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85.ところで

ジッと見つめられ、七海は居心地悪く沈黙を保っている。

すると黛がそんな七海の心情など露とも感じとっていないように、唐突に尋ねた。


「ところで、のぶは今日どうしてるんだ?」

「信さん?どうしてるんだろ」


今頃は仕事を終えて家に帰っている頃だろうか。

それとも友人たちと顔を合わせる事が出来るバーに出掛けているかもしれない。


するとまゆずみが溜息を吐いて、呆れたように言った。


「今からそんな事で大丈夫か?」

「『大丈夫』って、何が?」

「確かにアイツも決まった相手ができればキチンとするだろう、とは言ったけど。放置しといて変な女に付き纏われたらどうするんだ?アイツにその気はなくても面倒な事になるぞ」

「……信さんが女の人に付き纏われるのはいつもの事だけど……」

「お前、そんな事言っていたら―――」


訳が分からず思った事を口にする七海に、黛は少し怒ったような顔をしていた。


「これから苦労するぞ!のんびりにも限度がある、今からそんな甘い事言って信を甘やかしてたら、アイツだって勘違いするかもしれないじゃないか」

「『勘違い』って―――何を?」

「女友達がいてもお前が気にしないとか、今まで通り適当に周りの女に優しく接して付き纏う女がいてもお前は平気なんだと勘違いするじゃないか」


そこまで聞いてやっと、七海は黛が誤解しているのだと気が付いた。


「気にしないよ」

「はぁ?」


まゆずみは、ポカンと口が開けていた。


「だって、関係無いもん」

「お前……それは男に都合よすぎるだろ……」


七海はブッと噴き出した。

真剣に黛が心配してくれている感じが、ヒシヒシと伝わって来たからだ。

笑っちゃいけないと思うと、可笑しさが込み上げて来てついお腹を抱えて笑ってしまう。

黛は怪訝そうに眉を顰めている。

流石に申し訳なくなって来て、七海は種明かしをすることにした。


「ゴメン、ゴメン。心配してくれたんだよね?違うの―――私、断ったの」

「は?」

「信さんから付き合って欲しいって言われたのは本当なんだけど、ついこの間お断りしたの。だから、信さんが女の人に絡まれようと私に害はありません。―――あ、こんな冷たい言い方しちゃったら、悪いかな。心配はしてるよ、信さんの事」

「お前だって―――信の事『好きだ』って……」

「好きだよ」


ピクリと黛が僅かに身じろぎをした。それに気付かず七海は続けた。


「大事なお友達―――と言うか、そう言うのもおこがましいけど優しい『お兄さん』として好きだよ。大人で思慮深くて、必要とあれば自分より他人を優先して背中を押してくれる事ができる人だから―――尊敬もしてる」



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