表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

俺の幼馴染が乙女ゲームの悪役ライバルなんだが

作者: 名古屋 大八

どうも、会社員男性です。

このたび、乙女ゲームの世界に転生することになりました。


主人公や攻略対象ではなくモブでしたが。

モブです。どうせ、幼馴染にゲームのキャラがいるんでしょ、その通りです。その幼馴染が、早乙女(さおとめ) 凛香(りんか)この乙女ゲームの悪役ライバルキャラです。幼稚園の入学式の日に彼女の名前を見て前世を思い出しました。

ゲームでは、婚約者の二宮(にのみや) 伸也(しんや)に接近する主人公を虐めて、婚約破棄されるよくいる悪役の子です。


それより、男の俺が乙女ゲームの内容知ってるのがおかしいだって。理由は、簡単です。

俺の前世の母はアニメや乙女ゲームとかが大好きなオタクでして、幼少期からオタクコンテンツに親しみ、育ったオタクサラブレッドですからね。母が勧めてきたこの乙女ゲーム、名前を『fateLove』と言いまして、お金持ち高校に入学した主人公がイケメン御曹司達と恋に落ちてくみたいな話で、涙あり笑いありの感動ストーリーで結構面白かったのを覚えてます。オタクサラブレッドなんで、もちろん俺はコンプ率100%です。


さて、転生した事に気づいたので、今世の目標を立てることにしました。この世界、前世と微妙な所しか変わってないので、前世で中学校の時になりたかった弁護士を目指すことにしました。前世は、オタクコンテンツにハマりすぎて勉強サボってたので、今世では勉強頑張ります。あと、面倒ごとは嫌なので、ゲームのキャラには関わらないように頑張ります。


前言撤回、早速関わってしまった。

凛香さん、お嬢様なので甘やかされて育てられたため、幼稚園の子達に


「わたくしがあそんであげますわよ」


など、上からの目線の態度が多く


「りんかちゃんとは、あそばない」


と言われてしまい。一人で泣いてるのを見つけてしまった俺は、


「一緒に遊ぼう」


と声をかけてしまいました。その後凛香ちゃんにめちゃくちゃ懐かれました。他の子と遊ぶように提案しても、


「悠がいるから、いい」


と言い張るようになってしまいました。

ちなみに、錦悠(にしきゆう)これが俺の今世の名前です。


何とか、凛香ちゃんを他の子と遊べるようにしようと頑張ってたら、気づいたら小学校になってました。

小学校の頃には、凛香ちゃんも他の子と遊べるようになりました。1つ不思議なのが、私立の小学校に行くと思ってた凛香ちゃんが俺と一緒の小学校にいることぐらいです。


それと、幼稚園の頃と変わった事があるとしたら俺が教室で勉強の為に本を読んでると、休み時間の度に


「悠、外に遊びに行くわよ」


と俺を引っ張り出すようになった。

ゲームでは、運動なんて全くしなかった令嬢さんは、この世界では、膝に擦り傷量産するような野生児になりました。俺は野生児には、抵抗できず外を引っ張り回されました。


テストの時には、


「悠、勝負よ!」


と毎回勝負をふっかけてきます。

凛香は、同学年では頭がいいですが流石に俺は転生してるので、小学校の勉強で負けることはありません。

点数を見せあったあとには、


「悠、凄いわね。私じゃいつまで立っても勝てないのかしら……うっうっぐす」


と泣き出してしまいます。そして泣いてる凛香を慰めるのが、いつものパターンです。


高学年になったある日の帰り道、凛香は俺に


「明日、婚約者に会うの。お父様は、会わなくていいと言ってるけど、悠はどう思う」


と凛香は浮かない顔で言ってきました。

婚約者と言うと、あの二宮伸也。

ゲームでは、凛香は伸也に一目惚れしてそれから。伸也を追いかけ回すようになります。それで、嫌われるようになって、追放エンドです。

俺も、凛香に情があるので追放エンドは避けたいです。


「どんなにイケメンでも、追いかけ回すなよ」


とアドバイスしたら、


「悠、なんて知らない」


と凛香は逃げてしまった。

そして、なぜか凛香と1週間口を聞いてもらえなかった。

その1ヶ月後、転校生がやってきた。


「はじめまして、二宮伸也です」


凛香の婚約者である、イケメン御曹司の二宮伸也が公立の小学校にやってきた。


「君が、錦悠君だね。凛香から話は聞いてるよ、よろしく」


と俺に接近してきた。こいつが転校してきた、理由は一切分からなかったが、勉強の為だったがいつの間にか趣味になってた読書で、読んでた本の趣味が似ていたことから、親友になった。それで、伸也と2人で遊んでいると、


「伸也、何悠と勝手に遊んでるのかしら。私も呼びなさい」


と必ず乱入してくるのだ。凛香が伸也を好きなのはわかったから、突然家に入ってくるのはやめてくれ。

6年生の夏前、いつものように3人で遊んでると凛香が、


「私と伸也、千輪館を受験するから。あんたも受けなさい」


千輪館中学校、ゲームの舞台となるお金持ち高校の付属校で、凛香達がそこに行くのは当然だよな。少し寂しくなるけど、仕方ないよな。……えっ。


「俺も受けるの?」


「そうよ、悠は伸也と張り合うぐらい頭いいんだから、千輪館なんて余裕でしょ」


嫌だ、ゲームのキャラ達とこれ以上関わりたくない。高校に入ったら面倒な事件沢山あるんだぜ、嫌だよ。


「俺は、お前らの家と違って金持ちじゃないから、家計的に厳しい」


よし、もっともな理由つけて逃げるぜ。


「大丈夫よ、悠。そこは、うちと伸也の家が払うわ」


「流石に、それはお前らの親御さんに悪いから」


「安心しなさい、パパとママの許可は貰ってるわ」


なにそれ、怖い。


「だとしても、人の家の金で学校行くのは俺が辛い」


と言うと凛香は黙ってしまった。

黙った凛香に変わり伸也が、


「では、高校に特待生で入ってもらうのはどうでしょう?」


と提案したので、

「千輪館の特待生は、流石にきついだろ」


千輪館高校の特待生は、学費が全額免除の代わりめちゃくちゃ条件が厳しい。転生してるからといって行けるレベルではない。


「だめよ、悠。絶対行くのよ」


と泣きながら凛香が言うので、俺は折れた。


中学に上がると、俺は軽音部に入った。俺は前世から、ピアノに憧れがあったので幼稚園の時にピアノを習ってたのだが、3年ほどやってにこれじゃないと思い。ギターに転向した事を知っている、同じ小学校の奴らに誘われて入った。ずっと1人でやってたけど、人と合わせるのが楽しい。そのおかげで、練習もノリノリでやってしまうため、週末に凛香がうちにやってきた時に、1人


「盛り上がってるかー」


と叫んでる所を見られた。

そして、


「……早く勉強するわよ」


と見なかった事にされた。

少しぐらいリアクションあっても良くない。凛香は、部活で忙しいのに日曜になると必ず勉強を教えにうちにくる。


「サボって、落ちたからこまるのよ」


とのことらしい。

ゲームのキャラだけあって、悪役顔は相変わらずだが、どんどん綺麗になっていくので少し困ったりする。ていうか、かなりドキドキするからやめて欲しい。夏にノースリーブで来た時なんて理性保つので精一杯だったんだからな。


伸也もうちに来るけど、勉強ではなく。普通に遊びにくる。

本の話をしたり、弟が買って貰った、最新ゲーム機で一緒に遊んだりする。日曜じゃなくても、伸也がいると、かなりの確率で凛香が突撃してくる。どんだけ伸也の事が好きなんだよ。


そして、高校入試。凛香と伸也に教えて貰ったおかげで無事特待生になれました。ありがとうございます。

合格発表を一緒に行った凛香は、


「やったー。これで、これで、悠と同じ学校に……」

と抱きつき泣き出した。俺の肩は涙と鼻水だらけになった。


高校入学ということで、乙女ゲームが始まるのだが、本格的に始まるのは2年生になってからである。このゲーム、地味な少女だった、主人公が学年が変わるので一念発起してイメチェンしたところモテモテになるという話だ。とりあえず、凛香と伸也以外の登場キャラには、気を付けよう。


と思ってた時期が俺にもありました。

なんと、右隣の席にチャラ男キャラの三王(さんのう) 照幸(てるゆき)が、左隣には、主人公の千年(ちとせ) 小春(こはる)がいる。千年小春はテンプレネームなので、俺も記憶にある。凛香と伸也も別のクラスだから、まじ助けて。


二三ヶ月経つと、


「ゆうゆう、おはよ〜ん」


とチャラ男と友達になった。

言っちゃ悪いがアホだが、良い奴なので好感は持てる。チャラいけど。


「おはよう、悠くん。昨日貸してくれた、本面白かったよ」


「おはよう、小春。えっ、もう読んだの」


千年小春は、たまたま読んでた本を読んでいてついつい話しかけたら、本の趣味が近くて仲良くなった。伸也しか、話し相手がいなかったマニアックな本も、いけるのが凄い。そう言えば、ゲームでも伸也とそういう事を話すシーンがあったな。


「悠くん、今度テ……」


クラスが突然ザワザワしだした。周りを見ると凛香がいた。


「悠、ちょっと来なさい」


「ごめん、小春ちょっと凛香に呼ばれたから、後でね」


高校入って驚いた事は、凛香が超人化してた事だ。

俺と2人の時とは違い、他の生徒がいる時は、お嬢様のような話し方。テストでは1桁台をキープ、さらに部活の陸上では全国クラス。オマケにファンクラブもあるんだってさ。深窓の令嬢が美人になってやがる。ゲームだと、伸也のケツばっか追っかけて成績は中の下、部活には入っていなかったのにどうしたんだよ。


「なんの用?」


「伸也が、仕事を手伝って欲しいんだって」


「わかった」


「悠、さっきの女の子誰?」


「小春の事か?」


「うん、多分その子。どういう関係なの?」


「読書友達かな」


「ふーん」


と凛香は、何も無かったかのように先に行った。


教室に帰るとクラスメイト達に囲まれて凛香とは、どういう関係なのかと尋ねられた。幼馴染だと答えた。


そして、この次の日から小春は本来よりも早くイメチェンをして学校に来た。


そして、季節は周り2年生になった。

なぜか俺は生徒会に所属するようになった。本来、攻略対象と主人公の筈なんだよ。なのに凛香と伸也が俺がいないと生徒会入らないとか言い出したので先生に頭を下げられて。生徒会に入る事になった。


「お茶できましたよ」


生徒会のお茶入れは、庶務の俺の仕事になってる。


「ありがとう、悠くん」


と爽やか笑顔で答えるのは、一ノ瀬(いちのせ) 洋太郎(ようたろう)。通称腹黒会長、冗談抜きで腹黒だけど怒らせなければいい人だよ。怒らせなければ。


「私クッキー焼いてきたので、どうぞ。ほら、悠くんも」


と小春にクッキーを勧められたので、1口もらう。


「相変わらず、上手いな」


「そうかな、えへへー」


と小春は、はにかんだ。

横で凛香がチッチッチッと舌打ちを繰り返してたのは、聞かないことにした。

何故かはしらないがら凛香と小春は仲が悪い。

凛香は、小春にゲームと違って悪事をしていないんだが仲が悪いのは、きっとそういう運命だったんだと思う。


「それじゃぁ、仕事終わったので部活行ってきます」


と俺は、部活に向かった。


「先輩チース」


弓道場に来て最初に現れたのは四条(しじょう) 廉蔵(れんぞう)。ヤンキー系の後輩キャラだ。実家が武道の名家らしく、めちゃくちゃ弓道が上手い。

そうそう俺弓道部なの。ギターはどうしたかだって。今も、同中の奴らとバンドは続けて、2ヶ月に1回ライブはしてる感じ。


部活が終わって携帯を見ると、

『校門集合』

と凛香から連絡があったので、校門に向かう。


「遅い」


「部活だったし、仕方ないだろ」


「走ってくる素振りくらい見せなさいよ」


と凛香に怒られる。

いつからか、家も近いんだしとの理由で凛香と一緒に帰ることが日課になってた。


生徒会の仕事で荷物を倉庫に運んだ帰り道に女子生徒の噂が聞こえた。


「ねぇ、知ってる。凛香様、伸也様の婚約者なのに錦君とできてるらしいよ」


「私それ知ってる、二股してんでしょ。本当最低だよね」


「あんだけ完璧でも、やっていい事悪いことがあるよね」


ショックだった。自分と凛香の関係がそういう風に見られてることが、自分のせいで凛香の評価が下がることが。


その日以降凛香と帰ることは、やめた。必要最低限のことしか話さないようにした。


そんなある日、廊下を歩いてたら。

凛香に捕まり、屋上まで連れてかれた。


「なんだよ」


鬼のような形相をした凛香が


「ねぇ、悠。なんで、私を避けるの」



「お前と俺が、一緒にいると変な噂が立つからだよ」


「私との噂が立つのが、悠は嫌なの?」


「あぁ」


「悠の馬鹿、もう知らない」


と凛香は、屋上を去った。その目の中には涙があった気がした。


それから、1週間後。小春に屋上に呼び出された。


「こんな所に呼び出して、どうしたんだ小春」


小春は、頬を赤くして、拳をぐっと握り締め震えながら、


「悠くん、好きです。私と付き合ってください」


と俺に告白した。


信じられなかった。千年小春は『fatelove』の主人公だ。だから伸也達を好きになるはずだと思ってた。

本来乙女ゲームは始まってるはずなので、イベントとが起きないのは少しおかしいと思ってた。

けどそれは、今まで心の奥でこの今世を現実と思いながらも、どこかでゲームの世界だと俯瞰して見ていたからだ。


だから、小春に告白されるまで、この世界では千年小春や早乙女凛香は、二宮伸也達の事しか好きになれないのだろうと思ってた。


だから、最初から諦めてた。

この世界が現実だと、気づいてるつもりだった。

でも、この事がきっかけで、気持ちが爆発する。


今まで、自分にも隠してきた気持ちが現れる。

そして気づく。


俺は、ずっと前から凛香が好きだ。


小春は、良い奴だ。気遣いはできるし、クッキーは上手い。そして本の趣味も合う。なにより、可愛い。小春は誰もが恋人にしたいような少女だ。


でも、俺は凛香が好きだ。わがままで不器用で素直になれない。でも、努力家でツンケンしてるけど優しいあいつが大好きだ。


「ごめん、小春。俺好きな人がいるから。」


俺は、走り出した。凛香の元に、教室にいる凛香を見つけ、心臓は高鳴る。


「凛香!」


俺は叫んで呼んだ。


「なに」


怒ったような凛香、でも好きだ。


「凛香、好きだ。俺と結婚してくれ!」


勢い余って、ぶっ飛んだことを言っしまった。

凛香は、顔を赤くして、泣き出した。そして、


「……付き合ってくれくださいじゃないのね。でも、いいわ。結婚してあげる」


と答えた。


そして、俺が教室のど真ん中で婚約者のいる相手にプロポーズする事件は、しばらく学校の噂になった。



「いや、まじで悪かった。まじ、勢い余ってプロポーズするとは、思ってなかった。奪ってごめん」


と俺は、生徒会室で伸也に土下座した。


「いや、凛香と僕の婚約は隠れ蓑的なものだし、凛香も最初から君の事が好きだったんだから気にしてないんだけど。あはは、流石に大衆で略奪プロポーズするとは思わなかったよ。今思い出すだけで笑えてくる」


と爽やかなイケメンは、笑った。



***



悠は、凄い。


私に出来ない事をサラッとする。


悠と初めて出会ったのは、幼稚園の時。

高慢な態度を取って浮いていた私に


「一緒に遊ぼう」


と声をかけてくれた。


自覚はないが、この時既に私は恋に落ちてたのかもしれない。


そして、私は悠に依存した。

遊ぶ時に悠さえいればいいと思った。

でも悠は、積極的に他の子を混ぜて遊んだ。

今思うと、私に友達を作ろうとしていたのだと思う。なのに私は、悠が私と2人で遊ぶのは、辛いとからだと思った。


その事を悠に言ったら、


「そんなことはない。僕は、絶対凛香を嫌いになる事はないよ」


と言ってくれた。


お父様が小学校は、私立にするとか言った時は、悠と同じ学校がいいとぐずったら、本当に公立にしてくれたのが本当に嬉しかった。


小学校になると悠の凄さは目立った。

悠は、テストで100点しか取らなかった。

かけっこも速かった。そして、なんか難し本よんでる。悠は顔は普通だけどモテモテだから、休み時間放っておくと、すぐ女の子に囲まれるから、私の物だと言うことで、外に毎回連れ出した。私が転んで擦り傷を作ると、そこを撫でてくれるのが嬉しかった。


高学年になったある日、お父様が


「お前に婚約者の候補がいるのだが、どうするか」


と言われたので、悠に聞けばいい答えを教えてくれると思った。あと、ほんの少しだけ嫉妬してくれると思ってた。


そしたら、


「どんなにイケメンでも追いかけ回すなよ」


と答えられたので、本当は行く予定なかったけど反抗心で行くことにした。


婚約者の二宮伸也はイケメンだった。

取り留めの会話で気づいた事は、こいつは悠と同じようになんでもできるやつだった。

こいつの話を聞いてると、悠が馬鹿にされた気分だった。なんか悔しかった。そして、私は最後


「あんたなんかより、悠の方がずっとずっと凄くて、かっこいいんだからね」


と捨て台詞を吐いてしまった。

この捨て台詞を吐いた事を私は1ヶ月後、後悔したのだった。


二宮伸也が転校してきたのだ。

伸也は、悠に積極的に近づいた。最終的に親友のポジションを得てしまった。

私は、悠を取られてしまった気分になった。


「どうして転校してきたの?」


と伸也に聞いたら、あいつは


「君が言う。悠がどのような人間か興味がありましたから近づいて見ました」


何を企んでるのか分からない不気味な笑顔で続ける、


「話して見て分かりましたよ。彼は凄いと。まるで、人生を2度経験してるようだ」


それとと伸也は続ける


「しばらく、私と婚約関係になってください。もちろん悠が、君に落ちたら婚約は、破棄しますから」


「どういう目的?」


「私は、多くの令嬢から婚約を申し込まれてます。それが、嫌なのです。あなたを隠れ蓑にしたいのです」


「私にメリットがないじゃない」


「そうですね、では伸也を千輪館に受験するように説得するのを手伝うというのはどうでしょう」


「採用」


私は即答した。

私は、この何を考えてるのか理解出来ない謎の男と婚約関係になった。


「家計が厳しいから無理」


予想通りの回答だった。悠の家は私達の家とは、違って平均的な収入だ。オマケに3人兄弟の長男という事もあって、千輪館に行くには、余裕がない。


「うちと伸也が払うから」


「親御さんに申し訳ない」


「パパとママの許可は取ってあるわ」


本当に取った。パパとママも未来の旦那のためならと一肌脱いでくれた。


「人の金で学校に行くのは、俺が辛い」


悠は、悲しそうな顔をした。そう言われると何も言えなかった。


「高校から特待生で入って貰うのはどうでしょう」


千輪館の特待生になるには、相当な力がいる。でも、悠ならできると思った。そして私は、無意識に悠に抱きつき、


「お願い、悠」


と涙ながら頼んだら、悠は了承してくれた。


3年間離れるのは辛いけど、高校の間一緒なら我慢しようと思った。


中学生になると私は高校から入ってくる悠に負けないように頑張った。勉強も部活いい結果を収めることが出来た。

そして、週末悠にこっちの学校で習った事を教える。少し離れるだけで大人になった悠にいつも、ドキドキしてしまった。


でも、ギターの練習の時のあれはやめた方がいいよ。

伸也が、悠の家にいる時は私も突撃する。あいつに悠を取られるのは嫌だからね。


受験が近づくと私の指導も熱が入る。


そして、合格発表の日。私は、悠と一緒に学校に行った。そして特待生合格者の枠に悠の番号があった。

それを見た私は、悠に抱きつきワンワン泣き出してしまった。


「やった。これで、悠と同じ学校に……」


本当に嬉しかった。


悠が凄い事はわかってた。でも、本当に特待生で受かるかは心配だったから、本当にそわそわした。


そして、高校入学後。

伸也の使いで、悠の所に行くことになった。あいつの使いは、嫌だったけど悠に会えるなら、喜んでやるわ。


悠は、高校生になっても凄かった。

私と違って、友人は、たくさんいて。勉強だって、頭のおかしい伸也に続く、2番だ。部活の弓道だって初心者にしたら異常に上達してた。


私は、悠の教室に入る。


「悠、ちょっと来なさい」


地味な見た目の女の子と話していた。

まぁ、すぐに私のところに来たからいいんだけど。

でも、モヤモヤする。


「さっきの子だれ?」


「小春の事か」


名前呼び、イラってくる。


「どういう関係なの?」


「読書友達かな」


そう、嬉しそうに話す悠を私は、嫉妬で直視できなかった。


その次の日だった。その女、千年小春が大胆なイメチェンをして学校に来たのは。多少騒ぎになっていたので、こういう時は、早乙女グループ総帥の娘なので、行かないのが正解なのだが、あの女がどうしても気になったので行くことにした。昨日の地味な見た目と違い、男が好きそうな可愛い系な格好をしていた。


そして、悠のところに接近するのだ。

許さんぞ、あの女狐。

そして、奴と目が合う。


あの目は、間違いなく


「早乙女凛香、あなたには負けない。私が悠くんの心を奪うわ」


と言ってるね。


そして、この日から私と奴との戦争が始まった。


手始めに、家が近いという理由だけで、一緒に帰ることに無理矢理こじつけた。


2年生になると、私が生徒会に推薦されたので伸也に手伝って貰って生徒会に悠を無理矢理入れた。しかし、あの女も立候補して当選してしまったのは、想定外だった。


あの女狐も悠にお菓子渡したり、勉強教えて貰ってるが私と悠の17年には勝てないと思ってた。


なのに、ある時から悠が私を避けるようになった。


「ねぇ、悠。なんで、私を避けるの」


私は、怒り狂ったように聞いた。


「お前と俺が一緒にいると変な噂が立つからだよ」


と悠は、怒ったようにに言った。

変な噂、私と悠が付き合ってるとか。いいじゃん、私ウェルカムよ。


「私との噂が立つのが、嫌なの?」


「あぁ」


この日私は、人生で初めて悠に拒絶された。その日は、頭が回らなかった。帰ってからはずっと泣き続けた。


5日後、私は噂の真相知った。

どうやら、私は悠と伸也の二股ビッチだと思われてるらしい。


その日の晩、私は伸也をうちに呼び出した。


「どうした、凛香」


「あのね、私決めたわ」


「ついに、俺との婚約を正式にする気になったのか」


「違うわ」


「だろうね」


真剣な時に、冗談は言わないでほしい。

モテないわよ。


「仮契約だった、あなたとの婚約を正式に破棄するわ」


「やっとか。時間、かかりすぎではないか」


「うるさいわね」


「それで、どうやって落としたのかい?」


「まだよ。でも明日には、おとすわ」


伸也は、笑いだした。


「そうか、いい結果を期待してるよ」


「余裕よ」


「最後に1つアドバイスだ。彼が、自身の恋心に気付くには、何かがいる。その何かが、僕には分からないけどね」


と謎の笑みをした婚約者は、去っていた。


次の日、告白しようと思った私でしたが、悠を見ると緊張して出来なかった。


次の日放課後、悠を呼び出そうとしたがどこを探しても見当たらなかった。ふと、教室から屋上を見る。

そこには、あの女狐と悠がいた。


「悠くん、好きです。私と付き合ってください」


あの女狐が、雌の顔全開で告白した。離れてるのなんで言ってることが分かるかって、読唇術だよ。


私は、そこに乗り込んでもよかったのに、動かない2人をずっと見つめてた。そして、悠が何かを言った後、凄い勢いで屋上を去った。屋上には、1人泣いてる千年小春がいた。


私が千年小春を見てると、


「凛香!」


悠が、教室に入ってきた。


「なに」


「凛香、好きだ。俺と結婚してくれ」


はい?このバカ、手順が飛んでるよ。

でも、そういう所も好き。


「……付き合ってくださいじゃないのね。でも、いいわ。悠と結婚してあげる」


と私は、顔を涙でクシャクシャにして答えた。


その後気づいた事がある。

2人でいる時に私が、

「悠、大好きだよ」

と言うと、全力で顔を真っ赤にするのである。

私はそんな初心な反応をする悠が愛しくて仕方ないのだが、

「俺も凛香が大好きだ」

と言うのはやめて欲しい。私の顔が真っ赤になっちゃうから。


そして、私は常々思う


悠は凄い

振られて不憫な小春ちゃんですが、この後遅れて始まった。乙女ゲームによって幸せになります。

その事に悠くんは、凛香さんにメロメロで気づきません。


2018/11/15

改稿しました

多分糖度が1上がってます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ