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Pandora   作者: 夕の満月
第二章 願望
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枯れた地


「さっさと作業すすめてよね」


 家の建築だろうか、木材を運ぶ女の人達と遠巻きに野次を飛ばす赤子を連れた女性が目にとまった。


「これだから魔族は」


 その一言にアイラの目が鋭くなる。女性は自分に向けられた冷たい視線に気まずさを覚えてか、立ち去っていった。道行く人も先ほどの女性と似たような表情で作業を見送っていく様子に、感じた違和感の正体が姿を現し出す。

 魔族を匿って‥‥魔族と共に折り合いをつけ上手く暮らしている、そう考えてしまっていたがどうやら思っていたものとは全く違う事を示していた。

 すれ違った子供達は魔族という事に罵声を浴びせ、大人達も似た事をしている。対等とはかけ離れた扱いが、この町の現状を語っている。僕達の心配そうな顔へ、作業をしていた女の人達は気にする必要はないと意を込めてか和かに目配せをしてきた。


「まあ、こんなものよね」


 アイラも同じ期待を持っていたのか、残念そうな顔で呟く。休みを取るためか、作業を中断し、まばらに人が減っていく。そのうち一人が気づかず地面に布を落としたのを見て、シズクが拾い上げた。


「落としましたよ?」


 お礼を言われ、良かったら一緒に何か食べていく? と聞かれ断りを入れたが、強引にシズクは連れて行かれた。町民が向ける視線とは違う物を感じ取ってか、女性は穏やかな顔で僕達に接してくれた。

 シズクも普段より他人との距離を取っている様子はなく、女性に向け笑顔を見せている。元いた村での自分に向けられた扱いと照らし合わせているのかもしれないと思った。


「いいから、ほら食べて食べて」


 食糧不足の話を聞いていたため遠慮がちになるシズクへと食べ物が流れていく。


「うちの子も‥‥あの子もシズクちゃんくらいなのよね。あなた達は最近来たのかしら?」


「先日たどり着きましたけど、すぐに出ていく予定ですよ」


「あら‥‥シズクちゃんは此処に置いていってくれてもいいのよ?」


 シズクの不安そうな視線がこちらに流れた。


「私は‥‥」


「‥‥冗談よ」


 食事を済ませ歩む僕達の目の前に横暴そうに歩く男の姿が写り込んでくる。男はこちらに気がつき、一緒に歩いていた女性を突き飛ばし言葉を投げかけてきた。


「ったく、いつまでかかってんだよ。休んでる暇なんか無いんじゃねえのか?」


 男の行動に思わず手が出てしまった。驚き倒れる男と横で満足そうな顔を浮かべるアイラ。


「てめぇ‥‥」


 怒り起き上がろうとする男にアイラの剣先が睨む。

部が悪いと判断したのか男は舌打ちをし、立ち去っていった。その後ろ姿にアイラは舌を出し見送っている。


「ベーっ、それにしてもナギ君があんな事するなんて珍しいね」


「んー‥‥流石にあれはね」


 女性も立ち上がり無事そうだったので歩き出した。


「待って、‥‥‥ありがとう」


 またね、と手を振る女性に背を向け僕らは町を後にする。離れる町を眺めシズクが呟いた。


「私は‥‥」


「ん?」


「私は‥‥大変な事もありますけど、旅が大好きです」


「そっか、じゃあ‥‥これからもユラとアイラの世話は任せられそうだね」


「さっそく私をおぶってもらおうかなあ」


「えっ‥‥‥」


 深く根付く人と魔族の溝に僕は新たな決意を胸に抱き次の町を目指した。

 

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