光輝く音
すこし‥‥。山に暮らしている人はやはり足腰の鍛え方が違うのだろうか、疲れ切ったシズクの姿もそれを物語る。先日聞いた話だと短い距離のように言っていたが、山を下り村を見つける頃には日が沈み込んでいた。
まだ村との距離はあったが大きな音と声が聞こえてくる。何か起こっているのではないかと、歩む足を速めた。距離が縮まり騒がしさが増していく。村からは燃え盛る火と煙が立ち上り、村人が声を上げている。
ふと、何か違和感を覚えた。逃げようとする者はひとりもおらず、人の叫び声には恐怖の緊張感がまるで無い。騒ぐ村人に話を伺う。
「兄さんも、ほら踊りな! 今日は年に一度のお祭りだ!」
張り詰めていた緊張が切れ一気に力が抜けていく。遅れてたどり着いたアイラとシズクも同じような状態になり、アイラはすぐに表情を変え笑顔を浮かべた。
「祭りよ!食べ物、踊り! 全てが私を呼んでいるわ!」
僕とシズクは顔を見合わせ少し休ませてほしいとアイラに告げる。
「シズクちゃんはともかくナギ君も? 鍛え方が足りないわよ!」
「アイラがタフなだけだよ」
一瞬むくれた顔をこちらに向け、気を取り直し村人に紛れ消えていくアイラを見送りシズクと行動を共にする。あの順応性の高さはどこから来ているのだろうか。
「私に合わせてくれなくても、良いんですよ?」
「いや、本当に疲れて動きたくないだけだから気にしないで」
「そう‥‥ですか」
シズクは安心したように呟くのを見て一人残されるのではないかと不安があったのを感じさせた。村の中では、様々な食べ物も売りに出されておりシズクの目が輝きながら忙しなく動く。
騒がしさの中を蛇行し休めそうな椅子を見つけたときには、シズクの両手にぎりぎり収まる程度の食べ物が積み重ねられていた。
「そろそろ持ち切れなさそうだから、あそこで休もうか」
「はい、そうですね」
ユラに食事を与えるシズクを眺めながら、割高で買い集めた食べ物に手を伸ばす。
「ユラもすっかりシズクに懐いちゃったね」
「そうですかね」
嬉しそうにユラを指でいじるシズクを見て、始め村を出た時に比べ笑顔が多くなったのを感じた。
「うん‥‥良いことだ」
心の中で呟いたつもりが声に出てしまったらしい、シズクの不思議そうな表情がこちらに向けられた。
「あ、ナギさんもちゃんとお世話はしてくださいね」
「ん‥分かったよ」
どうやら、ユラの事だと捉えたのだろう。
「あーここにいた。私のシズクちゃんは返してもらうからね!」
いつの間にか現れたアイラがシズクを連れ出す。シズクの背後から抱きつくように手を握り、周りの村人がしているように手を振り動かす。
「ほら、シズクちゃんも踊って踊って!」
楽しそうにする二人を目で追う。
「「ナギくん、さんも!」」
二人が発した声に導かれ腰をあげる。
「はいはい」
そのまま、お祭りは朝まで続けられ朝日がのぼると同時にまばらに村人は解散していった。疲れが絶頂を迎えた僕達を残し静けさが訪れていく。多少の睡眠は取ることができたが案の定、宿は見つからず次の町を目指し歩き出す。
「アイラが最後までいるっていうから、こんな事に‥」
「楽しかったし良いじゃない。次の町でも祭りやってないかなー」
「私はしばらく‥お祭りはいいです‥‥」
「えー、さあ次の祭りを求めて進むわよ!」




