禁断の果実①
「ナギ君がー」
「ん?」
「シズクちゃんをー」
「なに?」
「街に置いていくって言うからー」
「はいはい」
「シズクちゃんが泣いてー」
「‥‥やめてください!」
恥ずかしそうにシズクが声をあげた。
「んー? シズクちゃんどうしたの?」
ニヤニヤしながら話すアイラ。街を出てから似たようなやり取りが何度か繰り返されていた。からかわれるシズクに同情しながら歩き続ける。
シズクはまだ僕達と行動を共にしていた。施設で話しを伺った日、帰り道で魔族の男にぶつかった際に僕達と一緒にいるところを魔族の男に見られている。
あの男が言ったことが真実か判断出来ない以上、街に残して行くのは危険なのでは無いかという事、そしてシズク自身が施設を嫌がっている事から一時保留という形で落ち着いた。
今は他の街に向け歩いている途中だったのだが、アイラの感に道を委ねてしまった所為で山に入り迷子になってしまっている。
太陽の出ている内は日の向きで方角が分かるが、夜になると星での方角は知識不足のため見ることができない。 なので急ぎ進みたい所だが‥‥。
「アイラさん!ユラが嫌がってます!」
「えー、じゃあシズクちゃんにする!」
「え‥‥いやぁぁ」
迷子からの脱出は無理では無いのかと諦めかけてきた。
「さて、ナギ君! 山といえば何!」
「川‥‥とか?」
「そう川よ!シズクちゃんと遊んでくるから、魚でも取ってきて!」
「少しは手伝ってよ」
私手伝いましょうか? と声をかけてくれたシズクは、アイラという最大の障害に阻まれ抵抗虚しく連れていかれた。
「先に火だけ起こして行くから、消えないように見ていてね」
「任せて!ユラに!」
‥‥大丈夫だろうか。どこか慌てたように見えたユラと目が合い、大丈夫だから良いよと呟いてみる。伝わっているのかは分からないがシズクの元へ飛んでいってしまった。
川で遊ぶ二人と一匹を横目に火を起こす。次は魚か、二人が遊んでいる付近は逃げてしまっているだろうし上流を見てこよう。アイラみたいな性格の魚がいればあの場に逃げずに留まっているかもしれないな。
心の中で呟いたはずなのにアイラと視線が合い、何か言った? と言いたげな目を向けられた気がする。考えすぎだろうか。
魚を求め川の上流へ。道すがら手頃な木の棒を拾い、剣で先を削って行く。見た目はあまり良く無いが返しも付け、簡易的な銛の完成だ。
さて夕食の確保といこうか。近寄ると逃げて行く魚に悪戦苦闘しながら、人数分の魚はなんとか確保する事ができた。
帰り道、左手にもった銛を棒状の物を手に取ると振り回して見たくなる欲求に負け、風をきる音を鳴らしながら振る。
「うわ、子供っぽーい」
様子を見にきたアイラに見つかり、咄嗟に背に隠そうとするが近くにあった木にぶつかり鈍い音を立て銛は折れてしまった。無意識に落胆の声が漏れる。
「‥‥アイラには言われたくないよ。火は大丈夫?」
「シズクちゃんとユラが見てるから大丈夫よ」
「それは一番安心だ」
アイラの冷たい視線に耐えながら、立ち昇る煙を目印に進む。
「お帰りなさい」
「ただーいまシズクちゃん」




