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Pandora   作者: 夕の満月
第一章 旅人
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真紅の月①


「到着ー!」


 アイラが元気よく叫び始めた。後ろではくたくたになり息の切れたシズクが座り込んでしまっている。

 シズクの村から歩き続けること三日、ようやく次の街にたどり着いたのだ。今まで見たことのない街の大きさに僕も胸が高鳴ってくるのを感じる。

 宿、食べ物、可愛いもの!! アイラがぶつぶつ言いながら目を輝かせている。


「何か食べたら宿を探そうか」


「そうね、美味しい物が私を待ってるわ!」


 街を進み大きな噴水を横目に、人がちょうどいいくらいに店に入り並ばなくて良さそうな飲食店を見つけた。あそこにしようか、と言う提案に二人とも頷く。

 見たことのない名前が大量に並ぶメニューを眺め、見知った名前を探し注文する。アイラは分からない物にした方が面白いと強要してくるが、聞き流し同じ物を頼んだシズクと顔を見合わせ、やれやれといった顔をした。

 不満気な顔をしたアイラの目の前に真っ赤な色に包まれた謎の食べ物が運ばれてくる。一口食べたかと思うと無言でこちらに差し出してくる。続いて運ばれて来た食事はシズクと「はいはいこっちでーす」と呼ぶアイラの前に置かれてしまった。僕は真っ赤で何とも言えない味を醸し出している物を飲み物で無理矢理、口の中へ押し込んだ。



 先程の料理に負けた胃がムカムカするのと闘いながら宿探しを始める。少し歩き宿の看板が掲げられた建物を発見し戸を叩いた。


「三人ですね。階段を上った先一番奥の部屋になります。」


 鍵を受け取り後にしようと背を向ける。


「この街には今日たどり着いたのですか?」


 店主の話しはまだ続いていたようだ。


「ああ、少し前に来たばかりだよ」


「なら‥‥夜は外に出ないようにした方がいいですね」


「ん?」


 含み気味に言われ先日の夜中に家を燃やされた出来事を思い出した。


「いえ、夜中に魔族がでるとかで今月の初めくらいから何人も犠牲者がでているんですよ」


「魔族‥」


「私は見たことないんですけどね。なんでも凶暴で夜にしか姿を現さないとか長い牙があって目が赤いとか。色々言われていますね」


「気をつけますよ」


 他にも街で懸賞金を掛けているが生け捕りのみ対応するという事も聞く事が出来た。店主に軽くお辞儀をし部屋へ向かうべく階段をわたり奥の部屋に向かう。隣合わせで借りた2部屋は間の壁が薄いのか声がまる聞こえになっていた。


「買い物に行ってくるけどシズクちゃんはどうする?」


「私はもう疲れて動けないので待ってますよ」


「了解ー、適当にお土産買ってくるわね」


 扉の開く音がしアイラは外に出て行ったようだ。僕はベットに背から飛び乗り微睡む目を閉じる。風の流れを感じ、静かに僕の顔の上に何かが乗っかった。目を開けるとユラと目があう。

 ここ数日はアイラのフードや僕の肩を離れシズクの肩を定位置としていたので、てっきりあちらの部屋にいると思っていた。

 扉をノックする音が聞こえてくる。どうぞと返事をすると半分開いた扉の前にシズクが立っていた。


「ユラが見当たらなくて」


「こっちにいるよ」


 気がつかず締め出されてしまったのだろう。ユラは顔の上からシズクの肩へ飛び移り、シズクはユラを連れて部屋に帰っていく。そのまま襲い来る睡魔に身を任せ、夢の中へと旅立った。



「ふふん、これなんてシズクちゃんに似合いそうよね」


 ご機嫌で買い物に興じるアイラ。手にはもう物の押し詰められた袋が2枚ぶら下がっている。


「お姉さんお暇ー?」


 ナンパというやつだろうか。サングラスを掛け如何にもチンピラといった格好をした男が話しかけてきた。

 人通りの多い道を選び無視しながら男を振り払おうとするが執念深く跡をついて来る。振り払うのは無理だと判断し小道に入り人通りのない道にでた。


「お姉さんやっと観念した?」


 にやにやしながら男は目の前に立ちふさがる。男が口を開き次の言葉を発する前にアイラの左足が動き、男の腹部に蹴りが入る。そのまま後方にあった壁まで飛ばされてしまう。低い呻き声を上げそのまま地面に倒れ込み動かなくなってしまった。

 アイラはやれやれといった様子で首を軽く振り、買い物に戻る。

 静けさの中、男が立ち上がり首を鳴らす。


「当たりかなぁ」


 男は半分割れたサングラスを放り投げ、路地裏を進んで行く。その目には赤く微かに光る瞳が見て取れた。

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