表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/97

64.好きな人は誰ですか?



りゅうが―――唯を?」

「はい」

「……」


のぶは口元に軽く握った拳を当てると、左上の方に目線を上げて暫く黙ってしまった。


「信さん……?」


不安気に七海が信の名を呼ぶと、信はパッと振り返った。


「ん?」

「どうしたんですか?難しい顔をして」

「んー……」


少し困ったように眉根を寄せて、信は言葉を一度切った。

給仕の女性がジョッキのお代わりを配膳したので、彼はそれを一口飲んでから再び口を開いた。


「それは―――龍の気持ちであって、七海ちゃんの気持ちでは無いよね?七海ちゃんはどう思っているのかなって思って」

「……それは……」

「ゴメンね」


七海が泣きそうな顔をしたので、信は目尻を下げて彼女の頭に手を置いた。


「苛めるつもりじゃないんだ。ただ七海ちゃん、たとえ無かった事にしても表に出さない気持ちは燻って沈殿して、心の中に根を張ってしまう。自分に正直にならないと―――ずっと君はとらわれたままになってしまうよ」


七海の頬からポロリと涙が落ちた。


信は両手で俯く七海の顎を優しく支え、顔を上げさせた。

七海の目の前には艶やかに微笑む精悍な顔があった。




りゅうが好き?」




今度こそ逃げ場は無い。

七海の目からポロリポロリと涙が零れ落ちた。

そして七海は―――コクリと頷いた。



「信さん―――ゴメンなさい、私やっぱり……」




信はフッと口元を綻ばせて―――ポケットから綺麗なハンカチを取り出して七海の涙を拭った。拭き終わった後、彼女を解放する。




「俺を振った事―――きっと後悔するよ」




嫣然と微笑みながら余裕たっぷりで言う信に向かって―――七海も目を朱くしたまま笑って言った。




「もうしてます」




信は頷いて、少し満足気にポンポンと七海の頭を叩いたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ