消えた灯火②
それを見た僕は心配から彼の後を追う様に駆けていた。
「アイラ! シズクと身を隠していて」
追いかけた先ではレオンが一人の男と向き合っている。男は鉄パイプをこちらに向け見逃してくれと叫ぶ姿が見えた。レオンは体を前に進め鎧の擦れる音を鳴らしながら、逃すわけにはいかない意を込める様に首を振る。
覚悟を決めた男は手に持ったパイプを振りかぶり近づくレオンを見据えた。男の射程内に入った所でパイプが振り下ろされる。振り切ったパイプは何の手応えを掴む事はなく、遅れて地に金属の音が鳴り響いた。
レオンの手から弧を描き剣が掲げられ、パイプは長さを半分にしている。男は震え膝を落とした。剣を収め男を縛っていく手際の良さに、僕の心配は取り越し苦労だったのではないかと立ち尽くす。
「ん‥‥ナギか、君も危ないから身を隠していなさい」
僕の姿を見つけたレオンは諭す様に言葉を投げかける。彼の仕事を増やしてしまった罪悪感に苛まれながら、安全な所まで送ろうと声をかけてくれたレオンと行動を共にする。
時同じく、アイラも遅れてナギを追っていた。一人避難したシズクは飛び出していった二人に不安を思い身を隠しながら後を追う。曲がり角を超えた時シズクの目には三人の慌てた様子の人影が映った。二人の男と、残り一人は私よりも一回り小さな女の子の姿。
こちらに気が付いた男が一人向かってくる。手をかざし、こちらに魔の手が伸びようとした時、男は微かな呻き声を上げ気絶し、その場に倒れ込んだ。
いつの間にか私の隣にはアイラさんが立ちフードを被っている。一瞬の出来事ではあったが、フードの影に仄かに赤いものが見えた気がした。
逃げ出す二人の物音を聞き取ったアイラさんは正面を見据え、いつもとは違う声色で、どこかこちらに顔を隠すように去っていく。
「静かにさせてくるから、待っていて」
音を頼りに、もう暗くなった道を追っていく。段々と距離は縮まりアイラの目の前には、こちらへ立ち止まる男の姿が見えてきた。
「あなたも、魔族なら‥気持ちはわかるだろう? これ以上は追わないでくれ」
悲痛な声が発せられる。
「やっぱり、見られてたのね。残念ながら見逃す事はできないわ」
落胆の色を見せる男に冷たく告げられた最期。刀に手をかけ暗闇に刃の振り切られる音が鳴る。すでに事切れている男を見下ろし、近くの物陰から発された物音に目を向ける。震え押し殺す声、遅れて倒れている男の近くへと歩み寄る物音の主。
悲しみにあふれた声をあげ父を呼ぶ。こちらからは見えなかったが涙を絶えず流しているのがわかった。出て来た者を仕留めようと掲げられたアイラの刀は動きを止める。シズクに近い面影の所為か、それとも‥‥。
刀を下ろし踵を返す。ナギ君を甘いと言った私を思い出しながらその場を立ち去った。
アイラの背後では姿が見えなくなっても、こちらを睨むように二つの赤い瞳が闇の中に浮かんでいた。




