呼ばれている。
二人とも冬彦三の高校からの同級生だ。
二人はリーダーの冬彦三を「委員長」というあだ名呼ぶ。
冬彦三は高校の頃3年間毎学期、学級委員長をやっていたのだ。
そのため同級生からは本名ではなく委員長と呼ばれる事が多かった。
「黒鈴!微笑みデブ!こんな話を知っているか?」
「知らない」
微笑みデブこと、庭塚は即答した。庭塚はジャージのズボンが好きでいつもジャージのズボンを履いている。太った体でも窮屈でないジャージのズボンが大好きなのだ。多種多様なジャージのズボンを揃えており、同じものは年に数回も履かない。着ているのはいつもジャージのズボンにセーター。暑い日も半袖の薄手のセーターで過ごしているのだ。正直言ってファッションセンスはない。
微笑みデブと言うのは、酷いあだ名なようではあるが、庭塚は中学生の頃は思春期真っ盛りで、女子生徒にばかり言い寄っていたため、中学生の頃のあだ名は「ストーカー」だったのだ。そのため、ストーカーに代わる新たなあだ名をつけてくれた冬彦三には感謝しており、微笑みデブというあだ名を気に入っているのである。庭塚がしょっちゅう虫笑いをするのを見て、冬彦三が微笑みデブと名付けたのだ。庭塚はその不細工さや薄気味の悪い薄ら笑いが災いして友達が少ない。冬彦三と黒鈴だけが数少ない友達である。冬彦三と黒鈴は顔ではなく中身で判断して親友になったのである。
「まだ何も言っていないって!」
「どうせまた下らないガセネタでしょ」
黒鈴が自慢の長い赤髪をかき上げながらジト目で信憑性を疑った。黒鈴は露出過度な格好が好きで、へそ出しの赤いノースリーブに過度に短い赤いミニスカにニーソという恰好を季節関係なく1年中している。同じ服を何着も持っており、毎日同じ格好をしているのだ。さらに荷物はいつも真っ赤なランドセルに入れて背負っている。毎日同じ服で、あまりに個性的な格好なため、多くの人から引かれてしまい、黒鈴もやはり友達は少ない。冬彦三と庭塚だけが希少な友達である。冬彦三と庭塚は服装ではなく中身で判断して親友になったのだ。
「今回のはガチだって!朗報だぞ!」
「委員長の朗報は朗報だった試しがない」
冬彦三は秘宝や伝説の話が好きで、新しい話を度々聞いては、大本営発表のごとく自慢げに話すのである。しかし、冬彦三の持ってきた話はすべて眉唾物で本当だった試しがないのだ。
冬彦三はとにかく無視して話を続けた。
「マルコ・ポーロの『東方見聞録』の没案のメモが見つかったんだ!」
「没案?」
庭塚はマルコ・ポーロという言葉に信憑性を見出しながらも、懐疑気味に聞いた。マルコ・ポーロという言葉を聞いて、黒鈴も半信半疑だ。
「『東方見聞録』のジパングの記述・・・つまり日本の記述に、下書き用のメモにしか書かれていない、没にされた伝承があったんだ」
「どうして没にしたのかしら?」
(喰いついてきた!)
「下書きの用のメモによると、あまりにも空想的すぎて、この記述を削除しないと『東方見聞録』の信憑性を疑われかねないから没にしたようなんだ」
「それでその没案のメモにはなんて書かれてたの?」
「なんと書かれていたんだ?」
二人は冬彦三の話に完全に興味津々だった。いつもの都市伝説のような話と違って、マルコ・ポーロという有名な実在人物の名が挙がったため、冬彦三の話に一定の説得力が出たのだ。
「何でも、『三つの禁呪の飴がこの日本には存在する』との事らしい」
「禁呪の飴?」
「禁呪の飴は丸のみにすると超能力を凌駕した超越能力を得られると書かれている」
「ハイパーエスパーって所か」
「禁呪の飴には3つのランクがあり、銀の飴・金の飴・白金の飴の三種類があり、後ろに行くほど強力な能力が得られるらしい
また、禁呪の飴は一つ飲み込むと能力が定着してしまい、後から他の禁呪の飴を飲み込んでも、最初に飲んだ禁呪の飴以外の能力を得ることができないそうだ」
「どうしてそんな伝説が日本には残ってなかったのかしら?」
黒鈴は長い後ろ髪を両手で一纏めにかき上げながら訊ねた。
冬彦三はよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに得気に話した。
「禁呪の飴の起源ははっきりしていないが、神武天皇の時代に生まれたものらしい
この伝説を知っているのは文字の読み書きができない身分の低い人たちだけの口承でのみ受け継がれていたようだ
日本では口承でしか受け継がれていなかったから、記録が残っておらず、廃れて消えてしまったのだろう」
「そうだったの……」
「なんか信憑性はありそうだな」
「そうね。だってあのマルコ・ポーロだもの」
黒鈴と庭塚は大分納得した様子だった。マルコ・ポーロ効果はやはり偉大であった。二人ともすっかり冬彦三の話を信じ切っていた。冬彦三はすかさずダメ押しする。
「俺たちで禁呪の飴を見つけないか?」
「面白そう~!」
「にわはははは!!探そうぜ!!」
庭塚と黒鈴は目をらんらんと輝かせている。冬彦三の持ってきた朗報が本当に朗報だっただけに二人のテンション・モチベーションは最高潮にヒートアップした。
「俺たちは三人。禁呪の飴はちょうど三つ!三人で超越能力者になろうぜ!」
「それは遠慮しとくわ」
「俺も」
「ズコー!」
冬彦三はわざとらしくコケた。庭塚と黒鈴はさっきと打って変わって冷めた目で見つめている。
黒鈴は大きな胸を揺らしながら愚痴をこぼした。
「ノリが昭和ねえ」
「なんでだよ!なぜ!?ホワイ!?」
「私は普通の女の子で居たいの。超越能力者になるなんて怖いわ」
「俺も。その禁呪の飴には興味があるが、別に超越能力者にはなりたくない」
「なんだよ。シケてんなぁ。まぁいいや。禁呪の飴を探す気があるなら問題ない!みんなで探しに行こうぜ!」
三人は冒険に出かける準備をはじめた。