白と黒①
あれから、宿に戻った僕はベットに寝転がっていた。幸いにも壁に打ち付けられた頭は軽傷で済み、今では特に痛みも感じられない。天井を見上げながら今日の出来事を振り返っていく。
魔族‥‥。以前に出会った魔族の事が脳裏を過ぎった。
それはアイラとまだ二人で旅をしていた時のこと。夕暮れ時、森の中にポツリと一軒のお屋敷を見つけ、一宿にありつけるのではないかと淡い期待を込めて呼び鈴を鳴らす。しかし屋敷から返事が返って来ることはなく、残念な気持ちを抱え背を向ける。
不満そうな顔をしたアイラは、納得出来ないといった様子で屋敷の中を覗くべく周囲を歩き始めた。屋敷の反対側が見えて来るのではないかと思われた時、庭に一人の老人が車椅子姿で佇んでいるのが見える。「おじいさーん」なんの躊躇もなくアイラは車椅子の老人に声を投げかけていた。
こちらの姿に気が付いた老人は車椅子をゆっくりと動かし僕達に身を向ける。目は閉じ泣きぼくろが見え優しそうな顔をしていた。
「これはこれは、珍しい。旅のお方かな? それとも‥‥町から追い出されたならず者かな?」
「残念ながら旅のお方ですよー」
「ハハハ、面白いお嬢さんだ」
初対面だとは思えないほどアイラとの話が弾み楽しそうに話す二人。そんな二人に割って入り、一泊させて貰えないかと交渉にでる。おじいさんから快く承諾をもらい、今日の野宿に別れを告げた。




