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90.ゴメンね

防音室を少し開けて、眠りこける父親を見せると七海は小さく「あっ」と言って直ぐに顔を引っ込めた。そして申し訳なさそうに「疑ってゴメンね」と呟く。


やっぱりコイツ、お人好しだなぁ……とまゆずみは思う。

おそらく黛の軽率な行動が元で、この家に上がりたく無かったと言うくらいの事は、七海とのコミュニケーションについて失敗続きの黛でも何となく理解している。

ちょっと自分が誤解したくらいで、心底済まなそうに頭を下げる七海が心配になってしまう。責められる原因を作った相手に謝るなんて、と。




(やはりコイツは野放しには出来ない)




信が守ると言うなら、黛も引き下がろうと思ったが―――それが不意になったと言うのなら。

このまま放置していたら、立川みたいな手慣れた男に彼女はいいようにされてしまうのではないか。

幸い立川はそれほど悪い奴では無かったらしいが、次に七海を気に入る男が常識のある人間とは限らない。そう思うと焦りがドロッと胸底に溜まって来て、居ても立ってもいられなくなって来る。


(第一、コイツを気に入っている俺が一番『常識が無い』人間だろうからな)


そして信も大人で落ち着いているとは言え―――やはりちょっと真っ当……と言い切れないクセがある人間だ。七海に惹かれる男は皆、どうも何かしら難あり物件ばかりなのではないか、と黛は心配になって来た。


七海をソファに座らせキッチンへ行くと、冷蔵庫の中には案の定ペットボトルとビールしかない。

黛はミネラルウォーターと麦茶のペットボトルを両手に持って、ソファに座る七海の元に戻った。ガラスのローテーブルを挟んだ向かい側の一人掛けソファに座り、七海に向かって差し出した。


「どっちが良い?」

「あ、じゃあ麦茶を……」


そしてパキッと栓を捻って、冷たいペットボトルに口を付けた。

トクトクと喉を伝って行く液体を、意識が追う。ゆっくりと胃まで辿り着いたそれを意識した後、黛はおもむろに口を開いたのだった。



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