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Pandora   作者: 夕の満月
第三章 創造
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人形②


「おやおや、此処で何を話していたのかなあ?」


「派手に崩れてるのが目に止まって、どうしたのか聞いていただけですよ」


 僕の返答に、男は自らの顎を指でいじりながら、ニヤけた表情を崩さず話を続けた。


「へえ、俺には何か密会でもしてるように見えたんだけどなあ。おそらく……この家の住人の仲間だった、違うか?」


「今日、この町にたどり着いたばかりで、初めて此処にも来ましたし知らないです」


「怪しいなあ、身柄を拘束させてもらおうか。大人しくついて来な」


 男の強引に伸ばされた腕を振り払い、隣に居たシズクの手を掴み、逃げるべく駆け出した。駆け出す僕らから一拍置き、男は地と鎧を激しく撃ち鳴らす音を響かせ追いかけてきた。


「待て! 逆賊どもが!」


 周りへ声をかけながら仲間を集め出す男を、度々振り返りながら引き離し、町の裏地へと駆けこんだ。


「こっちへ! 早く!」


 裏地を駆けていた僕らに、長い髪を携えた女性がわずかに開いた扉から手招きしていた。とっさの出来事に導かれるように女性の家に駆け込んだ。

 途切れ途切れの息を落ち着けながら女性の顔を見上げると、どこか気恥ずかしそうに視線を外されてしまう。そんな中、まだ落ち着かない息を押さえつけながらシズクがお礼を口にした。


「あ、ありがとう……ございます」


「どうして、僕達を助けてくれたんですか?」


「偶然、二階から騒ぎが見えて……君たちみたいな子が、こっちに逃げてくるのが見えたから……。あ、安心して、どうこうしようってわけじゃないの」


 女性に軽くお辞儀をし一息をついた。ふと家の中を見渡す。どこか懐かしい気配がして、その正体が所々床に散らばった本と、それが端に山積みにされているせいだと気がついた。


「すごい本の量ですね」


「あ、……ごめんなさい。散らかっていて」


「いえ、シズクの家も本が多かったけど、此処も同じくらいあるんじゃないか?」


「どうでしょう……私の家よりも多いかもしれませんね」


 恥ずかしそうに、散らばる本を端に寄せたり、奥の部屋へと投げ込んでいく。


「手伝いますよ」


 視線を外しながら女性は小さくお礼を呟いた。片す中、シズクが何かに気がつき声をあげた。


「あ、これ私の家にもありました」


「本当? それ面白いわよね!」


 本の内容を楽しそうに話す二人を見ながら片付けを進めていく。


「これも……私の家にもありましたが内容が難しすぎて……」


「ああ、それはね……こっちの本を見てからのがいいかもしれないわね」


 目を輝かせながら、次々と話を続ける女性と同じ目で話を聞くシズク。


「……なるほど」


「それで……なんで各地の町に名前が付いてないと思う?」


 本の中の話から次第に、彼女自身の考えに話が移り変る。それは僕にとっても興味を惹かれる話題で片付ける手が止まり、自然と彼女の話に耳を傾けた。



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