曇空①
話し込む僕達の目の前に光が差し込んできた。
「どうやら出口みたいだね」
土の匂いから解放され、そよぐ風のくすぐったさからか僕は軽く伸びをした。日は沈み始めており夕方の訪れを感じさせる。大樹からは距離があまり離れていなかったようで安心感から息を漏らした。
「つれを迎えに行かなきゃ」
シキは頷き手に持っていた僕の剣を差し出してきた。
「これは返しておくよ」
忘れないでくれよと念押しをされ、一瞬なんのことだったか考えるがユラを見せる約束を思い出し慌て、笑顔を見せてくれるようになったシキに頷きを返した。
横に並び歩くシキをつれ大樹の根元、荒れ果てた建物が並ぶ地へ向かう。建物の影に、待ち疲れたのか座り込む二人の姿を発見し声をかけた。
「ナギ君おかーえり」
大丈夫でしたかと心配をするシズクと共に、アイラの視線がシキへと移る。シキの瞳に色づく赤に身構えたが助けられたことを伝え心配する必要はないと言った。
シズクの肩に乗ったユラに気が付いたシキがこちらに頻りに目配せをしてくるのが見えた。シズクに事情を説明しユラを見せてあげるように促し、ゆらゆらと飛び移るのを見送る。手の中へ収まってはいるがどこか不機嫌そうなユラには気にも止めずに、隅々まで見納めようと目を輝かすシキを止めるのは無理そうだった。
満足したのかユラを手放したシキから、もう遅いから家に来ないか? と声をかけられ家まで素人でも見分けのつく食用の植物について延々と説明を受けながら案内された。家にたどり着く頃にはシキと僕の手は緑に染まりあまり好きにはなれない匂いを発していた。家の中へ入った僕達は食卓に出された緑に染まるなんともいえない味の料理を平らげ眠りについた。
明かりも落ち微かな寝息の聞こえる家の中で、暗闇に紛れ二つの赤い物が浮かび上がる。潜む足音。音を立てないよう細心の注意をはらって開かれる戸。窓から差し込む月の光がそれを照らし出す。
赤い瞳が照らし出され、手に剣を持ったシキの姿がそこには映し出されていた。不意にシキの背後から物音が鳴る。
「どういうつもりかしら?」
物音と共に飛び交った言葉に、シキは緊張と不安の入り混じった赤い瞳で視線を返してきた。




