白と黒②
屋敷の中に通された僕とアイラは、それぞれ一室与えられた。おじいさんは食事の用意があると奥に消えていく。
「こっちも広くて綺麗ね」
気がつくとアイラが扉を開き部屋の中へ入って来ていた。
「こんな大きくて立派やお屋敷になら住んでみたいなー」
「おじいさんと仲良くしてたし、いっそ住まわせてもらえないか聞いてみたら?」
「んー」
言ってみただけなのであろう住む気は無いという意味が込められた素っ気のない返事がアイラからは返って来る。
「ごめん、ちょっとトイレに行って来る」
部屋の中を物色し始めたアイラを残しその場を離れる。散々迷いながら目当てのトイレを見つけ、用を足し後にする。ここで一つ問題が起こった。元いた部屋が分からなくなってしまったのである。
ふと扉の開いた部屋に目が止まり、吸い込まれるように中を覗き込んだ。部屋の中には大量の本棚と、本に囲まれるように机と椅子がありほんのりと灯るランプが二つ見受けられる。
そのまま中に足を運び、机の上に広げられた一冊の本と手書きの書物に自然と目が走った。手書きの書物には魔族と記された一文があり、気になった僕は手に取り読み進める。どうやら一人の魔族の男に関する一生を綴った物語のようだ。
初めから読むため、前のページへと手を動かす。しかし手を掛けると同時に、背後の扉が音を立てるのに気が付き振り返る。そこにはおじいさんが立っていた。
「迷子かな?」
「すみません、たまたま目に止まって」
「いや、いいよ責めるつもりはないからね」
おじいさんは優しい口調のまま手元の書物に視線を向け語り出す。
「見てごらん」
おじいさんは目元に手を当て目を開く。そこにあったのは、赤く何処か儚さを醸し出す綺麗な瞳がこちらを見つめていた。




