小さきもの②
戸惑う僕を横目に彼は腰にかけられた剣を抜いた。剣先がこちらを捉える。
「やめてくれ、僕は何もしていない」
「なら何故こんな所にいる? どちらにせよ‥‥俺の目を見られた以上ここからは出せない」
鋭い視線と剣先がさらにこちらへと詰め寄ってきた。
「此処には迷い込んでしまっただけなんだ。それに‥‥僕は魔族と共に旅をしている。あなたの危害になるような事はしないよ」
彼は構えた手を緩めずに疑いの目をこちらに向けてくる。僕は腰の剣に手をかけ引き抜く、その様子に身構えた彼の足元へと剣を投げてみせた。こちらから手を出す意思はないと示すように。彼は地に寝そべる剣を手の届かない位置へ蹴り飛ばし更に距離を詰めてきた。
両手を上げても、なおこちらを捉える剣先に緊張から冷たい汗が流れた。
「‥‥本当か?」
「ああ、嘘はついてないよ」
剣は引かれ鞘に収まっていった。
「これは念のため預かっておく」
僕の剣は拾われ彼の手に握りしめられる。まだ信用されきっていない僕の事情を説明しこの洞窟の出口を聞いた。外まで同行しようと言う彼の前を歩き分かれうねる道を指示に従い進む。
「君は、何故そんな遠くの地から此処まで来たんだい?」
「ちょっと探し物をね」
「探し物‥‥?」
「うん、絶対に手に入れたいものだよ」
僕のこれ以上は話す気が無いという表情に気が付いてか彼はいぶかしげな目を向け話題を変えた。遠くの地、海の向こうに興味を持ったのか、赤い瞳を輝かせながら頻りに質問が飛んできた。ユラの話をすると一度見てみたいと彼の息が荒くなる。見せてあげる約束を取り付けると気分を良くしたのか自らの事を話し始めた。
シキと名乗り、この付近に咲く珍しい植物の研究をしながら近くで一人暮らしているようだった。たまに稀少な植物を狙って人が流れてくるらしく僕のこともその類いではないかと思ったようだ。
「珍しくてお金になるから摘まれる‥‥まるで‥‥」
自然と口から出ようとした言葉を途中でハッとしてやめた。シキは言わんとしたことが分かったかのように話を紡ぐ。
「そうだな、似た境遇だからこそ放って置けないのかもしれない」
「種族差なんて無くなればいいのにね」
「無くなったとしても何も変わらないだろう」
「えっ‥‥?」
「君はこの世界がそんな簡単に変えられると思っているのかい?」




