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Pandora   作者: 夕の満月
第二章 願望
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曇空②


「すまない、起こしてしまったようだね」


 アイラの視線が握られた剣へと向く。


「こんな夜中に剣まで持ち出してどういうつもり?」


「習慣だよ、外の見回りをね」


「そう、悪いけど私はナギ君みたいに簡単にあなたのことを信用しているわけじゃないから」


「君は‥‥いや、何でもない。俺の事は信用してもらわなくて良いよ。ただ、ナギの事は信用してる。それだけ分かっていてもらえれば良い」


「ふーん、そう言われたらこっちから手は出しにくいわね」


 笑い声が微かに漏れた。そのまま外へ繋がる戸へと手をかけ、開いた隙間から肌寒い風が流れ込む。一緒にアイラも外へと歩き出した。


「君もついてきてくれるのかい?」


「目も覚めちゃったしね。暇潰しについていくわ」


 手に持つランプに照らされる道を二人分の砂利や木の枝を踏み鳴らす音が響く。ふと遠目に別の明かりが流れるのが見えた。アイラを手で制し息を潜め屈む。明かりを消し遠目に見えた明かりを追う。徐々に明かりとの距離が縮まり足音が聞こえてくる。

 二つのランプと足音から人数は‥‥四、五人くらいだろうか、潜めてはいるようだか微かに声も聞こえてきた。内容までは分からないが、この付近を夜中に息を潜めながら行動する者は居ないはずだ。さらに縮めた距離がその暗闇に潜む者たちの声を届ける。


「この付近であってるのか?」


「ああ、間違いないはずだ」


「早いとこ見つけて売り捌いちまおうぜ」


 聞こえてきた会話に、この者たちが稀少な植物を目当てにやって来たのは明白だった。剣を握りしめ飛びかかる機を伺う背後で音量を落としたアイラの声が耳に届く。


「んー、ここまで来たら私も手伝ってあげるわ」


「すまない、助かるよ」


 素早く身を乗り出し手前をランプで照らしていた男を組み伏せる。その拍子にランプは地に投げ出され割れてしまった。もう片方のランプがこちらへと向けられた瞬間にフードを被ったアイラも飛び出し男ごと吹き飛ばされた明かりが消える。明かりのなくなった暗闇の中に男たちの慌てふためく叫び声が轟いた。ランプを持っていた男二人はすでに気を失い、残った二人が喚き声をあげながら暗闇へと闇雲に刃物を振り回している。


「大人しくしろ!」


 叫び主へと目を向けた男たちは暗闇に浮かぶ赤い瞳に気がつき恐怖からか、さらに激しく声を荒げる。


「うるさい」


 アイラの一言と共に一人分の叫び声が消えた。残った一人はその様子に逃げ出そうと駆け出していく。逃げ出した者を追おうとしたアイラの虚を突くように影に隠れていた男が姿を現した。握りしめられた刃物がアイラの背を襲う。それを庇うように飛び出し胸へと刃物は深々と刺さった。苦しそうな声がもれ膝をつく、その頭上へと男の笑い声が降り注ぐ。


「とんだ収穫だな。魔族も売れ払えばもっと金になる」


 胸に刺さった刃物を引き抜いた男にアイラの蹴りが飛んだ。男は身を半歩引きそれを躱す。男の目がフードを被ったアイラへと向けられた。


「もう一匹も魔族か。これは良い」


 アイラの目が鋭くなる。会話するのも無駄だと言わんばかりに口を閉ざし刃のこぼれた剣を構え直す。振りかぶられた剣は交差し男の嫌な笑い声が近くで鳴った。段々と速度を速め振り切られるアイラの剣に男は対応が追いつかなくなり刃物を飛ばされ尻もちをつく。座り込んだ男に向け剣先が向いた。


「魔族如きが‥‥人様に‥‥」


 男が最後まで口を開く前にアイラの剣は突き出され黙りこむ。見開かれた目には生気はなく静かに剣を引き抜き、先ほど逃げた男が向かった方角へと視線を向けた。


「俺は‥‥いいから‥‥追ってくれ」


 途切れ途切れで吐き出された言葉に頷きを返し、僅かに重みを帯びた剣を払い走り出した。




 しばらくして暗闇の中からゆっくりとした足音がしてきた。


「捕えられたかい‥‥?」


「ええ、残りの一人も見つけたわ」


「それは‥‥良かった」


 溢れた血液の量が最期を告げるかのように足元に溜まっていた。アイラの報告を待っていたかのようにゆっくりと目が閉じられる。生命の感じられない地に一人立ち呟いた声が夜風に流されていく。


「少し待っていて‥‥きっと‥‥」


 その場に背を向け二人が待つ家へと歩き出した。




 日の暖かさが目をくすぐり目を覚ました僕は大きく伸びをした。すでに起きていたらしいアイラと目が合う。一瞬逸らされてしまった気がしたが、すぐにこちらを見て笑顔を見せてきた。


「おっはよーうナギ君。シキ君は用事があるって言って何処か行っちゃったみたいよ。見送れなくてゴメンねだってさ」


「お礼とかまだ話したい事もあったんだけどな‥‥」


「またいつか遊びにくればいいんじゃなーい?」


「そっか、それもそうだね」






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