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Pandora   作者: 夕の満月
第二章 願望
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指し示す道②

 俺は‥‥あいつにこんな事さえ教えられなかったら、真っ当に生きていたはずなんだ。俺のせいじゃない‥‥悪いのはあいつだ。

 まだ魔族を捕まえるのか無理だと決まったわけじゃない。この女がただ妄想で言ってるだけに過ぎない。いや‥‥魔族は人と姿がほとんど変わらないと聞いたことがある。探し出すのは大変だろうか‥‥。なら‥‥ああそうか適当な人を捕まえて魔族だと言えば良い。見た目さえ変わらないのならどうとでもなるだろう。

 これはお金の為仕方なく行うことだ、幸いにも目の前には丁度よく連れて行きやすそうなのが三人もいる。さっさとお金を手に入れて増やさなければ‥‥。





「君たち、見苦しいところを見せてしまったね」


 立ち上がり、先ほどまでの落ち込んだ表情とはうって変わりぎこちない笑顔を浮かべている。顔に目立つ痣を見て手当を促すが、手で遮られ断られてしまった。


「いや、これは大丈夫だよ。よかったら少し付いてきてもらえないかい?」


「また賭け事ですか?」


「違う違う、こんな目にあったからね、もうそんなことはしないよ。いいから‥‥‥何処か静かな所で話でも聞いてもらおうかと思ってね」


 男の挙動不審な態度に身構える。無理に引っ張ろうとする手を振り払い向かい合う。視線が一瞬交わるが、すぐに逸らされ泳ぐ目が不信感をさらに煽っていく。

 何を思ったのか男は自分の頭に手を当て搔きむしり、嫌な笑いを浮かべた。男の手がシズクへと伸びる。シズクは捕まり、その細い首に男の腕が絡んだ。


「どういうつもりだ!」


「なーに、黙って付いてきてくれれば良いだけだよ」


 もがくシズクを抱え徐々に後ずさっていく。剣に手をかけるが制止を促される。その時、男の奥さんがこちらに歩いてくる姿が遠目に映り、男の視線がこちらから外れた。隙を突くようにアイラの蹴りが男の顔面を捉えシズクを捕まえていた腕が緩む。シズクは解放され僕は、よろける男へ体当たりをし、そのまま仰向けに倒れた体に馬乗りになった。

 観念したのか目を手のひらで隠しため息をつく。


「どうしてこんな事をしたんだ」


「‥‥もう哀れみや同情の目で見られるのが、どうしようもなく嫌だったんだよ」


 続けて、魔族と偽り僕達を売りに出そうとした事を打ち明ける男の元へ奥さんが走り寄ってきた。

 振り切られる手のひら、男の頬に強烈な音が鳴る。


「もう‥賭け事も全部やめて」


 彼女は俯き黙り込んでしまった。男の上から立ち上がり距離を取る。微かにごめんと言う声が聞こえ、女性の堪え溢れた泣き声がわずかに風に流れてきた。

 立ち去ろうとする僕達に女性は目配せをし一言呟いた。


「やっぱり‥‥こんな人でも‥家族だからね‥‥」






 

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