騎士
アイラの消えた方角を見て、追いかけようとする僕とシズクの前に真横へ真っ直ぐと伸び掲げられた剣が行く手を阻む。レオンは開いた手で少女の首の裏を手刀で叩き意識を奪う。レオンはこちらを見据え落ち着き払った声で問いかけた。
「ナギ‥‥いや、君達は彼女の事を驚いてはいなかったようだが、君達も魔族なのではないか?」
剣先がゆっくりとこちらを向く。
「レオン、僕達は‥‥」
言葉を発し切る前に、レオンは剣を振りかぶりシズクの頭上目掛けて振り下ろす。動いた剣に合わせ僕の腰から手際よく抜かれた剣がそれを受け止めた。響く音、シズクは驚き地面に腰を落とす。
「レオン!!」
口は閉ざされ、磁石のようにくっ付いていた剣が離れると同時に突き刺すように再び剣が走る。剣は顔の横を突き抜け僕に触れることはなく過ぎ去った。
「‥‥すまない君達は違うようだね。魔族と関わることが多いから瞳の変わる理由は知っている、確かめさせてもらったよ」
剣は静かに引かれ鞘に収まっていく。このようなやり方に憤りを覚えレオンを見据える。何食わぬ顔で少女の痛々しい手に布を巻く姿を見て、これが彼の日常なのだと感じさせた。
「捕えなくても‥害にならない、良い魔族も居るんじゃないのか?」
投げかけた言葉にレオンは振り返る事なく答えを述べていく。
「居るだろうね」
「じゃあ、ア‥‥」
僕の言葉を遮るように語り始めた。
良い魔族がいるから人と同じように扱えと? 今のこの世界ではそれは限りなく不可能に近いだろう。今までの行いに不満、怒りの感情を燃やす者。魔族と知ってか知らずか仲良くしていた者。現在よりももっと多くの者たちが立ち上がり反旗を起こすかもしれない。
それが空想に終わるかもしれないが絶対とは言えない以上、国に大きな爪痕を残す可能性、そのまま転覆してしまう事もあり得る。今の人々の安息を崩し混乱に導くわけにはいかない。
そして‥‥私が捕えて来た者、命を奪ってしまった者の数はもうこの道を進み続ける事しか許さないだろう。
処置を終え口を締め、立ち上がりアイラの消えた方角へと走り去る。言葉が出ず立ちすくんでしまったが、遅れて落ち着いたシズクと共に跡を追うべく駆け出した。




