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95.『両想い』始めました 【最終話】

最終話です

「―――え?」

「と言っても、まゆずみ君と違ってごく最近そう思ったんだけど……」


少し申し訳なさそうにはにかむ七海を見て、黛は目を見開いた。

弾かれるようにソファを立ち上がり、テーブルを回り込んで七海の横に座る。

黛の勢いに気圧されて、つい七海は少し体を引き気味にしてしまう。


しかし黛は七海の二の腕をガッチリと掴み、それ以上彼女が逃げるのを阻止してしまった。そしてじっくりとその顔を覗き込む。

端正な黛の顔が至近距離に迫り、ドキドキと胸が高鳴るのを感じながら堪えて七海はその瞳を見返した。




「―――本当に?」

「うん、本当」




七海は黛の双眸を見据えながら、しっかりと頷いた。

動揺してオロオロしている黛が―――何だか可愛くて、胸の奥底から愛しさが湧いて来る。

黛は七海の興味深げな視線を受け止めながら―――瞳を揺らした。


「都合良すぎる……これはもしかして夢か……?」


茫然としている黛に掴まれたままの腕を、七海はゆっくりと伸ばす。

彼の拘束は思ったより弱く、容易にその指は黛の頬に辿り着いた。

―――七海は微笑みながら優しくその、大人になって精悍になった頬に細い指を添える。その感触に、黛は吃驚したように思わず目を閉じた。


次の瞬間、七海はニヤリと笑って思い切り指に力を籠め、黛の頬を摘まみ上げた……!


「てぇっ……何すっ……」


照れ隠しだったが―――思った以上に黛はダメージを受けたようだった。

目を開け眉を顰める黛に、七海はとびきりの笑顔で笑い掛けた。




「夢じゃないよ」




そう言うとムッとしたように頬をさすった黛の眉間が少し和らいだ。

黛もそっと賛同を示す。




「うん、夢じゃ……ないな」

「わっ……!」




お返しとばかりガバっと黛に抱すくめられて、七海は声を上げてしまう。

温かい体温にシッカリと包まれて、脳髄がクラクラした。

ぎゅうぎゅうに抱きしめられ、息が苦しくなってしまう。


「ま、黛君苦しい……」

「あっゴメン」


そう言って体を離したものの、黛は依然至近距離で七海の顔をジロジロと見続ける。

美人に自分の特徴の無い顔を検分するように眺められて、七海は大変居心地が悪い。恥ずかしさに顔が真っ赤になってしまった。




「可愛い」




トンでもない台詞がその形の良い唇から洩れて来たので、七海の頭は瞬時にパニックに陥ってしまう。言語を司る回線がショートしてしまい、頭が沸騰して言葉が出ない。


黛はニンマリと不敵に笑ってから。

そっと唇を重ねようとして―――


止まった。


鼻先が触れそうな距離で口を開く。




「……頭突きするなよ」




七海が「するかっ!」と返事をする直前に、黛に言葉を塞がれた。







【平凡地味子ですが『魔性の女』と呼ばれています・完】

思った以上に長くなりましたが、これで黛と七海のお話は一応完結です。

毎日チェックしていただいた方、たまにチェックしていただいた方、そして完結後一気読みしていただいた方、皆さまお付き合いいただき有難うございました。


種明かしも含めてその後のお話を追加投稿する予定です。


お読みいただき、本当に有難うございました!

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