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Pandora   作者: 夕の満月
第一章 旅人
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虚構の怪物③

 晴れない気持ちに区切りをつけ、いつの間にか騒がしさの消えた違和感から周囲を見渡す。アイラの姿が消えておりシズクにもどこに行ったのか聞いてみるが、言われて気が付いた様で二人残された僕達は途方にくれる。


 しばらくその場に止まる決意をした途端、アイラが姿を現わす。居なくなっていた理由を尋ねると町民に隣の大陸に渡る船はあるか聞いていたそうだ。突然の発言に疑問の声を投げかけた。


「せっかく海まで来たんだし、ついでに船も乗って行こうよ!」


 無計画の発言に断りを入れようと、口を開いた瞬間に呟いたアイラからの耳打ちに言葉を閉ざした。多分、探し物は向こうにあるよ。その言葉に反対の意思は消え、すぐに同意に変わる。シズクは僕の様子を見て不思議な顔をしたが同じく賛成してくれた。


 海沿いに進んだ先、そこに港町があり船が出ていることを聞き、目指す座標を定める。距離があるようで、一夜明かしてからこの場を後にすることにした。



 その夜、僕は夢を見た。広がる暗闇。何も見えない空虚な空間に浮かぶ不安の中を歩く。押しつぶされてしまいそうになるその恐怖から人知れず手を伸ばす。その手は何もつかむことはなく体の横へと帰って行く。下を向き進むのを諦めてしまおうかと思った時、前方に微かな光が灯る。光を目指し進み始め‥‥。



 光が見えた。夢の続きかと思っていたが朝日の眩しさがそれを否定する。体の気だるさが夢にうなされていたことを知らせてきた。こちらに気がつき、そんな様子を見ていたアイラが、剣の稽古でもして紛らわせる? と聞いてくれた。


「うーん、今日はやめておくよ」


 気乗りしなかったため、まだ眠るシズクを視界の端に捉えながら朝食の支度を始めた。

 目が覚めたシズクと共に食事を済ませ、港町へ向かう。初めは砂浜沿いに歩いていたが、足を取られ余計に疲れを感じさせるため、木々の根が張り硬く引き締められた大地を進む。


 何日か歩いたところで遠目に、町と海に浮かぶ船、そして軽快に鳴り響く汽笛が聞こえてきた。以前観た数人が乗れるようなものではなく、荷物や大勢の人を海へ駆り立てるたくましさに満ちあふれた船に心が逸るのを感じる。


 そんな僕達を迎えたのは、本日の出航は無いと告げる言葉だった。だが明日には出るらしく、この日を宿で潰すことにする。宿は大きく他にも明日の出航を待っているらしき人々で賑わっている。その中で一人不安な顔を浮かべながら、手当たり次第に声をかけ悲しい表情を繰り返す女性が見えた。


 見ていた様子に気が付いてか、つかずか女性がこちらに歩み寄ってきた。眼前に手紙を差し出し隣の港町でお店を営んでいる彼氏に届けてはくれないかと聞いてくる。困り、アイラとシズクに視線が流れる。それを見た女性は手の中に無理矢理手紙を握らせようとしてきた。まあ、良いんじゃない? アイラの一言に素直に手紙を受け取り鞄の中へしまう。


 細かいものの運搬はしていないらしく、主には商品となるような、大量の荷でなかなか送る事が出来ずに困っていたようだ。女性は笑顔でお礼を言い、彼氏の名前、そして営んでいるお店の場所を丁寧に並べると立ち去っていった。


 彼女を見送り、借りた部屋へ足を運ぶ。今回は宿が混んでいたこともあり一室のみ借りられたが、肩身の狭い思いに苛まれながら日が昇るのを待ちわびた。

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