消えた灯火③
さっき目にしたフードの中に見えた赤いもの。アイラさんは‥‥。
浮かんでくる雑念を払うように首を振る。身を潜め震える背に軽い衝撃が走った。身体が跳ね上がり、分かりやすく驚くシズクの背後にはアイラの手が伸びていた。
フードの中が見えたが、瞳は黒く安心感が全身を包み込んでいく。立ち上がりアイラさんのそばを離れないようナギさんを追っていった。
「これは‥‥」
唇を噛み締め下を向き目を閉じるレオン。僕はレオンが見たものから目を背けることはできなかった。闇夜に隠れてはいるが、数人の町民らしき人達が倒れ辺りには赤い水分が溜まり、それが飛び散ったあとも残っていた。
目を開いたレオンは一瞬、両手を合わせ、倒れている人たちの瞼を閉じ道の端へと動かしていく。それに連なるように同じように手伝い手を合わせた。
その中には見知った顔もおり懐から開かれた手紙が顔を覗かせる。所々赤く染まり全ては読めなかったが母の死、一度こちらに顔を出して欲しいという内容だった。
瞳が熱くなるのを感じ目を背ける。今まで胸に込めていた思いがこぼれ落ちていきそうな感覚が走る。
全てを端によけ、その場を後にしようとしたとき近くの曲がり角から二人分のこちらに向ってくる足音が響く。レオンと共に腰の剣に手をかけ、音に神経をそそぐが姿を現したのはフードを被った女性と女の子だった。
「アイラ!」
僕のあげた声にアイラは察し、シズクの両目を手で隠す。突然のことに驚いたシズクを宥めながら、この場を見ないよう角の先へ引き返していった。二人に合流した僕達は身を隠すため宿に向かう決意を固める。
レオンが引き続き逃走者を追うと言い背を向けた時、小さな人影が不意を突くように飛び込んできた。アイラに向かい飛びかかったが簡単に組み伏せられ、暴れる少女の姿があらわになる。割れたガラス片を持ち痛々しい手、鋭く睨む目には赤く綺麗な瞳。
「離せ! お父さんを殺した魔族の女ぁぁぁ!」
レオンは踵を返し少女の発言に眉をピクリと動かした。そして言葉を紡ぐ。
「アイラさん、この子の言うことを信じたわけでは無いが‥‥一度、大人しく付いて来てもらえないかな?」
少女の言葉に驚愕の感情が湧いてくる気配はなく、何処かそんな気がしていたという僕がいた。シズクも驚いたというよりは悲しみに近い顔をしている。
アイラは静かに立ち上がり抑えていた少女をレオンに向け突き飛ばす。
そのまま一言も発することなく夜の中へと消えていった。




