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Pandora   作者: 夕の満月
第二章 願望
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小さきもの①

 二人に合流した僕は起こったことを胸の内に閉じ込め曖昧な返事を返すことしかできなかった。少しでも遠くへと行きたいとだけ告げ再び森の中を彷徨う日々が続いた。


「あれって‥‥何かなあ?」


「家ですかね?」


 アイラの指差す方向には高くそびえ立つ一本の大木、そして根元には古びた建物が並んでいた。太陽の日差しの中で異様な雰囲気を醸し出し、人の気配のなさが更に不吉さを募らせる。

 アイラは好奇心からか指差す方へ行ってみようと提案してきた。膝ほどに伸びた草や木から垂れ下がるツタが僕たちの行く手を阻むように邪魔をしてくる。それらに苦戦しながら進み、目的地に着く頃には疲労が見え隠れしていた。


 至近距離で見た建物は、遠目で確認した時よりもさらに荒れており外壁は所々脆く草木のツルや苔がまとわりついている。

 恐る恐る建物内へと足を踏み入れる。軋む足音と瓦礫の影に隠れていた虫たちが騒ぎだす。室内は天井が崩れ中にあった机や椅子は雨晒しにされてか黒く変色している部分もあった。

 物色を始めた僕達‥‥主にアイラだが、踏み鳴らす足音に紛れ床が嫌な悲鳴を発する。突如、舞い上がる土煙と激しい音。重さに耐えきれずといった風に僕の下にあった床が崩れ、瓦礫や土埃と共に穴の中へ落下してしまった。


 地に打ち付けられ、背に襲いくる衝撃に声が漏れる。擦り傷に目を瞑れば目立つ外傷はなく自分の無事に安堵し、頭の上や服に散り積もった破片を払っていく。

 落ち着きを取り戻そうと辺りを見渡すが、岩や砂に覆われた暗闇に伸びる道が二本あるだけだった。


「大丈夫ー?」


 明かりの漏れる頭上から心配の伴った声が降りそそぐ。


「大丈夫だよ。でも‥‥ここから登るのは無理そうだね」


「私も降りようかー?」


「いや、危ないからシズクとそこで待っていて。代わりに明かりになりそうなものでも落としてくれる?」


 手当たり次第に‥‥だろうか、シズクの止める声と共に先程の部屋の中で見た椅子や布切れ、木の枝など様々なものが降り、時折ぼくの頭を掠めながら地に音を響き鳴らす。


「それで適当に火でもつけてー」


 落とされた物の大半は使えそうになかったが、地に叩きつけられ壊れた椅子の破片や布を組み合わせ火を灯す。


「洞窟みたいになってるから出られそうな所を探してみるよ」


「りょうかーい。この付近で待ってると思うから早めに戻ってきてね」


 灯した火を微かに揺らす風を頼りに、僅かにぬかるむ地を進む。次第に洞窟の壁や足元に苔が生い茂り始めた。

 ある程度歩いたところで、ここまでの道とは一線を隠す広い空洞に行き当たった。空洞内には地面にわずかに水が走り壁面には青や黄に淡く光る花が明滅している。

 その色鮮やかな景色に目を奪われた。後で二人にも見せてあげたいなどと思い立ちすくむ僕の耳に空洞の奥から響く足音が聞こえてきた。


「なにをしている!」


 現れたのは小柄ながら落ち着いた顔立ちで少し歳上を思わせる青年。そして怒りの混じった声、鋭くこちらを睨む瞳は赤く染まっていた。

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