混沌の渦①
照りつける日差しと以前、湖の町で感じた肌にまとわり付くような湿度の高さ。わずかに赤みがかり、高低差を生み出している砂丘。町を飛び出し数日、僕達は砂漠を歩いていた。町の付近は顔が知れ渡っている可能性もあるため、人を避け進むうちに灼熱の地へ踏み込んでしまっていた。
フードを被り日を避けるが、まとわり付く砂と衣類が不快感を運んでくる。
「暑い‥もう私はダメ‥‥おぶって‥‥」
「シズクも我慢してるんだから、ちゃんと歩いてよ」
「シズクちゃん、一緒に‥‥」
みんな限界そうだったので休憩を挟む事にした。そびえる岩の陰へ腰を落ちつけ水分を補給する。
朝は冷え込み霧が立ち込め、霧が晴れてきたかと思えば日が猛威を振るう。環境の急激な変化に奪われる体力。シズクもしばらく前から疲れで一言も発してはいない状況だった。
「海も近いのに大地が干上がってるなんて不思議ですね‥」
休んだおかげかシズクの顔色が心なしかよくなった気がする。
「そうよねー、いっそ大きな津波でも来てくれればいいのに」
突如慌てたようにユラが付近を飛び回り始めた。前方には人影が見え、なにか背に二つの山がある生き物にまたがり向かって来ている。
「君たちここらは危ないからすぐ避難しなさい」
聞くと雨が降るとの事だった。アイラは暑さからか雨に喜ぶが砂漠の雨は滅多に降らない代わりに降水量が桁違いらしく、この場は洪水になる危険もあると言われ予想外の事に不安に包み込まれた。
そんな様子を見てか生き物にまたがった男はしばらく悩み、近くの町まで案内してくれると言ってくれた。
男は生き物から降り、アイラとシズクに乗るよう促す。温厚なのか二人を乗せても変わらない態度で進む生き物を見てどうにか僕も乗れないかと思うが、考えを察したのか男に二人までと釘を刺されてしまった。
町にたどり着くと同時にあめが降り、たどり着くのを待ってくれていたかのように徐々に激しくなる雨音。
空き家を当てがわれ、落ち着くまでは休みをとる事にした。雨は夜中まで降り続け待ちぼうけをくらう。晴れていた日の夜よりはマシな寒さに落ち着きをもらい、横になりながら港町での出来事に想いを寄せる。
レオンが言っていた事、そしてアイラが魔族であった事、姿をくらまそうとした事の陰に隠れてしまっていたが少女の一言。お父さんを‥‥殺した。タイミングを逃し本人には聞けずにいたため、うやむやになってはいたが、その一言が心に引っかかっていた。
魔族は逃げるためとはいえ町民を手にかけていた、だからと言って殺してしまうのはいけないとは思う。そして‥もし本当にアイラが手をかけていたとして、僕達の一緒に居たいという考えが変わるのか‥‥。変わらないだろう。
どうすればいいのかと答えの出ない考えを巡らせるうちに夜は明け、辺りを包み込んでいた激しい雨音は止み、僕の目に僅かな赤みと隈を残していった。




